主イエスの沈黙
説教要旨(3月13日朝礼拝より)
マルコによる福音書 15:1-15
伝道師 上田真由美
ローマの総督ポンテオ・ピラトの前で行われたイエス様の最後の裁判の最も大きな特色の一つは、イエス様が沈黙された、ということでしょう。「しかし、イエスがもはや何もお答えにならなかったので、ピラトは不思議に思った」(15:5)。
これまでたとえば、山上の説教などで、イエス様は、何千人、何百人の人に向かって、神の国の福音を宣べ伝えてこられました。
ところが、この最後の大事なところで、神の国や神の救いについてもう一言もお語りにならないばかりか、ご自身についての説明もなさらない。そしてそれは、ピラトが不思議に思うほどです。ピラトはこの人に罪があるとは思えなかったらしいのですが、そうなのになぜ、この人は人々の理不尽な訴えに対して何も答えようとしないのか、と思ったようです。
主イエス・キリストの沈黙。私たちが聞きたいと思う時に、神様はお返事をくださらない。そう私たちが思うのは、ただ神の御心は人には分からないというだけでなくて、聖書が、あるいは、教会が伝えていることは、こういうことだと分かっている。しかし、自分はこうだと思う。そしてそれについて神様はいけませんよ、と言われない。それなら、それを認めてくださったのではないかと、私たちは神の沈黙を自分の都合のよいようにとる場合があるのではないでしょうか。ですから、神の沈黙というよりはむしろ、自分の我がままな思いが、神のお答えを締め出して、それを神の沈黙と言っているのかもしれません。
しかし、神様が黙っておられることは、実は、神様の意志がいかに固いかを示しているのではないでしょうか。もし神様が雄弁であられたらどうでしょう。私たちが聞きたいことについて多くの言葉で説明してくださったら、御心が分かりました、その御心に従います、となるでしょうか。神様がどんなに雄弁に語られても、人間は自分の気に入るまではそれに納得しないのでは…。ですから神の沈黙は、神の最大の雄弁と言っていいのではないでしょうか。
イエス様が、この裁判の場に立たれ、そして沈黙しておられること、そこに御心が最も現れている。私たちの気に入るようなことを言われるのではなくて、十字架の死という一つの目的をもって、ここに立たれた。それが明らかであって、そしてそのことを黙って、ただ現しておられる。人々はそれが気に入らないので、この人はなぜ弁解しないのかと言うけど、弁解しないのではなくて、そのお姿に示されていることを、ただ受け入れようとしないのではないでしょうか。
沈黙していたら、十字架につかなければならないのです。その沈黙は、苦しみを受けるための沈黙です。私たちの知らないところで、イエス様は人の愚かさ・頑なさ、その全てを知り尽くして、それを一身に引き受けて、父なる神の定められた道を、私たちのために歩まれ、遂に救いの業を成就してくださいました。
そういう意味で、イエス様がそのご使命を明らかにしなければならない最後が近づくにつれて、沈黙を守られたことは大事なことだと思うのです。そこに、主キリストがどういう意味で人に対してまことの王であられるかが、もう誰も打ち消すことのできないような形で明らかにされています。
そしてそこに、主キリストの動かすことのできない御心、愛を見ることができると思うのです。主キリストのご生涯の中に現れたこのみ業を、神様の最も雄弁な証しとして聞き、共に従ってまいりたいと思います。
説教一覧(2015年度)
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急いで行って告げなさい