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主イエスの言葉を思い出して

説教要旨(3月8日朝礼拝より)
マルコによる福音書 14:66-72
伝道師 上田真由美

 ペトロはこっそりと遠くから、大祭司のところへ連れて行かれる主のあとについて行きます。「わたしについてきなさい。人間をとる漁師にしよう」と呼ばれて以来、主と寝食を共にし、主といつも共にいたから、離れることは寂しくてたまらないという思いがあったのでしょう。あのゲッセマネの園で、主を捕らえに来た敵が、乱暴な態度に出た時に、その敵の耳を剣で切り落としたような、自分がお守りするという思いに駆られたわけではなくて、深い考えもなく、気になって、ついて行ったのでしょう。
 ペトロは、大祭司の屋敷の中庭で、主との関係を三度指摘されます。それに対して彼は三度、否み、言い逃れをします。その言葉の調子は徐々にきつくなり、言わなくていいことまで言うようになります。彼は、主を見捨ててしまおうとは思っていなかったでしょう。けれども、主の仲間だと言ったら、自分も一緒に裁判にかけられる、そう思うと恐くてつい、否定したのでしょう。自分を守ることしか考えられない人の姿があります。
 けれども、もっと恐ろしいことがあります。「そんな人は知らない」と言い張った時、その中庭から上の方の、裁きのために立っておられる主の御姿が見えたかもしれません。その主を見ながらも、わざと目を逸らして否定したのかもしれません。それは残酷で恐ろしいことです。
 裁きを受けても、その態度を崩されず、裁きに耐えておられる主の真実さ。ところがそれとは対照的なペトロの不真実さ。主と共に死んでもいいと言った彼が、ここでもろくも崩れます。
そんなことがあった後、彼は鶏の鳴いた声に触れて、はっと思い出します、あの主の言葉を。「あなたは今日、鶏が二度鳴く前に、三度わたしを知らないと言うだろう」。
主は、あなたは強がっているけれども間もなく、わたしを否むと予告されます。ペトロが、あなたが捕えられる時が来たら一緒に行動し死にますと、自信たっぷりな決意を言い得たのは、罪がよく分かっていなかったからでしょう。
ところが主は、罪は宿命のように人間にまとわりついているだけではなくて、止めようとして止められるものではない、そういう恐ろしさがあることをご存知だった。だから、こう予告なさることができたのでしょう。
 この主の言葉を思い出した彼は、この言葉の何に泣いたのでしょうか。あなたにはできやしないと馬鹿にされたように感じたから、とても厳しく感じたから、涙にくれたのでしょうか。そうではなくて、この御言葉の中に、主の真実な御姿を見て、自分の罪に気づいた。こうおっしゃりながら主は、間もなく崩れてしまう弱いご自分の弟子を見下したり、あなたなんか知らないと突き放したりしておられるのではなくて、受けとめ、赦してくださっている、そう気づいたから、泣き崩れたのではないでしょうか。
 今の私たちにとって、主の言葉はどこにあるのでしょうか。それは十字架にあります。あの究極的で具体的な愛の御業こそが、主の言葉がどんなに真実であるかを明らかに示しています。
 ペトロは、主が十字架につけられた時に、その十字架のもとにいませんでした。逃げていた。また主を見捨てたことになります。どんなに泣き崩れたことでしょう。
 そんな彼のもとに、復活された主が現れます。そして、彼を再び、教会の指導者としてお立てになります。彼を立ち上がらせることができたのは、彼の決意や力ではなくて、主の言葉の力なのです。ただ一つ、十字架にある主の真実な御姿、赦しの愛こそが、人を本当に立ち上がらせる力、人をどん底から救う力となるのです。
 

説教一覧(2014年度)

2014.6.1
目を留めてくださる神
2014.6.8
地の果てに至るまで
2014.6.15
新しい喜び
2014.6.22
あなたを訪ねる王
2014.6.29
「できれば」と言うのか
2014.7.6
天使のメッセージ
2014.7.13
あなたはどこにいるのか
2014.7.20
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2014.7.27
私のいるべき場所
2014.8.3
主の道を整えよ
2014.8.10
洗礼を受ける主
2014.8.17
主よ、しかし
2014.824
神に至る道
2014.8.31
誘惑と戦う武器
2014.9.7
実現する聖書の言葉
2014.9.14
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2014.9.21
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2014.9.28
町々を巡る主イエス
2014.10.5
み言葉が差し込む
2014.10.12
疲れた者に力を
2014.10.19
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2014.11.2
もう泣かなくてよい
2014.11.9
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2014.11.16
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2014.11.23
命に与る安息日
2014.11.30
主イエスの祈り
2014.12.7
幸いなるかな
2014.12.14
マリアの救い
2014.12.21
見よ、救いのしるしを
2014.12.28
地に届く天の光
2015.1.4
その方の星を見よ
2015.1.13
神の子とする霊
2015.1.18
心に逆らう愛
2015.1.25
主イエスを信じなさい
2015.2.1
土台の上に建てる
2015.2.8
痛みを伴う愛
2015.2.15
ただ一言に賭ける
2015.2.22
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2015.3.1
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2015.3.8
主イエスの言葉を思い出して
2015.03.15
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2015.3.22
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2015.3.29
神の国の秘密