神のものは神に
説教要旨(9月11日朝礼拝より)
ルカによる福音書 20:20-26
牧師 藤盛勇紀
「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい」。この言葉は、「教会と国家」「信仰と政治」の問題などを考える時にしばしば引用されます。イエス様に問うた者も、国家の支配を強烈に意識させる税金に関する問いを持ち出してきました。
ところが、イエスを陥れてやろうと考えていたこの「回し者」たちは、「デナリオン銀貨を見せなさい」と言われた時に、その場で銀貨を出して見せます。彼らが忌み嫌っていたはずのローマの貨幣が、ふだんから彼らのポケットに入っていたわけです。彼らだけでなく、私たちも、信仰のことを深刻に問いながら実は「信仰は信仰」「現実は現実」と、信仰と現実生活を切り離して考えているのではないでしょうか。
しかし、「皇帝のもの」と「神のもの」は対等には並び得ません。「皇帝のもの」とは、私たちが生きている現実世界、目に見えるこの世界ですが、それは全て過ぎ去り、滅び行きます。しかしこの現実世界の生活とその意味を、根底から支えるものがあります。その次元のことが、「神のものは神に」と言われているのです。
神の下にあっては、ローマ皇帝だろうが何であろうが、神のご支配の内にあります。万物、万有が神のものです。イエス様は言われました、「父は悪人にも善人にも太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降らせてくださる」。
もし、「神のもの」が一体何なのかまるで見当もつかないとしたら、「神のものは神に返しなさい」という主のお言葉も、空しくなってしまいます。
デナリオン銀貨には、「皇帝の像」が刻まれていました。それは皇帝の支配を表します。では、「神の像」はどこに刻まれているのでしょうか? それは私たち自身、あなたです。
聖書は最初からそう語っています。私たちは「神のかたち」に造られた「神の像」なのです。そして、神のかたちに造られた人間に与えられた使命は「支配せよ」です。
「神のものは神に返しなさい」とは、まず第一に、私たち自身を神にお返しすることです。いや、もともと神のものなのですから、神のものとして生きるのです。「神によって造られ、生かされ、用いられる私」を生きることです。「神様、私はあなたのものです。主よ、あなたが私の神です」、そう信じられてはじめて、私たちは神の恵み、神の愛を現す「神の像」として生きるのでしょう。
私たちはこの世、この地上の次元に生きていますが、「この世の者」として生きているのではありません。イエス様は弟子たちに向かってこう言われました、「あなたがたは世に属していない。わたしがあなたがたを世から選び出した」(ヨハネ15:19)。そして、「わたしが世に属していないように、彼らも世に属していないのです」(17:19)と祈られました。
「皇帝のものを皇帝に」返したところで、言い換えれば「この世のものをこの世に」「人のものを人に」返したところで、それは当然のことです。そうしたところで、「すべてものは神のもの」なのです。
ですから私たちは、「この場面ではこの世的に生きるけれども、こちらでは神のものとして信仰によって生きる」などといった切り分けや使い分けは不要です。使い分けようとする者こそ、「正しい人を装う回し者」です。
「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に」。この御言葉に従って生きることは、希望ある生き方、喜ばしい人生です。そこに、御国が現れ出るからです。「神の国は言葉ではなく力にあるのです」(1コリ4:20)。そして、「主を喜び祝うことこそ、あなたたちの力の源である」(ネヘミヤ8:10)。神のものとして生きて、神を喜び祝って、「神のもの」を世に現しましょう。
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