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神の不思議な選び

説教要旨(3月1日 朝礼拝より)
マラキ書 1:2-5
ローマの信徒への手紙 9:6-18
牧師 藤盛勇紀

 「わたしはヤコブを愛し、エサウを憎んだ」とあります。神はヤコブ(イスラエル)を愛し、ヤコブの兄エサウを憎んだと。ヤコブとエサウは双子の兄弟です。エサウは父イサクから愛され、ヤコブは母リベカから愛されました。極めて人間臭い家庭問題、人間の偏愛の問題、愛憎の問題です。
 ここでは何と、それが神のこととして語られるのです。神も人間のように憎む? しかし、神の愛は人間の愛とは違い、神の憎しみは人間の憎しみとは違います。たしかにエサウは長子の特権を軽んじ、自ら放棄してしまいました。しかし神は、エサウがそんな罪を犯した《から》憎んだのではありません。なぜなら神の選びは、「その子供たちがまだ生まれもせず、善いことも悪いこともしていない」先のことだからです。
 人間の愛は偏っています。狩りが上手い《から》、料理が上手だ《から》惹かれる。こうしてくれ《たら》、こんな人で《あれば》愛する。「だから」「たら・れば」の愛です。人間は、善い行いや麗しい行為や能力に惹かれ、縛られる。その逆を憎みます。人間は愛と憎しみの奴隷なのです。しかし、神は万物の「主」であられます。
 しかし、なぜ「エサウを憎んだ」のか? 価値あるものや大切なものを「失ってはじめて分かった」という経験があります。不合格という現実があるから、合格の喜びがある。《捨てられる》ことがあるから、《選ばれる》ことがありがたい。人間の経験や歴史というのはそういうものでしょう。
 神は、あなたが愛されていることを知らせるため=経験させるために、あえて「選ぶ」のです。つまり、「捨てられる」という反面を否定するのです。だから、神の救いのご計画の中には、ヤコブを愛しエサウを憎むという、光と闇のような両面がある。両者が表裏で置かれていないと、人間は分からないのです。神との関係において、私たちには根本的な闇があり、光を拒絶するとことがあります。それは自分ではどうにもならない根源的な問題なので、そこから光の下へ引き出してもらってはじめて、自分がどれほど暗かったかを知るのです。
 人間は根本的に《真の命》が分かっていません。だから悲惨や滅亡の経験や、死の予感から、ようやく求め始めるのです。こうして間は、最も大切なことについては必ず後手、受け身になります。感染症の対策もそうです。よく「最悪の事態を考えて対策を」と言われますが、実際は不可能です。真に最悪のケースに対応するならば、人間は生きられなくなるからです。
 人間は原理的に後手であることが避けられません。なぜなら、全ての人間は最も大切なものを《先に捨ててしまっている》からです。それは最初の人間アダム以来です。最も大切なものを捨ててしまったことによって《捨てられた者・滅びに定められた者》となった人間。しかし、その人間の運命を、キリストは終わりにしたのです。
 1コリント15章に興味深い二つの言葉でイエス・キリストが表現されています。一つは「最後のアダム」。それと対に「第二の人」。「アダム」は、神との命の交わりを捨てた全ての人類。イエスはそんな人間の終わり「最後のアダム」となり、同時に、死を破って復活した神の命の霊によって生きる新しい人「第二の人」となられました。
 こうして、キリストには「古い人」アダムと、永遠の命に生まれた「新しい人」の両者があり、私たちの「古い自分」はキリストと共に十字架につけられ、キリストの命に生きる「新しい人」とされています。
 キリストには神の選びと命があり、同時に、神から見捨てられた滅びがあります。そして、イエスご自身が滅びの闇を引き受けてくださったから、私たちに対して、「あなたは闇でなく光に生きよ」「滅びでなく命に生きよ」「信じない者でなく信じる者になりなさい」と言われるのです。
 

説教一覧(2019年度)

2019.4.7
神の愛の怒り
2019.4.14
正しい者は一人もいない
2019.4.21
私があなたと共に行く
2019.4.28
起きて神を呼べ
2019.5.5
行いによらず、恵みによって
2019.5.12
信仰によって現実を生きる
2019.5.19
イエスの血による贖い
2019.5.26
価を払わずに得よ
2019.6.2
父祖アブラハム
2019.6.9
聖霊の力を受けて
2019.6.16
神さまから与えられた家族
2019.6.23
主にある救い
2019.6.30
望み得ないときの望み
2019.7.7
希望は生まれる
2019.7.14
賛美の湧き出る泉
2019.7.21
神との和解
2019.7.28
罪人を愛する神
2019.8.4
神を誇る
2019.8.11
アンバランスな恵み
2019.8.18
恵みは満ちあふれる
2019.8.25
第二のスタート
2019.9.1
死から生きる
2019.9.8
上を見て生きる
2019.9.15
神から派遣されて
2019.9.22
賜物としての命
2019.9.29
きっぱりと捨てよう
2019.10.6
まず砕かれてこそ
2019.10.13 朝礼拝
土の器なれど
2019.10.13 夕礼拝
時が迫っているから
2019.10.20
絶望から生まれた信頼
2019.10.27
あなたの怒りは正しいか
2019.11.3
肉に死に、霊に生きる
2019.11.10
祈りの動機
2019.11.17
私たちは神の子
2019.11.24
神の子とされて
2019.12.1
神の子らよ現れよ
2019.12.8
祈れない時にも
2019.12.15
万事が益となる
2019.12.22
人となった神
2019.12.29
神の主権と深い愛
2020.1.5
神が味方ならば
2020.1.12
宿命をも破る主
2020.1.19
決して離さぬ愛
2020.1.26
神の友になりなさい
2020.2.2
愛されている確信
2020.2.9
主にあって
2020.2.16
同胞のための冒険
2020.2.23
血よりも濃く
2020.3.1
神の不思議な選び
2020.3.8
イエスを主とする仲間
2020.3.15
神の怒りと憐み
2020.3.22
生きて残された者
2020.3.29
救いは向こうから来る