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逃れて、生き延びる

説教要旨(9月12日 朝礼拝)
申命記 第4章41~49節
マタイによる福音書 第10章16~23節
橋本いずみ

 モーセは、過って人を殺してしまった人が、逃げて生き延びることができるため「三つの町を定めた」と言います。逃れの町は、日常的な営みの中にあって人を死なせてしまった人が、復讐する者から逃げてくることのできるところでした。逃れの町の規定(申19:1-13、出21:13‐14、民35:9-34、ヨシュ20:1-9)によると、それはレビ人の町であることが分かります。レビ人は礼拝に仕える人でした。イスラエルの部族の領土の中にレビ人の町がおかれ、逃れの町は主の礼拝に仕える者が集まって住んでいるところに定められたのです。逃れの町では、転換が起こります。旧約聖書での原則は「人を殺した者は殺される」ですが、逃れの町に来たら人を死なせてしまった人が生き延びることができたのです。
 今日読んだ新約聖書で主イエスは迫害を予告しておられます。「それは、おおかみの群れに羊を送り込むようなものである」と言います。羊からしてみれば、危険極まりないことです。そういうところに主イエスは弟子を送ると言うのです。そして、ある町で迫害されたならば、次の町に逃げていき、更にその街で迫害されたならば、別の町に逃げていき、生き延びるようにと言われます。迫害されて、逃げていく者は、同時に最後まで耐え忍ぶものです。逃げるということは、決して迫害に屈してしまうことではなく、迫害に耐え忍ぶことであり、その者たちには救いが約束されています。
 弟子たちの迫害を予告する主イエスは、弟子たちの迫害に先んじて人々から迫害を受けて十字架にお架かりになります。主イエスは、最高法院に引き渡され、鞭打たれ、証言することを求められ、人々に憎まれ、十字架にかかられました。主イエスは、すべての人に代わって、すべての人によって、殺されました。
 わたしたちは御言葉を通して、自分が神に対して罪を犯していたこと―神の心ではなく、自分を満たすことだけを考えて行動していたこと―わたしたちの罪のために主イエス・キリストは十字架にお架かりくださったことを知らされます。そして、何よりも、主イエスを十字架の死に追いやったのは自分であったということに気づかせられます。
 そういう意味で、わたしたちには意図的でなかったにしろ、主イエスを死なせてしまった人です。ですから、生き延びていくために逃れの町が必要です。
 さらに逃れの町は、正しい裁きを受けることができるところでした。神は、主イエス・キリストによって正しい裁きをなされました。人の犯した罪をことごとく拭われる裁き―神の正しさを明らかにされる裁きをなされました。主イエスは、十字架という裁きを受けることで、 神と共に生きていくことができる道―救いの道を開いてくださいました。
 わたしたちは、死の危険が迫るところから、人を生かす力の働くところへと逃れ来たものです。そして、わたしたちは遣わされて証しさせられることになります。「そこでは父の霊がお語りくださる。だから、心配することはない」と主は仰せになります。主は、御自身をわたしたちの中にあって明らかにしてくださいます。遣わされていく弟子たちに、主イエスは、「だから、蛇のように賢く、鳩のように素直でありなさい」と仰せになりました。蛇は聖書の中で賢いもの(創3:1)とされています。賢さは、御言葉を聞いて行う賢さであり、備える賢さです(マタイ25.1-13)。さらに、「鳩のように素直であれ」と仰せになります。鳩は、自分の住処に帰ってくる素直さがあるものです(創8:11)。
 主がわたしたちの中で働いてくださるから、御言葉に聞き従い、主の日に備える賢さを保ち、再びわたしたちの住処に帰ってくる素直さを保ちながら、過ごしていきたい。それが、わたしたちが遣わされていくところで、わたしたちを守るものとなります。死の危険から守られて、人を生かす力が支配する逃れ場―主の十字架のみもと―に、帰ってくるものでありたいと願います。
 

説教一覧(2010年度)

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2010.04.11
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2010.04.18
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2010.04.25
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2010.05.02
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2010.05.09
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2010.05.16
復讐からの解放
2010.05.23
聖霊の証印を受けて
2010.05.30
寄留者
2010.06.06
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2010.06.13
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2010.06.20
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2010.07.04
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2010.07.18
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2010.07.25
我らは主のもの
2010.08.01
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2010.08.08
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2010.08.22
神のみ前における確信
2010.08.29
生ける希望
2010.09.05
忍耐と慰め
2010.09.12
逃れて、生き延びる
2010.09.19
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2010.09.26
神の福音のために
2010.10.03
我らの誇り
2010.10.10
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2010.10.17
主が結ぶ契約
2010.10.24
主キリストの祝福を携えて
2010.10.31
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2010.11.07
天の財産を受け継ぐ
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2010.11.21
自分自身を知る
2010.11.28
平和の源なる神
2010.12.05
主にあって よろしく
2010.12.12
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2010.12.19
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2010.12.26
教会から教会へ
2011.01.02
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2011.01.30
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