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人となられた神の御子

説教要旨( 2月 15日 朝礼拝)
イザヤ書 第61章 1~3節
ローマの信徒への手紙 第8章1~11節
倉橋 康夫

 第8章の冒頭で、パウロは、<今や、キリスト・イエスに結ばれている者は、罪に定められることはありません。>、と言います。そして、2節で「何故ならば、キリスト・イエスにおいて、命をもたらす霊の法則が、罪と死との法則からあなたを解放(自由に)したからである。」、というのです。死をもたらす罪の力から自由にされた、それは、<命をもたらす霊の法則>という形においてです。「霊」は「肉」に対立するものです。「肉」とは、ある解説で、「人間の弱さのこと、罪に誘われやすく、無力で、何の力の支えもない状態」、「情と欲とに支配され易く、自分の利益しか考えないで、地上の生活にのみ安住しよう、という人間の姿」とあります。<肉では罪の法則に仕えている>(7 : 25b)としか言い得ないにも拘らず、<キリスト・イエスによって、・・・ 罪と死の法則からあなたを解放した>のだ、と言います。
 そこで、パウロは更に言葉を重ねて、福音の根幹へと入っていきます。それが、3節です。<肉の弱さのために律法がなしえなかったことを、神はしてくださったのです。つまり、罪を取り除くために御子を罪深い肉と同じ姿でこの世に送り、その肉において罪を罪として処断されたのです。>、と。ここには、御子による神の救いのみ業が、簡潔ながら、的確に言い表されています。肉の弱さの故に、律法が本来もたらす筈であった、神の祝福へと招き入れることはできなかったが、神は人間の肉の弱さを跳び越してそれを成し遂げて下さった。人間の罪を糾弾し、断罪するのではなく、ということです。そこで、神が選択された人間を救う方法は、<罪を取り除くために御子を罪深い肉と同じ姿でこの世に送り、その肉において罪を罪として処断された>、ということでした。<罪深い肉と同じ姿>になられたのです(ヘブライ2 : 17参照)。それが、人間を救う方法、人間を救う道だったからです。
 併せて読んだ、イザヤ書 第61章1節には、主なる神のもとから、自由と解放を告知するものが遣わされる、との預言が記されています。この自由と解放を、広い意味で考えることも可能です。しかしパウロは、人間の根本問題は、罪の問題であることを指摘するのです。イザヤ書の場合も、油注がれた主の僕と主キリストを重ねて考えるならば、究極の自由と解放であるところの、罪と死からの自由と解放を指し示している、と捉えることができます。罪の故に、神の祝福が受けられなくなっている。その点が解決されることこそが、人間の救いである、と言うのです。神の御子が真の人、罪深い肉と同じ姿になられたのは、<その肉において罪を罪として処断>するためでした。人間の罪のために罰せられるために、「人となられた神の御子」。ここに、人間の罪の深刻さが示されている、と同時に、神の恵みの深さが現されています。この主キリストの十字架の故に、<今や、キリスト・イエスに結ばれている者は、罪に定められること>はない、と喜ばしく宣言することができます。
 この神の救いのみ業は、私たち人間の肉の弱さを跳び越して行われた。言わば、私たち人間の責任には目をつぶって、恵みのみ業として、救いの道を開いて下さったのです。この救いに与る者は、新しい歩みを始めます。4節に、<霊に従って歩むわたしたちの内に、律法の要求が満たされるためでした。>、とある通りです。主キリストによる救いに入れられ、主キリストに結びついて歩む時、律法の要求が満たされる歩みとされる、と言います。神のみ旨に適う歩み、それは、キリスト者に約束された生き方です。なお、肉の弱さに苦しむことが多いことでしょう。けれども、「人となられた神の御子」、その出来事に深く心を留め、そこに自分の救いのあることを自覚して生きる時、聖霊が支え導いて下さるのです。主キリストの十字架の出来事を改めて心に刻みつつ、この週も共々に、信仰の歩みを進めて参りましょう。
 

説教一覧(2008年度)

2008.04.06
不信心な者を義とする方
2008.04.13
わたしの食べ物
2008.04.20
福音の射程
2008.04.27
信仰の父アブラハム
2008.05.04
神の約束に生きる
2008.05.11
ここに水があります
2008.05.18
信仰によって強められ
2008.05.25
今の恵み
2008.06.01
聖霊によって、神の愛が
2008.06.08
あなたがたは、決して信じない
2008.06.15
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2008.06.22
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2008.06.29
向きを変えて、行きなさい
2008.07.06
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2008.07.13
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2008.07.20
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2008.07.27
恵みの豊かさ
2008.08.03
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2008.08.10
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2008.08.17
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2008.08.24
神に属すること
2008.08.31
主と一体になって
2008.09.07
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2008.09.14
あなたたちが救われるために
2008.09.21
自分自身を神に献げよ
2008.09.28
自由と服従
2008.10.05
賜物としての永遠の命
2008.10.12
あなたの中にある光
2008.10.19
新しい生き方
2008.10.26
この人たちに食べさせる
2008.11.2
わたしたちの本国
2008.11.9
恐れることはない
2008.11.16
父なる神さま
2008.11.23
永遠の命に至る食べ物
2008.11.30
神に背負われて行く道
2008.12.7
罪が掟を利用し
2008.12.14
天から降ってきたパン
2008.12.21
主キリストのご降誕
2008.12.28
聖なる律法
2009.01.04
罪の正体
2009.01.11
命を与える霊
2009.01.18
撃ち破られてはならない
2009.01.25
惨めさからの救い
2009.02.01
主キリストに結ばれて
2009.02.08
備えられている時
2009.02.15
人となられた神の御子
2009.02.22
霊の思いは命と平和
2009.03.01
アッバ、父よ
2009.03.08
真実な人
2009.03.15
苦しみと栄光
2009.03.22
さあ、立ち上がりなさい
2009.03.29
虚無と希望