神の言葉が分かる
説教要旨(3月26日 朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙一 14:6-12
牧師 藤盛勇紀
また「異言」の問題が取り上げられます。「わたしがあなたがたのところに行って異言を語ったとしても…、何の役に立つでしょう」。「あなたがたも異言で語って、明確な言葉を口にしなければ、何を話しているか、どうして分かってもらえましょう。空に向かって語ることになる」。当然のことです。パウロは「異言」という賜物には意味があると認めていますが、語っていることが「分からなかったら」、無意味だ、空しいと言うのです。
では、「分かる」とはどういうことか。異言を語っても、それが「啓示か知識か預言か教え」にならなければ空しい。つまり「分かる」とは、語られたことが「啓示」か「知識」か「預言」か「教え」になることなのです。
「啓示」とは、隠されていたことが明らかにされることです。それは神についてですが、人間が自らの力で明らかに神を知った例はありません。人が神を知るとすれば、神が人にご自身を現してくださるしかありません。神が、まさにご自分を啓き示されることです。
人が自ら神を知ることができないなら、啓示による他ありません。ここで「知識」とは、啓示に基づいて人間が知り得ること、知るべきことです。それは、私たちが告白している信仰の内容です。私たちは信仰告白の中で、「キリストによりて啓示せられ、聖書において証せらるる唯一の神は…」と告白します。ここが鍵です。神は、イエス・キリストにおいてご自分を啓示されましたが、その啓示は一方通行です。神が、ご自身から私たちに、という方向です。
私たちは、神によって造られたもの。創造主なる神と被造物との間には、決して乗り越えることのできない永遠の隔たりがあります。被造物でありながら、自ら創造主に背を向けた人間は、神を知る力もなければ、知る資格もありません。だから人は、自分自身の存在の意味も分からないまま生きて死にます。
しかし、神は真実であり、愛であり、造られた私たちを愛し、祝福することを決意しておられます。このお方が、永遠の隔たりをご自分から乗り越えてしまわれました。この歴史の中に自ら乗り込んで来て、ご自身を私たちに現してくださいました。現されただけでなく、ご自分を与えてしまわれた。それが、イエス・キリストにある啓示です。
「啓示」は、父なる神が御子を世に送られた、神の行為、神の自己犠牲の愛の業です。それは、イエス・キリストの出来事に現されました。神は御子を世に送り、十字架の死に渡し、復活させ、御子の昇天と共に、聖霊を送ってくださいました。この聖霊によって、キリストの救いの出来事を私たちに知らせ、御言葉を理解させ、分かるようにさせ、信じさせ、主が再び来られる時まで、常に私たちと共にいて、常に導いておられます。
こうして、キリストによる啓示は、単に神がご自身を「示された」だけでなく、そこに神ご自身の到来があります。啓示において神ご自身が来て、私たちを命の交わりに入れてくださる。だから、「神の啓示」は「神の愛」であり、啓示はキリストなのです。
「知識」は、啓示を人間の側で捉えたものです。その知識は神を知ることですが、「神を知る」とは、神と私たちが「交わる」ことです。「知識」と言っても、自分一人で持っているような知識は、神の知識ではありません。聖書で「知る」とは、人格的な関係、命の交わりにあることです。
「預言」はそのことを語り伝えること。啓示に基づいて、啓示であるキリストに遣わされて語ることです。さらにそれが、信仰生活上の指針を示したり、指導する言葉ともなるので、「教え」になります。
こうして「預言」は人を救い、慰め、戒め導く、神の愛の言葉なのですが、「異言」は人を救いに導く力はありません。だから1節の言葉に帰るのです。「愛を追い求めなさい。霊的な賜物、特に預言するための賜物を熱心に求めなさい」。神の愛はキリスト、預言はキリストを現す言葉です。この預言を求め、キリストを知ることを求めましょう。
説教一覧(2022年度)
2022.4.3
霊の人か、肉の人か
2022.4.10
主がお入り用なのです
2022.4.17
さあ行って、伝えなさい
2022.4.24
命の主なる神
2022.5.1
キリストという土台
2022.5.8
出来損ないのその先に
2022.5.15
あなた方は神の神殿
2022.5.22
私たちのもの、神のもの
2022.5.29
神の奥義の管理者
2022.6.5
霊の風に吹かれる
2022.6.12
言は神であった
2022.6.19
世のくずとされても
2022.6.26
信仰は言葉ではなく力
2022.7.3
悪意の種を取り除け
2022.7.10
災いの中でも働く方
2022.7.17
キリストの体を現す交わり
2022.7.24
天使たちをも裁く
2022.7.31
神の栄光を現せ
2022.8.7
自分の体は誰のものか
2022.8.14
神に遣わされた人
2022.8.21
平和な生活を送るために
2022.8.28
神に召された者として
2022.9.4
世の有り様は過ぎ去る
2022.9.11
神の霊を受けて生きる
2022.9.18
知ることは愛すること
2022.9.25
はじまりは全て主
2022.10.2
自由を用いる自由
2022.10.9
この世の権威の猛威
2022.10.16
福音を語る者の自由
2022.10.23
福音を告げずにいられない
2022.10.30
共に福音に与るために
2022.11.6
朽ちない冠を得るために
2022.11.13
恵みの上に恵みを受けて
2022.11.20
自立したと思うな
2022.11.27
祝福と賛美の交感
2022.12.4
神の栄光のため
2022.12.11
荒れ地にも恵みはある
2022.12.18
自分で判断しなさい
2022.12.25
あなたを導く星
2023.1.1
主の食卓に集まろう
2023.1.8
新しい契約
2023.1.15
自分をわきまえる
2023.1.22
霊の賜物
2023.1.29
あなたは、誰ですか
2023.2.5
私たちはキリストの体
2023.2.12
しるしは示された
2023.2.19
人それぞれの賜物
2023.2.26
神から注がれる愛の実
2023.3.5
信仰、希望、愛
2023.3.12
私はこの方を知らなかった
2023.3.19
勧め、慰める預言
2023.3.26
神の言葉が分かる