なぜ腹を立てるのか
説教要旨(1月7日 朝礼拝)
マタイによる福音書 5:21-25
牧師 藤盛勇紀
「しかし、わたしは言っておく」。イエス様は律法の新しい解釈をし、真意を浮かび上がらせます。その肝は「神は人の行為を見るのではなく、人の心を見る」ということです(⇒サムエル上16:7)。律法の規定は、殺人という行為が問題にされています。しかし、実際その行為に及ぶ前、すでに心の中でその人を殺していることをイエス様は指摘されました。もし心の中を見られたら、私はおしまい。そう思われることを誰でも抱えています。神はその全てを見ておられるのです。
人を殺すなんて大それたことなど考えたこともない、と言う人も、人を恨んだり憎んだり、妬んだりすることはあるでしょう。そして、人から憎まれたり妬んだりされると、「あんな人いなければよいのに」と思います。
人類最初の兄弟に最初の殺人が起こりました(創世記4章)。カインは弟アベルと共に神を礼拝していた時に激しく怒ります。「弟と俺の扱いの違いはなんだ!」。すでに、共に生きる兄弟との関係は破壊されていました。カインがアベルを殺したのは野原でしたが、神を礼拝している時、すでにアベルを心の中で無き者にしたのです。だから、なのです。「だから、あなたが祭壇に供え物を献げようとし、兄弟が自分に反感を持っているのをそこで思い出したなら、その供え物を祭壇の前に置き、まず行って兄弟と仲直りをし、それから帰って来て、供え物を献げなさい」。
礼拝に来ても、兄弟から反感を買い、恨みを買うようなことをした、それが心配や怒りの種になっているのだったら、礼拝を止めて、まずは帰って仲直りをせよと。驚くべきことです。神を礼拝すること以上の行為を私たちは知りません。その意味で礼拝は全てに優先します。しかし神は、礼拝という私たちの「行為」を受け入れられるのではありません。
なぜ、イエス様はここで礼拝の話をなさったのか? この後イエス様は「あなたがたは偽善者のようであってはならない」と教えられます。偽善者とは律法学者やファリサイ派、見るからに神に仕え、神の言葉に従い、立派な祈りをしている宗教者です。そんな人たちを「偽善者」と呼んだのです。
「今私たちは礼拝をしています」と言えます。しかしそれは「人が見たら」そう言えるだけです。主は言われました。「父はこのように礼拝する者を求めておられる」。神が求めておられるのは、どれだけ整えられた礼拝かでも、どれだけ真剣な態度で礼拝しているかでもありません。「霊と真理をもって礼拝する者」、そういうあなたを求めておられるのです。
礼拝は生ける主との霊的な交わりが命です。そこで神の愛と真実に触れます。「なのにあなたは兄弟を心の中で殺しているのか。あなたは自分が神のように他者の存在を左右しようとしていないか。そんなあなたが、自分は命を得ようと言うのか」。そう問われています。あなたは「殺すな」との戒めを守り、罪を犯していないと思っている。しかし、あなたは心の中でどうか。私は知っているのだ、と。
「律法の中でどの掟が最も重要か」との問いに、イエス様は、神を愛することが最も重要な第一の掟だと言われました。しかし第二も同じように重要だ、「隣人を自分のように愛しなさい」と。この二つは分けられても切り離せない。聖書全体はここにかかっているのだと。
礼拝は主との霊的な交わりです。霊によって私たちは、神がどんなお方で、私たちのために何をしてくださったことを知り、私たちはこのお方を愛しています。それでいながら隣人を愛さず、心の中で抹殺する、そんなことはあり得ないことだろうと。この方が、「私を愛し、互いに愛し合いなさい」と命じるのです。主が私たちに命じる戒めは、この愛の戒めだけです。「私を愛しているなら、まず恨みを買っている兄弟や隣人のところに行って和解しなさい」と。それは確かに難しいことです。しかし、主はいつでも私たちを待っておられるから大丈夫です。イエス様によって神と私たちの間の和解はすでに成っています。だから、まずはあなたの心配の種になっている兄弟との関係を考えなさい、と主は言われます。
説教一覧(2023年度)
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