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今こそ、恵みの時

説教要旨(6月6日朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙二 6:1-2
牧師 藤盛勇紀

 私たちは、神の独り子の死というあり得ない代償によって罪赦され、赦されただけでなく、神の子としていただきました。ところが、それほどの恵みを放り出し、無駄にするようなことがあります。だからパウロは、「神からいただいた恵みを無駄にしてはいけない」と、わざわざ「神の協力者として」勧めるとまで言います。なぜそんなことになってしまうのか。それは、神の恵みを「恵み」としていただこうとしないからです。神の側で全てを用意された。なのに、私たちが呆れるほど頑なで、「神の恵みはどこだ」とか「こんな私は神の子ではない」と、勝手に恵みを拒んだりこねくり回しているからです。
 「神の恵みが分からない」と思わされる経験や信仰的危機は誰にでもあります。試練ばかりじゃないか、自分だけ損しているんじゃないか、「何が神の恵みか」と。順風の中でも、自分は大した働きをしていないとか、また罪を犯してしまったとか。自分は神の子に相応しくない。自分が受けた洗礼は間違いだったのではないかとさえ思う。
 しかし、あなたの洗礼や救いは、あなたの裁量で決まるのですか? 「恵み」としていただいたのではなかったのですか? 人は弱った時に最も強力に頑なになり、身勝手な決めつけをします。神の恵みが無駄にされるとき、いつもその人は「独り決め」しているのです。神を差し置いて自分で自他を裁き、独断している。
 パウロはイザヤ書49章の言葉を引用します。その3節までには主の恵みの約束が語られますが、4節は、恵みを受けた者が空しくつぶやく言葉です。自分の業は神のためになったのだろうか。無駄なことをしてきたのではないだろうか。イザヤは自分のしたことを見つめ自己反省に沈む。危うい瞬間です。しかしすぐに主に対する信頼の言葉が続きます。なぜなら、主の御言葉があるからです。
 パウロが引用したのは8節前半の言葉です。自分が置かれた惨めな現実を見ながらつぶやく者に対して、「私は、恵みの時にあなたに答えたのだ!」「救いの日にあなたを助けたのだ!」と主は言われます。
 私たちも周りの現状や自分を見つめていると、「なぜこうなのか。神の約束、神の恵みは一体どうなった」となって行きます。自分のことばかり見ようとすると、神がしておられることが見えなくなり、神の御心、御計画が、自分の人生と交わらなくなってしまいます。しかし「神の恵み」は、私たちがどうあるか、どうだったかとは無関係に、私たちを赦し、神の子とし、永遠の命を約束し、完全に良いものを全て与えてくださいます。私たちの神は、恵みの神です。
 イザヤは言います。「しかし、わたしを裁いてくださるのは主であり、働きに報いてくださるのもわたしの神である」。自分の惨めな姿をも知りながら、神を讃えるのです。自分の何かによって自分が何者かが決まるのではないことを知っていたからです。「母の胎にあったわたしを、御自分の僕として形づくられた主は、こう言われる。わたしはあなたを僕として、ヤコブの諸部族を立ち上がらせ、イスラエルの残りの者を連れ帰らせる」。自分がこうあるのは、神の選びと約束による、まさに「恵み」でした。自分が何をしたか、何を持っているかではない。《神が》何をなさろうとしておられるか、《神が》私をどう用いられるかです。
 だからこそ、今がどうであろうと、私たちは自分を神にお献げするのです。献げて、用いていただいて、神によって生かしていただいて、まさに神と共に生きます。だから、自分の心の目を、耳を、自分にばかり向けるのをやめましょう。あなたへの主のみ言葉があるのですから、聞けばよいのです。「み言葉はあなたのすぐ近くにある」「信仰は、聞くことに始まる」と聖書は言います。今が、恵みの時、救いの時です。

説教一覧(2021年度)

2021.4.4
私に触れてみよ
2021.4.11
罪の贖いの犠牲
2021.4.18
信じたゆえに語る
2021.4.25
日々新たにされて
2021.5.2
天の住まい
2021.5.9
恵みによって贖われ
2021.5.16
駆り立てる愛
2021.5.23
主の証人となる
2021.5.30
新しい人の創造
2021.6.6
今こそ、恵みの時
2021.6.13
聖なる国民
2021.6.20
見よ、生きている
2021.6.27
神の息子、娘たち
2021.7.4
共に死に、共に生きる
2021.7.11
光の中を歩む時
2021.7.18
救いに至る悲しみ
2021.7.25
帰ってみれば分かる
2021.8.1
豊かな者はさらに豊かに
2021.8.8
最も小さい者
2021.8.15
溢れ出て、なお潤う
2021.8.22
主の栄光の現れ
2021.8.29
あの時の熱意を今
2021.9.5
豊かに蒔き、刈り取る
2021.9.12
頼るべき一人の方
2021.9.19
要塞をも破壊する力
2021.9.26
弱そうだが強い
2021.10.3
誇る者は主を誇れ
2021.10.10
神の守りのしるし
2021.10.17
神の熱い思い
2021.10.24
低き所より光を放つ
2021.10.31
決して廃れない誇り
2021.11.7
弱いときにこそ強い
2021.11.14
主があなたに油を注ぎ
2021.11.21
信仰の遺産
2021.11.28
キリストにある弁明
2021.12.5
キリストの弱さと力
2021.12.12
見よ、この時を
2021.12.19
あなたの光、あなたの王
2021.12.26
あなたの中のキリスト
2022.1.2
愛と平和の神と共に
2022.1.9
約束の聖霊
2022.1.16
イエスの名を呼ぶ人々
2022.1.23
無欠の豊かさ
2022.1.30
何による一致か
2022.2.6
十字架の言葉は神の力
2022.2.13
裁きと栄光
2022.2.20
神の力、神の知恵
2022.2.27
誇る者は、主を誇れ
2022.3.6
赦しとしての神の力
2022.3.13
神の知恵は十字架の愛
2022.3.20
地の果てに至るまで
2022.3.27
霊によって一切を知る