今こそ、安らかに
説教要旨(7月20日朝礼拝より)
ルカによる福音書 2:22-38
牧師 藤盛勇紀
シメオンは、「救い主メシアに会うまでは決して死なない」とお告げを受けていました。そして人生の最後に、ついに救い主イエス様を懐に抱いて言うのです。「主よ、今こそあなたは、お言葉どおり、この僕を安らかに去らせてくださいます」。
シメオンについてこう記されています。「正しい人で信仰があつく、イスラエルの慰められるのを待ち望」んでいた。アンナという女預言者もそうですが、彼らは主の神殿を離れることなく、神に仕えながら、ずっと救い主の到来を待ち続けていました。「正しい人」とは、律法や掟に従っている人のことです。その「正しさ」からしますと、ベツレヘムの馬小屋で主イエスと出会った羊飼いたちや東方の学者たちは「正しい人」とは言えません。神の恵みとか救いと聞いても、自分たちには関係ないと思うしかなかった人たちです。
それに対してシメオンやアンナは、神殿で礼拝する生活を守り続けていた「正しい人」です。彼らは正面から主を待ち続けていたのです。しかし、そんな「正しい人」の「正しい人生」ではあったけれども、人生の終わりにようやく、「主よ、今こそ」と言えたのです。
「ああ主よ、ようやく今」なのです。「主よ今こそ」と、自分の人生を安らかに受け入れ、悔い無き人生だと言える。喜びと平安の内に、締めくくることができる。それで、この聖書の箇所は、その年の最後に読まれることもあり、一日の終わりの夜の祈りの言葉ともされてきたのです。
キリスト者にも、その日その日の労苦ややっかい事があります。「どうしてこんなことに悩まされるのか」と思う。人生にもそれがあります。「なぜ、こんなことに」「どうしてこんな目に」。
しかしそれでも、シメオンのように人生を締めくくりたい。一日一日を、そのように終わりたい。どんな日であったとしても、どんな人生だっとしても、「主よ、今こそ」と、確かに救いに与っている慰めと感謝の内に締めくくりたいのです。
どうして、「主よ、今こそ」と祈れるのでしょうか。シメオンは、幼な子イエスを腕に抱きながら、何を見たのでしょうか。
彼は言います、「これは万民のために整えてくださった救い」。しかも「異邦人を照らす啓示の光」だと。
神殿から離れることなく、「正しく」「信仰あつく」生きたシメオンです。ところがこの救いは、ユダヤ人からすると「正しくない」羊飼いたちや異邦人さえ含めた「万民のため」の救いだというのです。
なぜシメオンは、そこまで言えたのでしょうか。それは、彼がマリアに言った言葉から分かると思います。シメオンは言います。この子は「反対を受けるしるしとして定められています」と。「反対を受ける」というのは、悪人扱いされ、罵られ、罪人とされることです。そのような呪われた罪人に与えられる報いは、十字架の死です。
シメオンには見えているのです。この幼な子は、私たちのために、罪人とされて、死に行くお方だと。すでに十字架の死を見ているのです。私たちの神は、私たちが救われるため、神と共に生きるようになるために、そこまでしてしまわれる、と。
人生の最後に、主をお迎えするということがあります。どんな道のりであっても、最後に主のものとされたことを知って、「よかった」と言える。本当に慰められながら、人生を閉じられる、ということがあるのです。
この世界も私たちの人生も主のものです。だから、「主よ、今こそ」とは、人生の終わりの時だけの言葉でなくて、今の、私たちの日々の言葉にもなるのです。私たちは、すでに主をお迎えしているので、いつでも「今こそ、安らかに」なのです。
説教一覧(2014年度)
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2014.7.6
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2014.8.17
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2015.1.4
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