父の約束を待ちなさい

説教要旨（5月10日朝礼拝より）
使徒言行録 1:1-11
伝道師 上田真由美

　「エルサレムを離れず、前にわたしから聞いた、父の約束を待ちなさい」。復活の主の御言葉です。イエス様が伝道活動をされたエルサレムの地、そこで使徒たちもイエス様と共に生活しました。その地に留まって、イエス様が以前話しておられた父の約束を待て、つまり、聖霊を受ける準備をせよ、と言われるのです。神の国の話も、このエルサレムのことも父の約束も古い話です。ということは、今現れておられる主は、全く新しい主ではなくて、ある意味、復活前の主と同じ主だということです。聖霊を受けるというのは、特別な経験ではなくて、あのエルサレムを中心に働かれた主が本当に自分たちの主なのだと信じさせることなのです。
　「ヨハネは水で洗礼を授けたが、あなたがたは間もなく聖霊による洗礼を授けられる」とあるように、「父の約束」とは具体的には洗礼を受けることです。神様は私たちに、聖霊を与えて、本当の洗礼を授けようとしておられた。そうだからペンテコステは、自分の受けた洗礼が単なる水の洗礼ではなくて本当の洗礼であったことを確信する時でもあるでしょう。　
　聖霊を受けた人はどうなるのでしょうか。力ある政治家や財政家になるのではありません。本当に伝道するようになります。伝道するのは、この世の現実問題から逃げたのではなくて、伝道して神の国の福音を信じさせる以外にこの世に神の恵みの支配が及ぶ道はないからです。そうだから、「イスラエルのために国を建て直してくださるのは、この時ですか」と尋ねる使徒たちに対してイエス様は、それは父の権威のもとにあると、言わば、その答えをはぐらかされて、そして大事なのは聖霊によって、本当に生かされるということなのだと言われたのです。
　その後、あなたたちは、聖霊を受けて、まずこのイスラエル全体に伝道する。そしてこの地だけでなく外国に、地の果てに至るまで伝道すると言われました。聖霊を受けると、私たちにまことの「力」が与えられ、伝道は確かに進められます。伝道は神ご自身がなさることであり、人は用いられるだけ。そのために私たちは召されています。この弱い私たち人間を尊い神のみ業に用いてくださることは、私たちにとって無上の喜びではないでしょうか。
　伝道は時に行き詰まります。無力さを経験します。一人から一人へバトンを手渡していくような仕方です。いつまで続くの？と呟くことも。しかし、神ご自身がそういう仕方をお望みになっている。つまり、そういう仕方にだけ、この世に神の国ができる道があるということです。
イエス様は生前、「わたしは地上から上げられるとき、すべての人を自分のもとへ引き寄せよう」（ヨハネ12：32）と言われました。イエス様のご生涯、特にあの十字架に至っては、弟子たちさえもイエス様から離れたように見えました。けれども、天に帰られたイエス様に代わる力が、聖霊というかたちで与えられました。その聖霊によって、イエス様はすべての人をご自分のもとへ呼び集めるようになさったのです。聖霊を受けて使徒たちは初めて、自分たちが本当に待ち望むべきものは、どこまでも「聖霊」なのだと分かりました。そうだから教会は、この日を中心にして、世界に向けた伝道を展開することができました。十二人という小さな群れから全世界に及ぶ教会が生まれて行きました。
ペンテコステの日に、ただ聖霊降臨を記念するのではなくて、私たち一人一人が自分の受けた洗礼が本物であったことを信じ、困難な時にも聖霊の導きがあることを信じて、神様から託されている伝道の喜びに生かされる者とならせていただきたい、そう願います。