今週の説教

約束の聖霊

説教要旨（1月9日 朝礼拝より）
使徒言行録 1:1-5
牧師 杉山悠世

　使徒言行録は、ルカによる福音書の冒頭と同様に「テオフィロ」の名が記されていることから、同じ著者であると考えられています。ルカによる福音書がここで言われている「第一巻」に、使徒言行録が続く第二巻ということになります。
　
　「使徒言行録」という名前からもわかるように、使徒たちの働き、初代教会誕生の歴史へと移っていきます。しかし使徒たちが主体的にこれらのことをなしたというよりは、使徒たちはほとんど何も分かっていなかったと言った方がよいと思います。「使徒」とは「遣わされた者」という意味です。イエス・キリスト自ら、12人を選び「使徒」と名付けられました。彼らは他の誰でもなくキリストに遣わされた者たちです。その派遣の目的は、ルカ福音書の２４章４５～４８節で語られています。「そしてイエスは、聖書を悟らせるために彼らの心の目を開いて、言われた。『次のように書いてある。『メシアは苦しみを受け、三日目に死者の中から復活する。また、罪の赦しを得させる悔い改めが、その名によってあらゆる国の人々に宣べ伝えられる』と。エルサレムから始めて、あなたがたはこれらのことの証人となる』」。伝道は初めから、キリストによって使命を与えられ、遣わされたのです。もはや、救いの恵みはイスラエルに限定されてはいません。「地の果てに至るまで、わたしの証人となる。」と8節で語られているとおりです。教会誕生の歴史の中心的担い手は弟子たちですが、教会の歴史は彼らによってはじめられたわけではなく、「復活の主」によって始められたのです。第二巻をしたためるにあたって、ルカが語りたかったことは人間の働きではなく、主の導きによって、初期キリスト教会の宣教が開始されたということ、つまり、宣教の中心的務めを担われたのはイエス・キリストであるということです。
　
　4節、「―父の約束されたものを待ちなさい。ヨハネは水で洗礼を授けたが、あなたがたは間もなく聖霊による洗礼を授けられるからである。」わたしたちは聖霊のお語りになる言葉を、聖霊の語られるままでは聞き取ることができません。ラジオやテレビを受信するためのアンテナを持っていないのと同じ状態です。人の言葉を受け取るアンテナは持っていますが、聖霊の語る言葉を受信するアンテナを持っていないのです。ですから、人を用いてお語りになるのです。そのために証人として使徒を遣わされたのです。とはいえ、人が言い表すキリストのお姿は言葉足らずで、頼りないものです。キリストを言い表すのに最も適した方は、キリストご自身です。そこで、キリストはご自身の霊、聖霊をお与えになったのです。それが2章に記されている聖霊降臨の出来事です。復活の主は十字架の傷など多くの証拠によって、ご自身の復活と神の約束の確かさを弟子たちに示されました。
　
　「キリストはわたしの主である」と信じて告白し、洗礼を受けた人は皆、約束された聖霊を受けています。しかし、信じるということも聖霊の導きなしには出来ません。復活の主はわたしたちを贖われ、この方の霊、聖霊によって罪あるわたしたちを新しく造り変え、神の栄光を称える者としてくださいました。聖霊は、わたしたちが神の国を受け継ぐための保証として与えられました。死に行くばかりの罪の奴隷状態から、神のものとされたのです。
わたしたちは、主の聖霊をいただき、今や、神の民、神の家族とされています。キリストとの豊かな交わりの中に留まり続けましょう。そして、より多くの人々がこの交わりに招かれるために、わたしたちを用いていただくことができますように。