あなたの罪は赦される
説教要旨(9月29日 朝礼拝)
マタイによる福音書 9:1-8
牧師 藤盛勇紀
マタイはあっさり記しますが、マルコやルカを見ると、病人を運んできた人たちは家の屋根に上り、イエスがおられる真上の屋根を破壊し、病人を床ごとつり降ろしました。大騒ぎになったでしょう。ところがイエス様は、彼らの信仰を見て、中風の人に「子よ、あなたの罪は赦される」と宣言されました。何としてもイエスのもとへという彼らの行動。「この人を癒やしてください」と願い出たのでもない。ただイエスに近づいた。それをイエスは「信仰」とご覧になった。彼らのどういうところに信仰が表れているのでしょうか。
私たちは「主を信じる」と言い、自分でも信じていると思いながら、ただ主に信頼して依り頼み、ただ主に近づく、ということをしなくなっているのかもしれません。祈りや願いも、あれこれ考えている内に、自分は本当に何を願い、何を求めているのか分からなくなったりする。「ただ主に近づきたい。主と共にありたい」という単純な願いさえ、いつの間にか失っているのかもしれません。
癒やされた人が何をしたとか言ったとか、一切ありありません。ただこの人のことを思う人々に、イエスは信仰をご覧になった。そして、病気を癒したのではなく、ただ「あなたの罪は赦される」と罪の赦しを宣言されたのです。律法学者たちは、これは神を冒涜することだと思いました。
度外れた行動に出た彼らがどんな信仰を抱いていたのかは分かりません。ここは他にも病人がいたはずです。彼らの行動は余りに身勝手な行動だとも言えます。それがなぜ信仰なのか? それは、ただイエスが「信仰」とご覧になったから。それだけです。イエス様はしばしば、「あなたの信仰があなたを救った」と言われ、異邦人に信仰を認めて、「イスラエルの中でさえこれほどの信仰を見たことがない」と言われたこともありました。
イエスが言われた「信仰」は何をもたらしたか。それは「赦し」です。神にしかできない「罪の赦し」を、イエスはお与えになった。
イエス様は、どんな病も癒す力と権威を現すよりも、「罪の赦し」を与えるために来られた方です。神との関係が切れ、神との断絶の中にある「罪」。罪は様々な形をとり、時に人生を破壊し、空しさに突き落とします。神から見捨てられたとしか思えない人があり、闇の中にある人、「どうせ神などいない、関係ない」と開き直っている人、神に信頼しきれない人がある。そんな人間を、神は赦し、ご自分のものとしようとしておられます。
イエス様はその「罪の赦し」を、信仰を通してお与えになります。信仰とは、罪の赦しを与える権威を持っておられる方に触れられ、この方に結ばれ、神と和解させられ、神のものとして生かされ生きること。その道です。
おそらく、中風の人も彼らの友人も、イエスの弟子たちも、罪の赦しがどういうことなのか分かっていません。そもそも、罪を赦していただこうなどと考えてもいないでしょう。
ここに何人もの登場人物があり、動きがありますが、ここで言葉を発しているのはただイエスお一人だけなのです。誰も何も言ってない。信仰を言い表した言葉もありません。
しかし、そうであっても、主はご自分に近づく人たちの思いを超えて、命の道を用意していてくださっています。ただ主を信頼している、ただ主に近づく。人からどう思われるか、自分が人にどう見えるか、そんなことは全く関係なく、ただ「イエスよ、あなたに」と近づく。そんな人たちの内に、イエスは信仰を見てくださいます。イエスが見、イエスに触れられる。信仰はそこにしかありません。
罪の赦しを与えるのに、主は人に何も要求なさらず、何の条件も付けておられません。イエスは十字架の上で祈られました。「父よ、彼らをお赦しください。自分が何をしているのか知らないのです」。自分が何をしているのかさえ知らない者のために、主は身を裂き、血を流し、死なれました。「実にキリストは、私たちがまだ弱かったころ、…不信心な者のために死んでくださった。…私たちがまだ罪人であったとき、キリストがわたしたちのために死んでくださったことにより、神は私たちに対する愛を示されました」(ローマ5:6-8)。ここに何の条件もありません。主の言葉を聞いて、ただその恵みをいただく者が、常に大胆に主に近づいて、恵みを味わって行きます。
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2024.6.2
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