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平和の源なる神

説教要旨(11月28日 朝礼拝 )
創世記 第32章23~33節
ローマの信徒への手紙 第15章30~33節
倉橋康夫

 パウロは、この手紙を実質終わるに当たり、ローマの教会の人々に、改めて<兄弟たち>と呼びかけて、<わたしたちの主イエス・キリストによって、また、“霊”が与えてくださる愛によってお願いします。>、と言います。<主イエス・キリストによって>とは、パウロが主キリストによって福音のための使徒として立てられており、その使徒として願うことだからです。また、<“霊”が与えてくださる愛によって>、と言います。これは、神の愛に結ばれて生きるのは、聖霊が与えて下さること、聖霊のみ業であるということです。この神の愛から、私たちを引き離すものは何もない(8 : 38、39)と言えるのは、聖霊のみ業の中に生かされているからです。このように、共に、聖霊が与えて下さる神の愛に結ばれている者として、お願いする、と言います。
 この当時のパウロの事情については、使徒言行録 第18章以下に記されていますが、パウロは伝道活動の先々で、ユダヤ人たちの妨害に遭って、散々苦労をさせられていました。ユダヤ教のキリスト教迫害集団の者たちから、命を狙われるまでになっていたのです。このように、厳しい環境にあって、パウロはこの手紙を書き終えてから、エルサレムに行こうとしています。このような中で、パウロはローマの教会の人々に、<わたしのために>祈って欲しい、<わたしと一緒に神に熱心に祈ってください。>、と懇願しているのです。熱心に祈るとは、祈りにおいて苦闘することです。パウロは、ローマの教会の人々に、祈りの苦闘を共にしてくれるように、と求めているのです。
 併せて読んだ、創世記 第32章23 ~ 33節には、ヤコブが必死に祈ったことが記されています。ヤコブは、神との取っ組み合いによって、つまり、祈りの苦闘を通して、祝福を与えられました。神は祝福を無償で、自由に、豊かにお与え下さるに違いありません。けれども、それを棚ボタ式のものと考えてはならないでしょう。それを受ける私たちの側に、それを祈り求める熱意がないなら、与えられることはないのです。 
 扨て、パウロは、祈りの苦闘を共にして欲しいと願い、そのことによって期待することの1つに<ユダヤにいる不信の者たちから守られ>ること、といいます。パウロはこの後、エルサレムに上って行き(使徒21 : 23 以下)、ユダヤ人たちのリンチに遭い、騒ぎを聞いて駆けつけた、ローマ兵に捕らえられます。ローマ兵に捕らえられたお陰で、難を逃れたのです。
 そして、更に、エルサレムに赴き、所期の目的を果たして、<32 こうして、神の御心によって喜びのうちにそちらへ行き、あなたがたのもとで憩うことができるように。>、と言います。神のみ心は、パウロがローマ兵に捕らえられ、裁判を受けるために、ローマへ護送される、という形で示されます。パウロは、囚われの身のままで、ローマの教会の人々との交わりを得ます。囚人という形ではあっても、ローマの教会の人々との交わりを喜び、そして、牢獄から各地に手紙を書いて諸教会を励まし、パウロはローマで殉教することになります。
 パウロは、この手紙の締め括りの部分の終わりに当たって、<平和の源である神があなたがた一同と共におられるように>、との祈りの言葉を記します。「平和」は、福音の中心です。復活された主が、弟子たちに言われた言葉が、平和があるように、平安あれ、でした(ヨハ20 : 19)。平和とは、何よりも、罪赦され、神との交わりに入れられること、神との永遠の命に生かされることです。そして、人々の間に和解が築かれることです。そのような祝福された生活は、平和の神、「平和の源なる神」が共にいて下さる所で実現します。「平和の源なる神」が、常に共にいて下さるよう祈りを熱くし、神の祝福を祈り求めつつ、此の週も信仰の歩みを進めて参りましょう。
 

説教一覧(2010年度)

2010.04.04
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2010.04.25
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2010.05.02
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2010.05.09
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2010.05.16
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2010.05.30
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2010.06.06
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2010.08.01
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2010.08.08
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2010.09.26
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2010.10.03
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2010.11.21
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2010.11.28
平和の源なる神
2010.12.05
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