死の涙の終わり
説教要旨(4月1日 イースター礼拝より)
ヨハネによる福音書 20:1-18
牧師 藤盛勇紀
近年一般的にも名前が知られるようになってきた「マグダラのマリア」。イエス様と出会う前の彼女は、七つの悪霊に取り憑かれていましたし、いわゆる「罪深い女」と考えられてきました。そんなマリアに、イエス様は目を向けられました。イエス様との出会いによって、マリアは初めて一人の人間として迎えられたのでしょう。そして彼女は他の多くの人たちと一緒に、イエス様と弟子の一行に仕え、主のお言葉を命の糧として聞いていたのです。しかし、その喜びは長くは続きませんでした。イエス様は多くの人々に捨てられ、弟子たちに裏切られて十字架につけられ、群衆の嘲りを受けながら、惨めに死んでしまったのです。
マリアは、安息日が明けた日曜日の朝を待ちかねて、イエス様が葬られた墓に向かいます。イエス様のいない人生は考えられない。たとえ亡骸(なきがら)でもいいから、主にお会いしたい。しかし彼女が見たものは、空っぽの墓穴でした。なぜかイエス様のご遺体も無い。混乱した彼女は弟子たちの元に走り、この事態を知らせます。ペトロともう一人の弟子が墓に走りましたが、彼らもやはり、空っぽの墓を確認しただけで、家に帰るしかありませんでした。
マリアは一人墓に残り、泣いていました。泣いているマリアに誰かが話しかけます。「婦人よ、なぜ泣いているのか」。「わたしの主が取り去られました。どこに置かれているのか、わたしには分かりません」。そう言いながら、マリアは後ろに立っているイエス様を見ます。しかし「マリアは、園丁だと思って言った。『あなたがあの方を運び去ったのでしたら、どこに置いたのか教えてください。わたしが、あの方を引き取ります』」。そこでイエス様は改めて「マリア」と名前を呼ばれます。えっ!?「彼女は振り向いて、ヘブライ語で、『ラボニ!』(先生)と言った」。
マリアは自分の目でイエス様を見ていたのに、声をかけていただくまで「それがイエスだとは分からなかった」というのです。主が、語りかけてくださる。そこで生きておらる主に気づくのです。「先生!」 思いもしないイエス様との再会でした。
マリアは思わずイエス様に抱きついたのでしょうか、「わたしにすがりつくのはよしなさい」と主は言われます。復活の主は、マリアが自分で捕らえるべきお方ではない、主が、マリアを捕らえてくださるからです。
私たちの信仰も救いも、自ら獲得するのものではありません。生きておられる主に気付かされ、主に結ばれて与る命なのです。イエスの復活も、理性や知性で理解し把握しようとしても無理です。あるいは「信じよう」という努力や学びによって信じられるものでもありません。つまり、《私たちが主ではない》のです。私たちはただ、主によって、気付かされるのです。生ける主に気付いたから、お応えするのです。
復活の主と共に生きる命は、死という隔たりを越えてしまっています。私たちの目に映る死は、どうしたって《終わり》です。死を超えて何をも持って行くこともできません。すべてが死の前で奪われます。
しかし、私たちが自分自身を失ってしまったとしても、主は私たちを捕らえ、決して手放されません。だから、主なる神との関わりだけは、死によっても奪われません。むしろ、失われていた私たちを、主は捕らえ、支え、交わりを保ってくださいます。
パウロはこう言いました、「死よ、お前の勝利はどこにあるのか。死よ、お前のとげはどこにあるのか」。死の棘は抜かれた! 死はもはや私たちを支配しない! 死よ、お前が死んだのだ! 死に涙してただ悲嘆に暮れるのでなく、死を笑い飛ばすことができるのです。死よ、どうしたのだ? お前の棘はどこにあるのか? 死よ、お前はすでに死んでいる! イースター、おめでとうございます。
説教一覧(2018年度)
2018.4.1
死の涙の終わり
2018.4.8
見ゆる希望は希望にあらず
2018.4.15
キリストが充ち満ちる
2018.4.22
天に座す我ら
2018.4.29
神の恵みは現れる
2018.5.6
遺残は遠く、今は近い
2018.5.13
神を神として賛美する
2018.5.20
新しい人間の創造
2018.5.27
我らは神の住まい
2018.6.3
知らされた計画
2018.6.10
計り知れない富
2018.6.17
罪人を招くイエス
2018.6.24
とれない弾丸
2018.7.1
大胆に神に近づく
2018.7.8
御言葉を行う
2018.7.15
主の愛を味わう
2018.7.22
主は一人
2018.7.29
一人ひとりへの賜物
2018.8.5
成熟した人とされる
2018.8.12
新しい人を着る
2018.8.19
恵みが響き合う
2018.8.26
勝ち戦
2018.9.2
神の愛に留まる
2018.9.9
尊い神の秩序
2018.9.16
あなたは光の子
2018.9.23
霊による賛歌
2018.9.30
キリストが愛された教会
2018.10.7
結婚のミステリー
2018.10.14
裏切り者をも
2018.10.21
神の親心
2018.10.28
地上に敵無し
2018.11.4
神の国を前方に見て
2018.11.11
ここから見れば
2018.11.18
私たちの主、イエス
2018.11.25
あなた方の間に主の平和
2018.12.2
神の武具をまとう
2018.12.9
絶えず祈れ
2018.12.16
獄中の光
2018.12.23
見よ、救いのしるしを
2018.12.30
主である私が語り、行う
2019.1.6
朽ちない愛の恵み
2019.1.13
ひとつの福音
2019.1.20
我、ここに立つ
2019.1.27
あなた方もここにいる
2019.2.3
はるかな距離を超えて
2019.2.10
体に必要なもの
2019.2.17
福音は神の力
2019.2.24
福音を恥じず
2019.3.3
人間の不義と神の愛
2019.3.10
自由という転落
2019.3.17
終わりから今を見る
2019.3.24
お別れの挨拶
2019.3.31
波打つ大地に立つ