ホーム | 説教 | 説教(2021年度) | 神の知恵は十字架の愛

神の知恵は十字架の愛

説教要旨(3月13日 朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙一 2:6-9
牧師 藤盛勇紀

 「しかし、わたしたちは、信仰に成熟した人たちの間では知恵を語ります」とパウロは言います。イエス様は「子供のようにならなければ…」と言われましたが、知恵が必要ないとか幼稚でよいということではありません。神との関係において、福音の真理に対して、素直・謙遜だということでしょう。ただ、万物の主なる神とその知恵に触れて初めて人は謙遜であり得ます。「人間の知恵」はむしろ真の謙遜を阻害し謙遜さを失わせます。人間の知恵には決定的に、真の知恵が欠けているからです。
 「それはこの世の知恵ではなく、また、この世の滅びゆく支配者たちの知恵でもありません」。神の知恵は、世の支配者の知恵や世を支配する諸力や諸霊の知恵とは違います。世の知恵は結局自分が納得したいためのもの。自分で問い自分で答え、自分で納得する空しい独り言です。自分を存在させた方、神を知るに至ることなく、救いにはなりません、むしろ滅び行くものです。
 それに対して神の知恵は「隠されていた、神秘としての神の知恵」。「神秘」とは奥義、「秘められた計画」であり、「隠されていた」ので、ある時までは人間には知り得ませんでした。この「神秘としての神の知恵」を知ることは、人間の可能性にはありません。では、知り得なかったことは不幸なことだったのでしょうか。人間の知恵は有限で、全てを知ることはできません。確かに、知らないことは人を不安にさせます。けれども、《神が》全てを知っていてくださると知ることは平安をもたらします。パウロは、「神を愛する人」は「神に知られている」(8:3)と言います。ガラテヤ書では「今は神を知っている、いや、むしろ神から知られている」(4:9)と。神に愛されている人は、神を愛します。この、愛し愛されていること、そのように一つとされていることが、聖書が言う「知る」ということなのです。神によって造られた私たちは、神がお許しになったことしか知ることはできません。だから実は、限られたことしが知り得ないのは残念なことではなく、神と共に生きる者には必要なことなのです。
 アダムとエバは、「神のように」なれると蛇に唆され、善悪の知識の木の実を食べてしまいました。しかし神は、彼らが罪を犯す可能性があることももちろん知っておられました。そして、惨めに罪に堕ちて神を裏切る者のための救いも「準備」しておられたのです(⇒創世記3章)。この「準備」は「神の知恵」ですが、人には隠されていました。自ら生ける神との関係を捨てた人間の救いのための神の備えです。人間も子供が生まれたら、子供の将来のために様々な準備をします。神は愛する者のために、初めから、完全な備えをしておられます。それが「隠されていた」ということであり、人間が知ることができないのは当然です。これは「神の」知恵。「この世の支配者たちは、だれ一人、この知恵を理解」しません。
 親の心子知らずは世の常ですが、神の深い御心・深い愛を人は知らないのです。自分を造り、存在させ、生かし、愛してくださってる方を知らない。だからなぜ自分が存在しているのかも分からず、自分が何なのかも分からない。これが、神との関係を断った人間の本当の悲惨なのです。
 神の御子の死すなわち神に対する人間の最大の反逆において、実は人間が救われる。この「神の知恵」「十字架の言葉」は、人間の理解ろは全く関わりなく、ただ神が一方的にお与えになった恵みとしての救いです。「もし理解していたら、栄光の主を十字架につけはしなかったでしょう」。
 もし知っていたなら、栄光の主、神の御子を十字架につけることなどしなかった。しかし人間は知らない! だから十字架につけてしまった。こうして、「神の知恵」は「十字架の言葉」となります。「神の知恵」は、十字架のキリストだったのです。

説教一覧(2021年度)

2021.4.4
私に触れてみよ
2021.4.11
罪の贖いの犠牲
2021.4.18
信じたゆえに語る
2021.4.25
日々新たにされて
2021.5.2
天の住まい
2021.5.9
恵みによって贖われ
2021.5.16
駆り立てる愛
2021.5.23
主の証人となる
2021.5.30
新しい人の創造
2021.6.6
今こそ、恵みの時
2021.6.13
聖なる国民
2021.6.20
見よ、生きている
2021.6.27
神の息子、娘たち
2021.7.4
共に死に、共に生きる
2021.7.11
光の中を歩む時
2021.7.18
救いに至る悲しみ
2021.7.25
帰ってみれば分かる
2021.8.1
豊かな者はさらに豊かに
2021.8.8
最も小さい者
2021.8.15
溢れ出て、なお潤う
2021.8.22
主の栄光の現れ
2021.8.29
あの時の熱意を今
2021.9.5
豊かに蒔き、刈り取る
2021.9.12
頼るべき一人の方
2021.9.19
要塞をも破壊する力
2021.9.26
弱そうだが強い
2021.10.3
誇る者は主を誇れ
2021.10.10
神の守りのしるし
2021.10.17
神の熱い思い
2021.10.24
低き所より光を放つ
2021.10.31
決して廃れない誇り
2021.11.7
弱いときにこそ強い
2021.11.14
主があなたに油を注ぎ
2021.11.21
信仰の遺産
2021.11.28
キリストにある弁明
2021.12.5
キリストの弱さと力
2021.12.12
見よ、この時を
2021.12.19
あなたの光、あなたの王
2021.12.26
あなたの中のキリスト
2022.1.2
愛と平和の神と共に
2022.1.9
約束の聖霊
2022.1.16
イエスの名を呼ぶ人々
2022.1.23
無欠の豊かさ
2022.1.30
何による一致か
2022.2.6
十字架の言葉は神の力
2022.2.13
裁きと栄光
2022.2.20
神の力、神の知恵
2022.2.27
誇る者は、主を誇れ
2022.3.6
赦しとしての神の力
2022.3.13
神の知恵は十字架の愛
2022.3.20
地の果てに至るまで
2022.3.27
霊によって一切を知る