見よ、救いのしるしを
説教要旨(12月21日クリスマス礼拝より)
ルカによる福音書 2:1-20
牧師 藤盛勇紀
ベツレヘムの町の片隅、暗い馬小屋の「飼い葉桶に寝ている乳飲み子」、これが救い主キリスト誕生のしるしだと、天使は告げます。自分の命については、周りの人間の手に委ねられてしまっています。イエス様が弟子たちにご自分の死について予告をなさった際、「私は人々の手に渡される」と言われましたが、飼い葉桶に寝かされたお姿も、人の手に渡された姿です。全く無力な姿です。しかし、主自らが、「あえて」そのようになられたのです。
フィリピの信徒への手紙2章の、「キリスト賛歌」が言うように、人間の救いのために、人間がへりくだったのでなく、神がへりくだられた。人間が従順になって主に従ったというのでなく、神であられる主が、死に至るまで、従順な僕、奴隷となられた。
「飼い葉桶の中の乳飲み子」は、そのような思いがけない神のお姿です。私たち人間が生きるために、神が命を死に晒され、世に来られた。その「しるし」です。
そのしるしが、最初に示されたのは羊飼いたちでした。「羊飼い」とは、レッテルを貼られたある種の人々のことでもありました。安息日の戒めも守れない罪人、町の人とも生活が違う。神から離れ、町から離れ、人々の心からも引き離されていました。彼らも、罪人と言われたら、「どうせ俺たちは日陰者」と、暗くうなだれてしまう。
それは思い違いなのですが、「自分は神から離れてしまった者」と自分で思い込むのは、羊飼いたちに限りません。自分には神も救いも関係ないと思う人、信頼関係・人間関係が破れてしまった人、生きる目的も方向も見えず、野宿するかのような人生。案外私たちは、誰でも羊飼いたちのようなのかも知れません。
すると、そこから引き上げられるとすれば、自分の言葉や自分の思いによっては不可能です。上からの言葉、神のみ言葉が必要なのです。そこに天使が来ます。天使は、「何としてでも、あなたに告げる」、そういう神のご意志の現れではないでしょうか。
天使はまず、「恐れるな」と言います。羊飼いたちは、あるいは私たち人間は何を恐れているのでしょうか。結局は、神との関係の無さでしょう。神との関係が切れていれば、無と滅びの恐れがつきまとうのです。生きる意味の無さ、自分自身の無価値、無目的、無意味、その果ての死。
本当に恐れなくてよいというなら、「この私は、決して無意味でも無価値でもなく、ただ無に滅びるだけではない」ということが確かでなければならないでしょう。
そして、それは自分の外から告げられなければなりません。天使は「あなたがたのために」救い主がお生まれになった、と言います。私たちのために、主は来られた。私たちのために、主はご自分の命を注ぎ出され、ご自身を死に渡されます。罪も汚れもないお方が、人の罪の中に投げ込まれ、委ねられ、人に捨てられ、罪を背負って十字架につけられます。そのために、主はお生まれになったのです。
ここに、私たちを求めて止まない神の愛の真実があります。私たちを決して見捨て給わない神の御心のしるしがあります。羊飼いたちは、そのしるしを自ら確かめるために、立ち上がりました。そして、あえて町へ出て行きました。天使から伝えられたことを、自分で確かめたのです。彼らは、「神をあがめ、賛美しながら帰って行った」。
自分のための救いのしるしを確認した者は、人生が変わります。意味が変わり、自分の価値が変わります。それは、「恐れなき人生」でしょう。
救い主の到来を知ったなら、もう神の審判を恐れなくてよい、人を恐れなくてよい、人の言葉も人の裁きも恐れなくてよい。この世の様々な支配を恐れなくてよい。それらはもはや私の主ではないからです。
説教一覧(2014年度)
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2014.7.6
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2014.7.27
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2014.8.3
主の道を整えよ
2014.8.10
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2014.8.17
主よ、しかし
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神に至る道
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2014.10.5
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見よ、救いのしるしを
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2015.1.4
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2015.2.1
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2015.2.8
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2015.2.15
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歌え、神の国の歌を
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神の国の秘密