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恵みが支配する

説教要旨( 8月 3日 朝礼拝 )
イザヤ書 第53章11 ~ 12節
ローマの信徒への手紙 第 5章15 ~ 21節
倉橋康夫

 ロマ書 第5章18節でパウロは、「一人の罪によってすべての人が有罪となった」、と語ります。<一人の罪>とは、アダムの罪、神のご命令に背き、自らが神のようになろうとしたこと。この罪は全ての人間に共通のもの、誰も、自分はそうではない、と否定することのできないものです。私たちは、自らの中にある、アダムの罪に気づかなければなりません。
 ところが、そのような人間に対して、神が救いの手を差し伸べて下さった。それが、主キリストの出来事でした。<一人の正しい行為によって、すべての人が義とされて命を得ることになった>(18節b)、と言います。そして、19節では、<一人の従順>と言い換えられます。アダムの罪が神に対する不従順であるのに対して、主キリストのあり方は父なる神への従順でした。子なる神としてのご意思であると同時に、徹頭徹尾父なる神のみ旨に沿うご生涯であったのです。<命を得ることになった>と言います。この命とは、単に生き永らえる、ということではありません。死が神に見棄てられることであるのに対し、この命は神に受け入れられ、神との交わりに入れられることです。この命は世にあっても、この世を去っても保たれ続ける命です。21節に、<永遠の命へ>と言われる通りです。(ヨハネによる福音書 第3章16節参照)。
 <永遠の命>とは、単なる生物としての命なのではなく、神の祝福を受け、神との交わりの中に生かされることです。これは、神が恵みとして与えて下さるもの、私たち人間が当然もらうべき報酬ではなく、戴く資格がないにも拘わらず、神が一方的に恵みとしてこの命を与えて下さる、と言うのです。
 この神の恵みの威力について、パウロは更に言葉を重ねて語ります。<律法が入り込んで来たのは、罪が増し加わるためでありました。>(20節a)、と。律法は、神が与えられたもの、神の祝福のしるし、と言えます。そこに、神のみ旨が示されているからです。神のみ旨を知り、そのみ心に沿って生きることは、人間にとって幸いなこと、喜ばしいことです。けれども、実際は、神のみ旨に沿って、律法が用いられるのではなく、律法によって反って罪が増し加わる、と言います。律法によって罪が増し加わるとは、第3章20節で、<律法によっては、罪の自覚しか生じない>、と指摘されていた通りです。そのことから考えるならば、<罪が増し加わる>とは、自らの罪の自覚を益々深くする、罪の自覚が深まれば深まるほど、といった意味です。罪の苦しみが深ければ深いほど、神の恵みの威力は輝きを増し、深い罪の苦しみも、癒してくれる、ということです。
 そして更に、<しかし、罪が増したところには、恵みはなおいっそう満ちあふれました>(20節b)、と言います。これは過去形で、決定的に起こった出来事を指し示すものです。この罪の増したところとは、主キリストの十字架を指している、と考えられます。それは、人間の自己中心性の極まった所、自らを正しいと主張し、神の如くに振る舞う人間が惹き起こした出来事です。併せて読んだ、主イエス・キリストの十字架を指し示すイザヤの預言は、主キリストが、<自らをなげうち、死んで罪人のひとりに数えられ>、<多くの人の過ちを担い、背いた者のために執り成しをした>、と言い、それは<多くの人が正しい者とされるために彼らの罪を自ら負った>のだ、と言います。
 このように、主の十字架において、神の恵みは尚一層満ち溢れました。主の十字架の前で、悔い改めの思いを深くすべきでしょう。そして、この主の十字架は、今や私たち信仰者の歩みを神の恵みが支配するようになった、と告げているのです。罪が支配し、死を齎すのに対して、恵みが支配し、永遠の命に至らせる、と言います。私たちは、主イエス・キリストによって恵みの支配下に移されました。この幸いを感謝しつつ、信仰の歩みを共に進めていきたい、と願います。
 

説教一覧(2008年度)

2008.04.06
不信心な者を義とする方
2008.04.13
わたしの食べ物
2008.04.20
福音の射程
2008.04.27
信仰の父アブラハム
2008.05.04
神の約束に生きる
2008.05.11
ここに水があります
2008.05.18
信仰によって強められ
2008.05.25
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2008.06.01
聖霊によって、神の愛が
2008.06.08
あなたがたは、決して信じない
2008.06.15
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2008.06.22
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向きを変えて、行きなさい
2008.07.06
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2008.07.13
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2008.07.27
恵みの豊かさ
2008.08.03
恵みが支配する
2008.08.10
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2008.08.17
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2008.08.24
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2008.08.31
主と一体になって
2008.09.07
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2008.09.14
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2008.09.21
自分自身を神に献げよ
2008.09.28
自由と服従
2008.10.05
賜物としての永遠の命
2008.10.12
あなたの中にある光
2008.10.19
新しい生き方
2008.10.26
この人たちに食べさせる
2008.11.2
わたしたちの本国
2008.11.9
恐れることはない
2008.11.16
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2008.11.23
永遠の命に至る食べ物
2008.11.30
神に背負われて行く道
2008.12.7
罪が掟を利用し
2008.12.14
天から降ってきたパン
2008.12.21
主キリストのご降誕
2008.12.28
聖なる律法
2009.01.04
罪の正体
2009.01.11
命を与える霊
2009.01.18
撃ち破られてはならない
2009.01.25
惨めさからの救い
2009.02.01
主キリストに結ばれて
2009.02.08
備えられている時
2009.02.15
人となられた神の御子
2009.02.22
霊の思いは命と平和
2009.03.01
アッバ、父よ
2009.03.08
真実な人
2009.03.15
苦しみと栄光
2009.03.22
さあ、立ち上がりなさい
2009.03.29
虚無と希望