人生の優先順位
説教要旨(7月19日朝礼拝より)
ルカによる福音書 9:57-62
牧師 藤盛勇紀
イエス様と3人の人たちの短いやりとりが記されています。共通しているのは「主に従う」ということを巡るやり取りだということです。最初の人は、積極的な青年らしさが感じられます。「このお方、イエス様に賭ける」と決心したのでしょうか。「あなたがおいでになる所なら、どこへでも従って参ります」と言うのです。ところが、イエス様のお言葉はそっけないものでした。「人の子には枕するところもない」。
主を信じて従う生活は、確かに決心は大事です。しかし私たち自身の決意や決断で始まるものでも貫かれるものでもありません。主の招き、赦し、恵みがなければ、「私の信仰」などと頑張ってみても、自分の生き方の修正程度はできてもで、新しい命に生きることなどあり得ないでしょう。
主に従うことは、応答としての服従です。ところが、この一人目の人は、イエス様がどんなお方かが分からないまま、自分から張り切って決意表明してみせます。しかしイエス様は、すぐに別の人に目を移してしまい、その人に向かって「わたしに従いなさい」と言われました。主から招かれたこの幸いな人は、自分の父親が死んだばかりでした。それで、「主よ、まず父を葬りに行かせてください」と言います。
当時のユダヤ人社会でも、父親の葬儀を出すことは、重要な子供の責任でした。人間的な感情からしても、まずはそのことを受け止めてから、というのが当然でしょう。
ところが、イエス様のお言葉は、あまりにも冷たい言葉でした。「死んでいる者たちに、自分の死者を葬らせなさい」。謎に満ちた言葉です。もちろん、家族の葬儀をするなと言うのではありません。むしろ、希望も喜びも消そうとするかのような黒ずくめの葬儀の場に、あなたは神の国の望みを持ち込んで行け、ということでしょう。神の国に生きることへの招きです。神の恵みを知らない世に対してはチャレンジングな命令ですが、神の国の望みがなくて、どうして死に直面し、絶望を克服することができるでしょうか。
このやり取りを近くで聞いていたのであろう3番目の人は、最初の人とも2番目の人とも同じように見えます。「しかし、まず家族にいとまごいに行かせてください」と言います。
どんな家族がいたのでしょうか。「まず、家族に別れを」というのも当然でしょう。私たちは誰でもこのようになります。結婚すれば「まず妻のことがありまして」、子供が生まれれば「まずは、子供のことがありますので」「まずは、孫のことが」「親のことが」。家族だけではありません。「まずは、まだ仕事がありますので」。リタイアしたと思ったら今度は、「まずは、やりたかったことをやりたいと思いまして」。「まずはこれを」は際限なく続きます。
イエス様は言われます。「鋤に手をかけてから後ろを顧みる者は、神の国にふさわしくない」。「まず、まず」の生活から離れるのは、家族など放っておけということではありません。そうではなく、今すでに主ご自身の前にいながら、その主に信頼して生きることよりも、優先されるべき「まず」があなたにある。そのあなたの順序、「優先順位」が問われているのです。
つまりは、「あなたの主は誰か」です。誰があなたに命を与え、誰があなたの命を取り上げるのですか。命の主が、ほかでもないあなたのために、いま働いておられる、その神の国の働きが始まっている。
それなら、あなたはもう後ろを振り返る必要はないのです。すでにこのお方に到来している神の国を信じて、そのために生きてよいのです。このお方の招きを聞いているなら、手を鋤にかけているなら、幸いです。なぜなら、もう後ろを振り返らなくてよいからです。ただ約束された神の国のがあなたの前方にあるだけなのですから。
説教一覧(2015年度)
2015.4.5
おめでとう、主は生きておられる
2015.4.12
主がお求めになるもの
2015.4.19
主イエスとの旅
2015.4.26
自由を取り戻す
2015.5.3
人の力尽き、信仰が折れても
2015.5.10
父の約束を待ちなさい
2015.5.17
遣わされて生きる
2015.5.24
命を支える霊
2015.5.31
人に仕える主
2015.6.7
救いへの道
2015.6.14
キリストを知る道
2015.6.21
神様の愛
2015.6.28
この曲がった時代に
2015.7.5
主イエスを受け入れる者
2015.7.12
幸せの中心
2015.7.19
人生の優先順位
2015.7.26
収穫は多い
2015.8.9
和らぎある教会生活
2015.8.16
もう自問自答はいらない
2015.8.23
必要なものはただ一つ
2015.8.30
上から来た祈り
2015.9.6
神の国は来ている
2015.9.13
あなたのともし火
2015.9.20
主が備えてくださる
2015.9.27
器の中身
2015.10.4
キリストの仲間として
2015.10.11
ここにも天のはしごは届いている
2015.10.13
平和のレベル
2015.10.25
あなたの豊かさ
2015.11.1
神の国を受け継ぐ者
2015.11.8
愛は神から
2015.11.15
大切なあなた
2015.11.22
何に備えて生きるか
2015.11.29
火を投ずる主
2015.12.6
今の時を見分ける
2015.12.13
あがめよ、わが魂
2015.12.20
はるばる来られた神
2015.12.27
忍耐して待つ神
2016.1.3
神の国は来ている
2016.1.10
狭い戸口から入れ
2016.1.17
救いの業は前進する
2016.1.24
神から招かれて
2016.1.31
創造の信仰
2016.2.7
宴会への招き
2016.2.14
旅立ち
2016.2.21
主の弟子として
2016.2.28
神の大きな喜び
2016.3.6
走り寄る父
2016.3.13
主イエスの沈黙
2016.3.20
光の子らの賢さ
2016.3.27
急いで行って告げなさい