ホーム | 説教 | 説教(2010年度) | 愛は律法を全うする

愛は律法を全うする

説教要旨( 6月13日 朝礼拝 )
イザヤ書 第42章 1~4節
ローマの信徒への手紙 第13章 8~10節
倉橋康夫

 本日の個所の直前でパウロは、<すべての人々に対して自分の義務を果たしなさい>、と言いました。これは、「借りを返しなさい」という意味です。つまり、信仰者は、自分自身を負い目ある者と理解し、その借りを返すよう努めなさい、と言うのです。パウロは、また別のところでこうも言っています。<わたしは、ギリシア人にも未開な人にも、果たすべき責任があります。>(1 : 14)、と。ここでも、「返すべき借り」という意味であり、この「借り」とは、福音を伝えることなのです。
 このように、信仰者は、自分の持っている借りを自覚することが、大切であることを語っていますが、ここでは、誰からも何も借りるな、と言います。ここで、パウロは、<互いに愛し合うことのほかは、だれに対しても借りがあってはなりません。>、と言うのです。互いに愛し合うことを、主イエスは<新しい掟>、と言われ(ヨハネ13 : 34、15 : 12、13、17)、<わたしがあなたがたを愛したように>、と言われました。このように、愛の負債は、先ず何よりも、主イエス・キリストからのものです。主キリストが私たちを愛して下さった。あの主の十字架にお応えする歩みとして、互いに愛し合う生活があるのです。
 そこで、パウロは、<人を愛する者は、律法を全うする>、と言います。「他人を愛する者は、律法を満たしている」(直訳)、と。<人>とは、「他人」のことです。私たちが愛すべき人は、自分とは違った、他人だ、と言うのです。信仰者同士であれ、夫婦であれ、親子であれ、友人であれ、物の感じ方も、考え方も違う、年齢も、性別も違う、他人を愛するのです。そのように、他人を愛する者は、すでに律法を全うした、と言って良い、と。
 ここで、パウロは律法の掟を具体的に取り上げます。<「姦淫するな、殺すな、盗むな、むさぼるな」>、と。主イエスは、質問に答えて、神を愛することと、隣人を愛すること、この2つの掟に<律法全体と預言者>が基づいている(マタイ22 : 40)、と言われました。神への愛と、人への愛に、神の掟・神の要求の全てがかかっている、と言われたのです。ここでパウロは、<そのほかどんな掟があっても、「隣人を自分のように愛しなさい」という言葉に要約されます。>と言ってますが、神への愛を前提にして、隣人への愛を語っているのです。
 ところで、パウロは、<愛は隣人に悪を行いません。>、と言います。悪を行わないとは、害を加える、傷つけることをしないことです。私たち自身の生き方を振り返るなら、如何にこれとは正反対であるかを痛感させられます。言葉で、行いで、人を傷つけながら生きているからです。
 しかし、主イエスはそうではありませんでした。併せて読んだ、イザヤの預言(第42章)が指し示しています。<3 傷ついた葦を折ることなく/暗くなってゆく灯心を消すことなく/裁きを導き出して、確かなものとする。>、と言うのです。このような生き方によって、神の正しさを、確かなものとする、と。主イエスこそが、隣り人に悪を行わない、害を加えることのない生き方を貫かれました。そして、神の義を確かにされたのです。
 そこで、パウロは、最後に、<だから、愛は律法を全うする>、と再び言います。「だから、愛は律法の充満である」(直訳)、と。律法を全うされた方は、主キリストご自身であり、主の愛こそ律法を全うするのです。私たちは、この主キリストに結ばれて、生かされています。律法を全うされたキリストの愛に結ばれて、生きる者とされたのです。ここに、私たちキリスト者の生きる指針があります。私たちは、主の愛に結ばれて、<人を愛する>歩みへと導かれます。これは、私たち自身に属すものではなく、聖霊のみ業であり、導きなのです。
 

説教一覧(2010年度)

2010.04.04
あの方は復活された
2010.04.11
近くにおられる神
2010.04.18
偽りのない愛
2010.04.25
祝福を祈る
2010.05.02
すべての人と平和に
2010.05.09
子や孫たちにも教えなさい
2010.05.16
復讐からの解放
2010.05.23
聖霊の証印を受けて
2010.05.30
寄留者
2010.06.06
良心に従って
2010.06.13
愛は律法を全うする
2010.06.20
神の子イエス
2010.06.27
今はどんな時か
2010.07.04
主キリストを身にまとう
2010.07.11
あなたは神に出会う
2010.07.18
あなたは何者か
2010.07.25
我らは主のもの
2010.08.01
愛に従って歩む
2010.08.08
神の国は義と平和と喜び
2010.08.15
主こそ神、ほかに神はいない
2010.08.22
神のみ前における確信
2010.08.29
生ける希望
2010.09.05
忍耐と慰め
2010.09.12
逃れて、生き延びる
2010.09.19
望みの源なる神
2010.09.26
神の福音のために
2010.10.03
我らの誇り
2010.10.10
親子
2010.10.17
主が結ぶ契約
2010.10.24
主キリストの祝福を携えて
2010.10.31
過越の小羊
2010.11.07
天の財産を受け継ぐ
2010.11.14
十戒
2010.11.21
自分自身を知る
2010.11.28
平和の源なる神
2010.12.05
主にあって よろしく
2010.12.12
大いなる栄光
2010.12.19
メシアはどこに
2010.12.26
教会から教会へ
2011.01.02
善にさとく、悪には疎く
2011.01.09
栄光が唯一の神に
2011.01.16
あなたの心に留め、語り聞かせる
2011.01.23
初めに言があった
2011.01.30
味わい、見よ、主の恵み深さを
2011.02.06
光の証人
2011.02.13
試みと誘惑
2011.02.20
神によって生まれる
2011.02.27
独り子なる神
2011.03.06
主の道をまっすぐにせよとの声
2011.03.13
神の宝―選ばれた者たち
2011.03.20
この方こそ神の子
2011.03.27
何を求めているのか