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右の手を取ってくださる主

説教要旨(11月9日朝礼拝より)
詩編 73:1-28
伝道師 上田真由美

 この詩人は「神は心の清い人に対して、恵み深い」お方であると思っていました。「心が清い」とは、心が2つに分かれていないことです。しかし最近は、その確信が揺らぎ、まるで「足を滑らせ」立っていられない心境だと言います。なぜならば、悪い事をする人がかえって栄えるのが目に映り、妬ましく思うからだと言うのです。
 そういう中で、礼拝の場所に来て、もう一度振り返ってみたら、自分の思いは間違っていた、この世を造られた神は、この世において義を確かに行われていることを悟った、と言うのです。そして、こういう言葉が出ます。「けれども、わたしは常にあなたと共にあり、あなたはわたしの右の手を保たれる(口語訳)」。この言葉は、矛盾に満ちたこの世界で、神様を信じて生きていくにはどこに力を見出したらよいのかを教えてくれています。礼拝に招かれて与えられたことは「けれども」です。
 信仰者は「けれども」の連続ではないでしょうか。例えば、信仰生活をしているためにこんな損や不幸がある「けれども」、神の恵みが与えられている。あるいは、呟きたいことがある「けれども」、礼拝において、自分の言葉を捨て切って、<神の言葉>を聞く中で、聖霊の導きによって、造り変えられた、というふうに。
 しかし、自分の「けれども」だけでは十分ではありません。「神に逆らう者」の場合は「わたしと共にあり」でしょう。自分の立場や願いを守ることが損をしない幸いな道だと考えるからです。ところが、今日の聖書が示していることはその逆です。「あなたと共にあり」です。この「あなた」は、人間と同じ姿をとり、人間の言葉で私たちに会ってくださる人であり、世界全体の罪の惨めさをご自分の身に負い、取り除いてくださった神です。人であり神であるという全能さで出会ってくださる造り主だからこそ、私たちよりも遙かに私たちの悩み苦しみのすべてを知っておられるのです。そして、私たちは安心して、その悩み苦しみのすべてを打ち明けることができ、「あなたと共にあり」と言えるのです。自分の方が必死に捕まえて安心していても、いつ自分の手が外れるか分かりません。天地の造り主、全能の父なる神がどんな時も自分を捕えて離されないから、私たちは本当に安心していられるのです。
 自分は信仰深くない。それなのに、神様の方は悩み苦しみに弱る自分を軽蔑しないで「けれども」と言って捕まえていてくださる。闇に墜ちそうな私たちを見切らないで「けれども」と言って御子をこの闇の世に送り込み、十字架に身捨てたという神の全能の力を振るって引き上げてくださる。私たちの「けれども」は、この神様の「けれども」によって裏づけられています。神様の「けれども」があるから、「わたしがわたし自身のものではなく、体も魂も、生きるにも死ぬにも、わたしの真実な救い主イエス・キリストのものである(『ハイデルベルグ信仰問答』問1の答え)」と言うことができます。それが信仰者の唯一の慰めです。 
 続けてこの詩人は、神様を「わたしの右の手を保たれる」お方だと告白します。右手は利き手。物を書いたり作ったりして働きます。人に物を与える、親しい挨拶を交わす、というふうに差し伸べる手としても活動します。ところが、様々な働きをする右手は、神の救いの恵みをいただく手となり、神様のご挨拶を受ける手となったのです。悩み苦しみに負ける私たちであるのに、あのお方のぬくもりがこの手を通って入ってくることになった。それは、自分勝手に右手を用いることができなくなったことでもあります。「けれども」、神の恵みを受け取る以上に、右手の務めが完全に果たされることはないのです。私たちは、神様のぬくもりがこの手を通して伝わってくるような意味で、神のものとされているのです。
 

説教一覧(2014年度)

2014.6.1
目を留めてくださる神
2014.6.8
地の果てに至るまで
2014.6.15
新しい喜び
2014.6.22
あなたを訪ねる王
2014.6.29
「できれば」と言うのか
2014.7.6
天使のメッセージ
2014.7.13
あなたはどこにいるのか
2014.7.20
今こそ、安らかに
2014.7.27
私のいるべき場所
2014.8.3
主の道を整えよ
2014.8.10
洗礼を受ける主
2014.8.17
主よ、しかし
2014.824
神に至る道
2014.8.31
誘惑と戦う武器
2014.9.7
実現する聖書の言葉
2014.9.14
実を結ぶ神の言葉
2014.9.21
力あるみ言葉
2014.9.28
町々を巡る主イエス
2014.10.5
み言葉が差し込む
2014.10.12
疲れた者に力を
2014.10.19
大胆に主に近づこう
2014.10.26
罪人を招く主
2014.11.2
もう泣かなくてよい
2014.11.9
右の手を取ってくださる主
2014.11.16
新しい喜び
2014.11.23
命に与る安息日
2014.11.30
主イエスの祈り
2014.12.7
幸いなるかな
2014.12.14
マリアの救い
2014.12.21
見よ、救いのしるしを
2014.12.28
地に届く天の光
2015.1.4
その方の星を見よ
2015.1.13
神の子とする霊
2015.1.18
心に逆らう愛
2015.1.25
主イエスを信じなさい
2015.2.1
土台の上に建てる
2015.2.8
痛みを伴う愛
2015.2.15
ただ一言に賭ける
2015.2.22
来たるべき方が来た
2015.3.1
歌え、神の国の歌を
2015.3.8
主イエスの言葉を思い出して
2015.03.15
安心して行きなさい
2015.3.22
主に仕える旅
2015.3.29
神の国の秘密