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あなたは、誰ですか

説教要旨(1月29日 朝礼拝より)
ヨハネによる福音書 1:19-28
牧師 星野江理香

 エルサレム神殿の祭司ザカリアを父とする洗礼者ヨハネを、同じ神殿の「祭司やレビ人」(19)たち、また彼らをヨハネのもとに遣わした、ここで「エルサレムのユダヤ人たち」と表記されている最高法院の人々が知らなかったはずがあるでしょうか。それにもかかわらず、遣わされた人たちはヨハネに、「あなたは、どなたですか」と尋ねました。それは、私たちが初対面の人に相手の名前や出自を尋ねるのとは違います。彼らの問いかけは、霊的な意味におけるヨハネの正体、本質的な存在の意味を明らかにしたいということだったからです。
 そこでヨハネは問われるままに、自分はメシアではない、預言者エリヤの再来でも、「申命記」が伝えるあの「預言者」でもないと否定して、自分はメシアを受け容れる備えとしてイスラエルの心を神様に向ける「呼びかける声」に過ぎないと答えます。しかし、そんなふんわりした答えに遣いの人たちが納得できるはずもなく、彼らはヨハネに、いったい何の権限で神の民である自分たちに悔い改めを説き洗礼を授けるのか問い質すのです。けれども、この時は未だ神様の救いのご計画の詳細は<奥義>として隠されていたので、ヨハネの返答に限界があるのも無理からぬことです。
 一方、私たちは、すでに、主イエスの十字架のみわざによって罪を赦され、神様の救いのご計画についても聖書を通して示されています。ですから、ヨハネが問われたように、「あなたは誰か、何者か」とその本質や霊的正体を尋ねられても、容易に答えることができるはずなのです。 
 多くの人が物心つく頃や思春期に「自分は何者なのか」「どう生きるべきか」という、いわゆる「自分探し」の人生の旅を経験したことでしょう。そして、多くの場合、与えられた人間関係の中で、自分の位置や居場所や人生の喜びを発見する経験をされたことと覆います。けれども、たとえば、今捉え得ている「自分」が失われた時は、それは、どうすればよいのでしょうか。
 若くしてアルツハイマー型認知症に罹患したクリスティーン・ボーデン姉は、病気のため数年後には自分で自分がわからなくなり、そのうちに死に到ることに不安と恐怖を抱きました。けれども、すでに信仰者であった彼女は、いつか自分で自分がわからなくなるとしても、神様が自分を知っていてくださる限り、最後まで本質的な自分でいられることに気づいて、病気の不安や恐怖から解放されたことを著書の中で語っています。それは、たった独りのみ子を私たちの罪の贖いとして十字架の死にわたされ、私たちに救いの恵みを与えてくださるほど私たちを愛してくださる御方との関係において、私たちの本質…つまり「私は誰なのか」ということは、規定され決定されるということです。
 ところで「あなたは誰なのか」という問いは、アメリカ合衆国長老教会のカテキズムの第一問答を思い起こさせてくれます。その第一問はそのものずばり「あなたは誰ですか?」であり、答えは「わたしは、神さまの子どもです」と明快です。それは、たとえ私たちが全ての記憶を失うことがあるとしても、病いのため自分で自分がわからなくなるようなことがあっても、けっして揺らぐことのない答えです。主イエス・キリストの十字架のみわざによって与えられた、私たちの存在の本質です。罪びとであり被造物でありながら、神様の永遠の命に生きることをゆるされて、神様との愛し愛される関係の中に、神様に愛されている子どもとして、置いていただいているのです。それゆえに私たちは、私たちが何者であるかを確信しながら、主の平安のうちに、それぞれの賜物を用いて、委ねられたそれぞれの務めを一日一日全うしていきたいのです。

説教一覧(2022年度)

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