主の導き
説教要旨(2月14日 朝礼拝より)
サムエル記上 6:1-7:1
伝道師 杉山悠世
「神の箱」は神の御の御臨在を示すものです。信仰の助けにはなりますが、それを拠り所とし、偶像としてまつる事は誤りです。「神の箱」を戦場に担ぎ出したイスラエルの民たちは、箱を自分たちの所有物であるかのように軽々しく扱いました。ペリシテ人に敗北したイスラエルの民は箱を奪われ嘆きます。一方でペリシテ人とその神ダゴンには災いによって、すべてを治める真の神の勝利と臨在が示されます。
イスラエルの神の怒りをなだめるために、ペリシテ人は彼らの占い師と祭司たちに助言を求めました。そして、賠償の献げ物と共に「神の箱」を返還する事にします。しかし、ここでも人間の思いが露にされると共に、すべての出来事が主なる神の御業であるという事が証明される出来事が起こりました。ペリシテ人たちは「神の箱」を、まだ軛をつけた事が無く、出産後間もない雌牛の引く荷車で返す事にしたのです。荷車がエクロンというイスラエルの土地に向かえば、彼らとダゴンを脅かした災いがイスラエルの神によってもたらされたものである事が証明される。そうでなければ、すべての災難は偶然の出来事であったとの証明になる。ペリシテの地はイスラエル人諸部族の地と接していました。その中で、エクロンへ行く道以外を目指したり、子牛のもとへ帰るために雌牛が引き返して来たり、荷車を引くのに不慣れなために積み荷がひっくり返ったりした場合、ペリシテ人を襲った出来事は偶然であったとみなされるのです。彼らは、すべての災いが偶然である事を証明したかったのでしょう。けれども、人間の思いに反して雌牛は時折鳴き声を上げながら、エクロンへと向かう道のりを左右にそれる事なく真っすぐに進みました。まるで見えない主の御手に導かれているかのように。ペリシテとの国境近くにあるベト・シェメシュの人々は神の箱の帰還を大いに喜びました。しかし、舞い上がった人々は箱の中をのぞくという禁忌をおかしました。箱をのぞく事、定められた祭司以外が箱に触れる事は律法で禁止されていたのです。ペリシテ人が箱の略奪によって神聖を侵した様に、ベト・シェメシュの人々も神を軽んじて打たれました。
「神の箱」に納められた律法は、神(聖なるもの)と人との隔たりを示すものです。律法に記された戒めを人間は完全には守れません。しかし、だからこそ、律法を全うできない中で罪の自覚を促されるのです。神の民は自分の罪を認めて、律法によって正しい神との関係を求めるのです。マタイによる福音書7章21節以下で、主イエスは誤った繋がり、弟子たちの誤解を退けるために厳しい言葉を発せられました。それは、突き放すためではなく、弟子たちを正しい関係に導くためです。口では「主よ、主よ」と言いながら、御心を尋ね求めず、自分の都合のために主の名を用いようとする弟子たちの心を見抜かれたのです。どんなに良い事をしても、御心を尋ね求めていなければそれは「不法を働く者」の行いです。御心を無視して自分中心に物事を進めようとしているのです。御心を尋ね求める事はつまり、律法に従うという事です。律法の順守は原理主義とは異なります。
私たちには具体的な神の御心として、神の独り子が与えられました。「我は道なり、真理なり、命なり」とおっしゃったこの方こそ、私たちの歩むべき道です。この道は赦しの道です。すべての人のなだめの供え物となってくださった御子によって、私たちの罪も十字架につけられました。この方の示されるところに私たちの立ち帰るべき場所があります。罪によって隔てられた父なる神と人間との間の隔たりを主が取り去ってくださいました。主イエスを通して正しく神の御前に進み出ましょう。与えられた救いの恵みに喜んで与りましょう。
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