主イエスの祈り
説教要旨(11月30日朝礼拝より)
ルカによる福音書 6:12-19
牧師 藤盛勇紀
イエス様が祈られたことは度々記されていますが、徹夜の祈りをなさったことが記されているのは、ルカ福音書ではここだけです。この徹夜の祈りは、どのような祈りだったのかは分かりません。しかし、イエス様にとって重大で決定的な時だったに違いありません。あのゲツセマネの祈りと通じる、苦悩と苦汁の祈りだったのかも知れません。イエス様は夜を徹する祈りの中で、父なる神の御心と一つになられたのでしょう。それで、朝になると御心にしたがって直ちに行動されます。具体的には、「十二人」をお選びになったということです。
「十二」とは12部族つまり「イスラエル」「神の民」の象徴です。エジプトから救い出されたイスラエルは、やがて神の御心から外れ、ついに国を失ってしまいました。イエス様がここで12人をお選びになったのは、神の民の再結集です。新しい命に与らせ、真の再出発をさせるためです。
そうした決定的な再出発ならば、二度と失敗することがないように選りすぐったエリート集団を結集なさったのでしょうか。ところが、12人の顔ぶれを見ますと、到底そうは思えません。ペトロとアンデレ、ヤコブとヨハネはガリラヤの漁師です。教育があるわけでなく、特に信仰的な訓練を受けているわけでもない。マタイは同胞を売って懐を肥やすような徴税人。「疑い深いトマス」と呼ばれる頑なな男もいれば、極右の国粋主義者のようなシモン。挙げ句に、裏切り者となるユダが含まれている。「なぜこんな連中が」と思われる顔ぶれです。ある人々から見れば「ならず者集団」であり「失格者集団」です。
その彼らが「使徒」とされました。使徒は特別な使命を帯びています。どういう使命なのか。使徒言行録を見ますと、使徒とは、「キリストの復活の証人」なのです。キリストは私たちのために十字架について死なれ、死を滅ぼして甦られ、いま生きておられる。そうして私たちの主であられる。それを、命をかけて証ししたのです。
教会はこの使徒たちの証言の上に立ち、「たしかにそうだ。主イエスは生きておられる。私のために死んでくださった神の御子は、生きておられる」と、私たちも信じる者とされました。私たちは使徒的信仰に生きていますし、主の教会、神の民として、いまも使徒の使命を帯びているのです。
使徒たちはイエス様と一緒に山から下りて「平らな所」、この世のただ中に立ちます。そこは病気の人々がおり、汚れた霊に悩やむ人たちがいます。そうした苦難に満ちた世にあって、「あの連中」がどんな力を持っているのか。何の役に立つというのでしょうか。しかし彼らは、主イエスが祈って、お立てになった人々です。
使徒たちは、自分の能力でこの世に立つのではありません。イエス様が「私が選んだ」と言われる、その主の選び、「私が祈った」と言われる、その主の祈りによって立つのです。病と悩みに満ちたこの世に立った彼らが見たことは、病が癒されていく事実でした。「奇跡」と言ってしまえばそれまでですが、「イエスから力が出て、すべての人の病気をいやしていたからである」とあります。人々の病気が癒されたのはすべて、「イエスから力が出た」からだというのです。
現代に生きる私たちも、病と悩みに満ちた世に立たされ、そこに遣わされています。私たちには特別な力はありません。祈ることにさえ疲れてしまう者です。しかし大事なことは、主が生きておられるという事実です。私たちはその証人なのです。私たちのただ中に、主が生きて働いておられる。この信仰の事実が、どうしようもなく弱い私たちを生かしていますし、「いったいどうなってしまうのだ」と思われるこの世にあっても、決して希望を失わないのです。
説教一覧(2014年度)
2014.6.1
目を留めてくださる神
2014.6.8
地の果てに至るまで
2014.6.15
新しい喜び
2014.6.22
あなたを訪ねる王
2014.6.29
「できれば」と言うのか
2014.7.6
天使のメッセージ
2014.7.13
あなたはどこにいるのか
2014.7.20
今こそ、安らかに
2014.7.27
私のいるべき場所
2014.8.3
主の道を整えよ
2014.8.10
洗礼を受ける主
2014.8.17
主よ、しかし
2014.824
神に至る道
2014.8.31
誘惑と戦う武器
2014.9.7
実現する聖書の言葉
2014.9.14
実を結ぶ神の言葉
2014.9.21
力あるみ言葉
2014.9.28
町々を巡る主イエス
2014.10.5
み言葉が差し込む
2014.10.12
疲れた者に力を
2014.10.19
大胆に主に近づこう
2014.10.26
罪人を招く主
2014.11.2
もう泣かなくてよい
2014.11.9
右の手を取ってくださる主
2014.11.16
新しい喜び
2014.11.23
命に与る安息日
2014.11.30
主イエスの祈り
2014.12.7
幸いなるかな
2014.12.14
マリアの救い
2014.12.21
見よ、救いのしるしを
2014.12.28
地に届く天の光
2015.1.4
その方の星を見よ
2015.1.13
神の子とする霊
2015.1.18
心に逆らう愛
2015.1.25
主イエスを信じなさい
2015.2.1
土台の上に建てる
2015.2.8
痛みを伴う愛
2015.2.15
ただ一言に賭ける
2015.2.22
来たるべき方が来た
2015.3.1
歌え、神の国の歌を
2015.3.8
主イエスの言葉を思い出して
2015.03.15
安心して行きなさい
2015.3.22
主に仕える旅
2015.3.29
神の国の秘密