私のもとで休らえ
説教要旨(1月26日 朝礼拝)
マタイによる福音書 11:20-30
牧師 藤盛勇紀

イエス様の弟子たちの行為がファリサイ派の人々の目に止まります。「七日目は、あなたの神、主の安息日であるから、いかなる仕事もしてはならない」。十戒の第4戒「安息日」の戒めは、全てのユダヤ人にとって最も生活に密着した重要な戒めでした。当時「律法」と言えば、聖書に記された律法よりもむしろ、ファリサイ派の学者たちの解釈の積み重ねの「口伝律法」が権威を持っていました。彼らの解釈では、麦の穂を摘んで食べること自体は罪ではないが(申命記23:15~16)、安息日に禁じられた農作業だとされたのです。
律法は人をがんじがらめに縛るものではなく、深い配慮に満ちています。出エジプト記と申命記では、安息日を守るべき理由はそれぞれ説明が異なります。出エジプトでは、神が創造の業を終えて7日目に休まれたことに基づいています。申命記では、「そうすれば、あなたの男女の奴隷もあなたと同じように休むことができる」からだと。あなたもエジプトで奴隷だったが、主が導き出されたではないか。こうして、主の大いなる御業をほめたたえ、大いなる神の御腕に抱かれている幸いを思い、皆で仕事を休んでその憐れみと慈しみを味わうのです。
ところがファリサイ派や律法学者は、主の安息よりも、自分の行動が規定に従っているかどうかに神経を尖らせ、他人の行動にも目を光らせました。「あれは違反だ」「これは戒めに抵触する」と取り締まりに汲々とました。コロナが猛威を振るった時の「マスク警察」のように、他人の行為をいちいち指弾する。良く言えば意識が高い、悪く言えば形にこだわる面倒くさい人。彼らはイエスに言います。「ご覧なさい。あなたの弟子たちは、安息日にしてはならないことをしている!」。
ファリサイ派の糾弾に、イエス様はまずダビデの例を挙げました(サムエル記上21章)。また、祭司は安息日にも神殿で働くが、それは律法が命じている、だから安息日の掟を破っても罪にはならない。それを知らないのかと問います。主はさらに続けます。「言っておくが、神殿よりも偉大なものがここにある」。
神殿は神が臨在される場、神がご自身の存在を現される所です。そこでなされること、起こることは、神がそこにおられ、神との交わりが現されることです。そこに生きることは何より喜ばしいこと、誇らしいことです。「その神殿よりも偉大なものが、ここにある」と主は大胆に宣言されます。この方に起こること、その言葉と御業、それをなしているイエスご自身が、神が生きておられることです。だから主は、「神の国は来ている!」「悔い改めよ(立ち帰れ)!」「私に来い!」と言うことができたのです。そして「疲れた者、重荷を負う者は、だれでもわたしのもとに来なさい。休ませてあげよう。…わたしの軛を負い、わたしに学びなさい。そうすれば、あなたがたは安らぎを得られる」(11:28-30)と。私のもとに来なさい。私に本当の休みがあるのだ。私につながれて私と一緒に歩むなら、そこに真の安らぎがあるからと。
「わたしが求めるのは憐れみであって、いけにえではない」(ホセア6:6)。主は憐れみに満ちた神ではないか。いけにえや献げ物、宗教儀式などではなく、憐れみを求め、愛を求められる神ではないか。この憐れみの神、愛の神を忘れているから、戒めの文字と形を掲げて人の罪のあら探しをし、人を裁きながら、自分を高みに上げている。その典型が「休み警察」のファリサイ派でした。憐れみ深い神の言葉をただの文字とし、「休まないとは何事だ!」と目をギラギラさせる。まさに「文字は殺し、霊は生かす」(2コリント3:6)。
誰でも私のもとに来なさい、休ませてあげようと言われお方が、重荷にあえぐ罪人のために死んで復活し、新しい命を与えてくださいました。そして「命の霊」となって私たちの内に注がれています。この命を知って真の安息に与ったのが週の初めの日でした。だからキリストに結ばれた者は週の初めの日に礼拝をするようになったのです。
「父はこのように礼拝する者を求めておられる」と主は言われました。霊なる神は礼拝の形を求めておられるのではなく、「このように礼拝する者」、あなたを求めておられます。霊によって、神を「アッバ、父よ」と呼ぶ。ここに私たちの安息があります。
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