信仰によって強められ
説教要旨( 5月18日 朝礼拝 )
創世記 第18章 9 ~ 15節
ローマの信徒への手紙 第 4章17 ~ 25節
倉橋康夫
本日のロマ書 第4章19節に、<・・・既に自分の体が衰えており、そして妻サラの体も子を宿せない・・・>と、アブラハムもサラも肉体が衰え、子どもができない状態であったと述べられています。「自分の体が死んでいる」(直訳)状態だった、と言うのです。併せて読んだ創世記では、改めてアブラハムに約束が告げられた時、天幕の陰で聞いていた妻サラは<ひそかに笑った。自分は年をとり、もはや楽しみがあるはずもなし、主人も年老いているのに、と思ったのである。>、と記されています。ところが、神の約束の言葉は、その不可能を可能にする、というものでした。そして、サラの笑い・確かな根拠のあるその笑いを神は追及し、笑うことをお許しになりません。人間の目から見るならば、確かな根拠を持つ不可能なことを、神の約束であるが故に受け入れよ、と要求されるのです。アブラハムは、疑いや迷いをくぐり抜けながらも、結局は神の約束を信じ抜いた、とパウロは言います。<死者に命を与え、存在していないものを呼び出して存在させる神を、アブラハムは信じ>ていたからだ、と言うのです。<彼は希望すべくもなかったときに、なおも望みを抱いて、信じ>(18節)、とあります。サラが笑ったあの時、主なる神から、<来年の今ごろ>と、約束の最終確認がされた時のことを指しているでしょう。
これは、神の約束に生きるキリスト者全てのあり方でもあります。パウロがここで語っていることは、神の祝福の約束が、この世の不可能を突き破って如何にして可能とされたか、ということです。<神は約束したことを実現させる力も、お持ちの方だと、確信していたのです。>(21節)、とあります。神の約束に信頼を寄せて生きる。それが正に信仰であり、神はそれを義と認められた、と言うのです。そしてそのことは、アブラハムのことだけではなく、私たちのことなのだ、とパウロは言います。
義と認められる、とは、神との義しい関係の中に生きることが許される、ということです。しかしそれは、私たち人間にとって本来不可能なこと、希望すべくもないことでした。けれども、アブラハムが神の約束を信じたように、私たちも<主イエスを死者の中から復活させた方を信じれば>、義と認められる、と言うのです。この出来事は、神がアブラハムに約束された祝福の約束(創世記15 : 2)と無関係ではありません。無関係どころか、神の祝福の約束の成就が、主イエスの死者の中からの復活なのです。従って、私たちは、アブラハムに与えられた祝福の約束の成就の時を生きている、と言うことができます。
この祝福の約束の成就について、パウロは、<イエスは、私たちの罪のために死に渡され、私たちが義とされるために復活させられたのです。>(25節)、と言います。ここに、不可能が可能となった、希望し得ないことが事実となったのです。私たちは、既に罪赦され、義と認められており、神の祝福のもとに、神との交わりの中に生かされています。そして同時に、未だ完成に至っていない、救いの完成の時を目指して進んでおります。主イエスの復活の命に既に結ばれながら、来るべき自らの復活を望み見ているのです。
<彼は不信仰に陥って神の約束を疑うようなことはなく、むしろ信仰によって強められ、神を賛美しました。>(20節)、と言います。「神に栄光を与え(帰し)つつ、信仰によって強められた」(直訳)、神に栄光を帰する歩みの中で、ただ神を讃美する歩みの中で、信仰が強められていく、信仰による確かな歩みになる、ということでしょう。私たちの信仰心が、私たちを強くする、というのではありません。神に栄光を帰する歩みの中で、神が与え整えて下さる信仰によって、私たちの歩みが堅固なものとなる、ということです。神の憐れみにより、聖霊の支え導きを受けて、「信仰によって強められ」、共々に同じ望みに生きて、進んでいきたいと祈り願います。
説教一覧(2008年度)
2008.04.06
不信心な者を義とする方
2008.04.13
わたしの食べ物
2008.04.20
福音の射程
2008.04.27
信仰の父アブラハム
2008.05.04
神の約束に生きる
2008.05.11
ここに水があります
2008.05.18
信仰によって強められ
2008.05.25
今の恵み
2008.06.01
聖霊によって、神の愛が
2008.06.08
あなたがたは、決して信じない
2008.06.15
まことの神であり、まことの人
2008.06.22
神の怒りからの救い
2008.06.29
向きを変えて、行きなさい
2008.07.06
神を喜びを誇る
2008.07.13
良くなりたいか
2008.07.20
罪が死をもたらす
2008.07.27
恵みの豊かさ
2008.08.03
恵みが支配する
2008.08.10
新しい命に生きる
2008.08.17
驚いてはならない
2008.08.24
神に属すること
2008.08.31
主と一体になって
2008.09.07
神に生きる
2008.09.14
あなたたちが救われるために
2008.09.21
自分自身を神に献げよ
2008.09.28
自由と服従
2008.10.05
賜物としての永遠の命
2008.10.12
あなたの中にある光
2008.10.19
新しい生き方
2008.10.26
この人たちに食べさせる
2008.11.2
わたしたちの本国
2008.11.9
恐れることはない
2008.11.16
父なる神さま
2008.11.23
永遠の命に至る食べ物
2008.11.30
神に背負われて行く道
2008.12.7
罪が掟を利用し
2008.12.14
天から降ってきたパン
2008.12.21
主キリストのご降誕
2008.12.28
聖なる律法
2009.01.04
罪の正体
2009.01.11
命を与える霊
2009.01.18
撃ち破られてはならない
2009.01.25
惨めさからの救い
2009.02.01
主キリストに結ばれて
2009.02.08
備えられている時
2009.02.15
人となられた神の御子
2009.02.22
霊の思いは命と平和
2009.03.01
アッバ、父よ
2009.03.08
真実な人
2009.03.15
苦しみと栄光
2009.03.22
さあ、立ち上がりなさい
2009.03.29
虚無と希望