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過越の小羊

説教要旨( 10月31日 )
レビ記 第11章45節
ペトロの手紙一 第1章13~21節
上田容功

 「わたしは聖なる者であるから、あなたたちも聖なる者となりなさい」(レビ11:45)。聖書が語る「聖なる」とは、他とは異なった、罪から切り離され、神のものとされた、ということです。人間的な努力が私たちを聖なる者にするのではなく、神の選びが私たちを聖なる者にします。イスラエルの民が、神によって選ばれ、聖なる民とされたように、私たちも、神によって選ばれ、聖なる者とされました。
 キリスト者は、どのようにして聖なる者とされるのでしょうか。「あなたがたが先祖伝来のむなしい生活から贖われたのは、金や銀のような朽ち果てるものにはよらず、きずや汚れのない小羊のようなキリストの尊い血によるのです」。「贖われた」とあります。キリストが十字架において人間の罪を贖ってくださったことを信じることがキリスト教信仰の中心です。贖う、という言葉には、身代金を支払い、奴隷や捕虜を解放するという意味があります。十字架の死を遂げるためにエルサレムに向かわれるイエスは語ります。「人の子は・・・多くの人の身代金としてご自分の命を捧げるために来たのである」(マルコ10:45)。信仰者は、十字架で流されたキリストの尊い血によって、罪と死の力の支配から解放されました。贖い主であられるキリストは「きずや汚れのない小羊」のようである、とペテロの手紙は語ります。
 「きずや汚れのない小羊」との言葉は、出エジプト記の「過越の小羊」を思い起こさせます。イスラエルの民がエジプトの国から導き出される夜、イスラエルの家であることを示す小羊の血の塗られた鴨居を御覧になられたとき、主はその家を通り過ぎられました。過越の小羊は、エジプトの国での奴隷からの解放の象徴です。「キリストが、私たちの過越の小羊として屠られた」(Ⅰコリント5:7)。十字架で流されたキリストの尊い血が、私たちを、罪と死の支配から解き放った、と新約の光の中で、使徒パウロは語ります。
 この手紙の受取人のかつての生活は、「先祖伝来のむなしい生活」です。神の御旨を知らない歩みです。十字架で流されたキリストの尊い血によって、あなたがたは人間的な欲望に支配されていたかつてのむなしい生活から解放された、とペトロの手紙は語ります。
 キリストの十字架での贖いの御業は、地の基が据えられる前から、神の中では既に決められていた、と聖書は語ります。キリストの十字架が、天と地の創造の前にまでさかのぼるということは、信仰者に究極の安心を与えます。信仰者は天と地が造られる前から神に知られ、救いへと選ばれています。キリストの復活は、天と地が造られる前に神が定められた救いの御計画が、歴史の中での出来事に左右されないことの証です。
 はじめに、「あなたがたは聖なる者となれ。わたしは聖なる者だからである」との聖句を聞きました。聖なる者として生きるように、永遠の命に満たされて生きるように、との呼びかけです。信仰者は、キリストの十字架において、聖なる者へと選ばれています。洗礼式において、イエス・キリストの血が注ぎかけられたとき、この世の思いへの捕らわれから解き放たれたことを思い起こしたいと思います。礼拝を捧げているこのときも、この世における思い煩いを後ろに投げ捨て、霊的な糧である御言葉をいただくために、神の御前に集められています。屠られた小羊こそ、私たちの生きる力の源です。主日の礼拝において与えられる十字架の言葉と、主の過越を祝う聖餐の恵みに与ることによって、主の十字架が私たちの心と体に深く刻み付けられています。苦しい時や困った時、主の過越のしるしである十字架が私たちを守ってくださっていることを思い起こしたいと思います。 
 

説教一覧(2010年度)

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