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ぶどう酒になった水

説教要旨(4月17日)
詩編 第105編1~6節
ヨハネによる福音書 第2章1~12節
倉橋康夫

 今朝与えられた個所は、「カナの奇跡」と呼ばれる、ヨハネ福音書のみが伝える、物語・エピソードです。 <ガリラヤのカナ>で、ある婚礼の祝いが催されました。その婚礼の席に、主イエスが弟子たちと共に招かれていたのです。その婚宴の席において、ハプニングが起こります。ぶどう酒がなくなったのです。母マリアは、この事態を、主イエスに伝えます。マリアは、主イエスに対して、何かを要求するのではなく、ただ起こった事態を報告しているだけです。これは、主イエスを親しく、身近に感じている者の姿です。主イエスに対して、何でも、どんなことでも、持って行くことができる、全幅の信頼を寄せる者の姿です。
 しかしながら、それに対する、主イエスの返答はいかにもそっけなく思われます。 <4 イエスは母に言われた。「婦人よ、わたしとどんなかかわりがあるのです。わたしの時はまだ来ていません。」>、と言われたのです。ここを、「何をなすべきかを、わたしに告げてはならない。」と訳している聖書があります。主イエスは、神として、人の言葉によって左右されない、自由な方であることを示されたのです。そして、<わたしの時>について語っておられます。メシアなる神の子としての決定的な時のことです。それは、「十字架の死と栄光を受ける時を同時に」指しております。
 マリアは、主イエスの時については理解できなかったでしょう。しかし、「あなたとどんな関わりがあるのか」との主イエスのお言葉については拘ることなく、息子のイエスへの特別な信頼をもって、召し使いたちに<「この人が何か言いつけたら、そのとおりにしてください」>、と指示します。 <6 そこには、ユダヤ人が清めに用いる石の水がめ>が、ありました。主イエスはその石の水がめをご覧になって、それに水を一杯に満たすように、と命じられます。召し使いたちが、そのお言葉通りにすると、水は上等のぶどう酒になりました。
 主イエスは、ここで、ただ単に足りないぶどう酒を提供された、というだけではなく、そのことによって、ご自分の栄光を現されたのです。<11 イエスは、この最初のしるしをガリラヤのカナで行って、その栄光を現された。それで、弟子たちはイエスを信じた。>、と記されています。この水をぶどう酒に変えるという、<この最初のしるし>が、主イエスの栄光を現すものだった、と言うのです。この「しるし」とは即ち、主キリストの救いの出来事へと導くしるしということです。
 この一部始終を見ていたのは、弟子たちでした。<11 ・・・・・・・・ 。それで、弟子たちはイエスを信じた。>と記されています。奇跡そのものが、信仰と関係する、というのではありません。しかし、水をぶどう酒に変えられた方は、私たちを根底から救われる方として信ずべき方です。併せて読んだ詩編は、第105編の冒頭部分です。ここで言われる、主の<御業>、<驚くべき御業>、<驚くべき御業と奇跡>とは、主なる神の栄光を現す<しるし>、と理解することができます。そして、この<御業>に触れて、<主に感謝をささげて御名を呼べ>、と言い、<聖なる御名を誇りとせよ。/主を求める人よ、心に喜びを抱き/主を、主の御力を尋ね求め/常に御顔を求めよ。>、と言います。
 ぶどう酒に変えられた水とは、何を意味するのでしょうか。それは、律法による清めから、主の十字架による清め(救い)のことである、と考えることができるでしょう。実は、私たちが救われると言う事態は、将にそのことを意味しています。水がぶどう酒に変えられる、ということです。その意味で、「ぶどう酒になった水」とは、私たち自身のことです。私たちは、主キリストのみ力によって、変えられ、救いに入れられたのです。
 

説教一覧(2011年度)

2011.04.03
わたしに従いなさい
2011.04.10
隅の親石
2011.04.17
ぶどう酒になった水
2011.04.24
驚くべき主の御業
2011.05.01
新しき神の家
2011.05.08
神を畏れ、王を敬え
2011.05.15
水と霊とによって生まれる
2011.05.22
永遠の命と裁き
2011.05.29
はじまり
2011.06.05
あの方は栄え、わたしは衰える
2011.06.12
一同は聖霊に満たされ
2011.06.19
神をほめたたえる幸い
2011.06.26
永遠の命に至る水
2011.07.03
まことの礼拝
2011.07.10
その傷によって、あなたがたは癒された
2011.07.17
神の備え給う道
2011.07.24
み言葉を信じて
2011.07.31
あなたはわたしの愛する子
2011.08.07
命の恵みを共に受け継ぐ
2011.08.14
主イエスに力を与えられ
2011.08.21
試みを受けられた主
2011.08.28
神と等しい方
2011.09.04
今やその時
2011.09.11
祝福を受け継ぐ
2011.09.18
主イエスについての証し
2011.09.25
神からの誉れ
2011.10.02
命のパンのしるし
2011.10.09
父である神をたたえる
2011.10.16
わたしだ。恐れることはない。
2011.10.23
苦難と希望
2011.10.30
信じる
2011.11.06
天への凱旋
2011.11.13
キリストの勝利
2011.11.20
短い信仰告白
2011.11.27
朽ちない食物
2011.12.04
主イエスのもとへ
2011.12.11
かつてと今
2011.12.18
主イエスによって生きる
2011.12.25
飼い葉桶の乳飲み子
2012.01.01
去るか留まるか
2012.01.08
神の恵みの善い管理者
2012.01.15
時を支配し給う神
2012.01.22
わたしについて来なさい
2012.01.29
主の真実によって
2012.02.05
主キリストは神の御許から
2012.02.12
勝利を約束されている苦難
2012.02.19
主イエスの行かれる所
2012.02.26
生ける信仰
2012.03.04
主イエスへの態度決定