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赦しとしての神の力

説教要旨(3月6日 朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙一 2:1-5
牧師 藤盛勇紀

 「わたしもそちらに行ったとき、神の秘められた計画を宣べ伝えるのに優れた言葉や知恵をもちいませんでした」と想起します。「秘められた計画」は「神秘・奥義」とも訳されますが、人間の救いのための、しかし人間には思いもよらない神のご計画です。人に捨てられて十字架で処刑されたイエスが私たちの救い・命だった。そんなことは人間の知恵には全く無意味です。だからパウロは、人間の「優れた言葉や知恵」を用いないと決め、コリントでどのようなことを知り経験したとしても、もう「十字架につけられたキリスト以外、何も知るまいと心に決めていた」と言います。
 パウロはあえて「十字架につけられた」キリストと言います。イエス・キリストの全生涯は、十字架につけられて死ぬためだったからです。神の御子が人となって生まれたのは、人間の罪を全て負い、裁きを引き受けて死ぬためだった。だから、「十字架につけられたキリスト以外、何も知るまい」という決心になるのです。
 パウロ自身、「十字架につけられたキリスト」のみを頼りにしていました。彼がコリントに行った時、「衰弱していて、恐れに取りつかれ、ひどく不安でした」。コリントに来る前、ギリシアのアテネで哲学者たちと堂々と論じ合いました。ところがパウロがキリストの復活を語り始めたとたん、相手にされなくなりました。アテネでは伝道の実りを見ず、コリントに行ってからも困難に直面して弱り果てました。その弱さの中で、パウロは主の御声を聞いたわけです(⇒使徒18:9)。だからパウロは「わたしは弱いときにこそ強い」とも言えました(2コリント12:10)。これは「知恵にあふれた言葉によらず、“霊”と力によるもの」でした。
 こうしてパウロの宣教は「十字架の言葉」と「神の力、神の知恵であるキリスト」「十字架につけられたキリスト」に集中します。「それは、あなたがたが人の知恵によってではなく、神の力によって信じるようになるため」です。人間は知恵を求めます。しかし、人間の知恵や合理的な判断の積み重ねによって救いに至ることはありません。
 信仰も救いも人間の知恵にはよらないことを、パウロは切々と語り続けています。人間の知恵によらないのであれば、何によるのか。「神の力」です。パウロが人の知恵を用いないのは、「神の力によって信じるようになるため」。「力」はまさに力として私たちに働く、神の「“霊”」です。神の霊以外に、キリストを信じる信仰を生むことはできません。
 十字架のキリストは私の罪を負って死なれた方。私が神に対して負う全ての重荷、負債、借金はすでに全て支払い済みとされ。しかも今、私には神の命の霊が注がれいて、私はすでに今、神の命に生きている。事実私が今このようにあるのは、まさに「“霊”と力による」。だから、「十字架につけられたキリスト以外、何も知るまい」と。
 パウロが語る宣教の言葉が「“霊”と力の証明による」というのは、宣教の業を通して神ご自身が私たちの内に語り、証しなさるからです。そこで私たちの内に信仰が起こされ、私たちは信じ、確信します。それは、私たちが神によって「確信させられる」からです。パウロは「わたしは確信しています」と言いましたが、それは自分で学んで得るような能動的・主体的な確信ではなく、「私は説得させられている」という受け身の言葉です。信仰は、自分で問い、自分で納得し、自分で確信する自分次第の業ではありません。「信仰は聞くことよる」。外からの語りかけ、働きかけと、それを用いる神ご自身の語りかけによって、私が「説得させられ」て、「主よ、その通りです」と応答させられている。この生きた現実が信仰です。神の恵みの言葉は、力として私たちに働いて、私たちが応答する信仰を起こし、命に与らせている、恵みの力なのです。

説教一覧(2021年度)

2021.4.4
私に触れてみよ
2021.4.11
罪の贖いの犠牲
2021.4.18
信じたゆえに語る
2021.4.25
日々新たにされて
2021.5.2
天の住まい
2021.5.9
恵みによって贖われ
2021.5.16
駆り立てる愛
2021.5.23
主の証人となる
2021.5.30
新しい人の創造
2021.6.6
今こそ、恵みの時
2021.6.13
聖なる国民
2021.6.20
見よ、生きている
2021.6.27
神の息子、娘たち
2021.7.4
共に死に、共に生きる
2021.7.11
光の中を歩む時
2021.7.18
救いに至る悲しみ
2021.7.25
帰ってみれば分かる
2021.8.1
豊かな者はさらに豊かに
2021.8.8
最も小さい者
2021.8.15
溢れ出て、なお潤う
2021.8.22
主の栄光の現れ
2021.8.29
あの時の熱意を今
2021.9.5
豊かに蒔き、刈り取る
2021.9.12
頼るべき一人の方
2021.9.19
要塞をも破壊する力
2021.9.26
弱そうだが強い
2021.10.3
誇る者は主を誇れ
2021.10.10
神の守りのしるし
2021.10.17
神の熱い思い
2021.10.24
低き所より光を放つ
2021.10.31
決して廃れない誇り
2021.11.7
弱いときにこそ強い
2021.11.14
主があなたに油を注ぎ
2021.11.21
信仰の遺産
2021.11.28
キリストにある弁明
2021.12.5
キリストの弱さと力
2021.12.12
見よ、この時を
2021.12.19
あなたの光、あなたの王
2021.12.26
あなたの中のキリスト
2022.1.2
愛と平和の神と共に
2022.1.9
約束の聖霊
2022.1.16
イエスの名を呼ぶ人々
2022.1.23
無欠の豊かさ
2022.1.30
何による一致か
2022.2.6
十字架の言葉は神の力
2022.2.13
裁きと栄光
2022.2.20
神の力、神の知恵
2022.2.27
誇る者は、主を誇れ
2022.3.6
赦しとしての神の力
2022.3.13
神の知恵は十字架の愛
2022.3.20
地の果てに至るまで
2022.3.27
霊によって一切を知る