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聖霊によって、神の愛が

説教要旨( 6月 1日 朝礼拝 )
詩編 第25編 1 ~ 5節
ローマの信徒への手紙 第 5章 1 ~ 5節
倉橋康夫

 ロマ書 第5章2節の最後で、パウロは<神の栄光にあずかる希望を誇りにしています>、と言い、続いて、<そればかりでなく、苦難をも誇りとします>、と言います。原文では、ここは「苦難の中にあっても誇る」という文章です。キリスト者が出遭う苦難には、信仰故のものがあり、それを喜んで受け入れ、誇りとする、ということがあり得るでしょう。そのような苦難を受ける、ということ自体が、信仰の歩みだからです。宗教改革者の.M.ルターは、これを「苦難をも誇る」と訳しました。それ以来、この翻訳が広く定着したのです。キリスト者故の苦しみについて、パウロはフィリピ書において、次のように言っています。<つまり、あなたがたは、キリストを信じることだけでなく、キリストのために苦しむことも、恵みとして与えられているのです。>(1 : 29)、と。
 「苦難を誇る」とは、そのような苦難に対する信仰者の積極的な姿勢を意味します。そして、そのように苦難と向き合う時、苦難は忍耐を生む、と言います。ここで語られていることは、一般論ではありません。信仰の生活における忍耐のことです。神の恵みに堅く立ち続ける忍耐、「今の恵み」から離れない忍耐、従って、<神の栄光にあずかる希望>から離れない忍耐、と言うこともできるでしょう。この希望の実現の時を忍耐して待ち望む、ということです。このように、キリスト者は、苦難によって益々堅く神の恵みに結び付けられ、希望に生きるものとされます。ここに、信仰者の忍耐があるのです。
 そして更に、そのような信仰者の忍耐の生活から、練達が生み出される、と言います。「練達」と言うと、物事に熟練すること、と考えがちです。世渡りが上手になるとか、処世術に長けるとか、を連想するかも知れません。しかし、本来「練達」とは、テストに合格すること、金の純度のテストに合格することです。つまり、純粋になること、です。ここでも、何よりも信仰における純粋さのことです。神の恵みに対して純粋になることです。ただ神に依り頼み、神に全てを委ね、神に望みを置く生き方のことです。従って、神の恵みに対して純粋である、ということは、このように決して望みを失うことはなく、寧ろ、望みを新たにするのです。
 従って、このように苦難の中で忍耐の生活をし、忍耐の生活から練達を身に付ける信仰の歩みは、常に希望を新しく受け止め直す歩みです。<神の栄光にあずかる希望を誇り>とするキリスト者の歩みは、苦難をさえも誇り・喜び、更に忍耐と練達を経て、尚一層強く希望に生きるようにされる、と言うのです。このように、信仰から信仰への歩みは、希望から希望への歩みである、と言うことができるでしょう。そして、<希望はわたしたちを欺くことがありません。>(5節)、と言われます。「この希望は恥をかかせない。」(直訳) 併せて読んだ詩編 第25編において、詩人は、主なる神に望みを置いて生きる者は、決して恥を受けることがない、との確信を謳い上げています。
 扨て、そこでパウロは、<希望はわたしたちを欺くことがありません>、と断言できる根拠を示します。<聖霊によって、神の愛がわたしたちの心に注がれているから>、と。神の愛は、独り子を十字架につけてまでも、私たち人間を救って下さる愛です。そして「心」とは、その人間の感性・願い・判断の場、その人の存在と行為の中心、です。そこが、聖霊によって、神の愛で満たされ、神の愛が支配するのです。私たちを救って下さる神の愛、即ち神の恵みに満たされる、と言っても良いでしょう。神の救いのみ業で心の中を一杯にして生きるキリスト者の姿は、「聖霊によって、神の愛が」注ぎ込まれていることを証ししています。困難、迷い、躓きはあるでしょう。しかし更に、聖霊の助けを求めつつ、神の愛を受けた者に相応しく整えられて、信仰の歩みを進めたいと祈り願います。
 

説教一覧(2008年度)

2008.04.06
不信心な者を義とする方
2008.04.13
わたしの食べ物
2008.04.20
福音の射程
2008.04.27
信仰の父アブラハム
2008.05.04
神の約束に生きる
2008.05.11
ここに水があります
2008.05.18
信仰によって強められ
2008.05.25
今の恵み
2008.06.01
聖霊によって、神の愛が
2008.06.08
あなたがたは、決して信じない
2008.06.15
まことの神であり、まことの人
2008.06.22
神の怒りからの救い
2008.06.29
向きを変えて、行きなさい
2008.07.06
神を喜びを誇る
2008.07.13
良くなりたいか
2008.07.20
罪が死をもたらす
2008.07.27
恵みの豊かさ
2008.08.03
恵みが支配する
2008.08.10
新しい命に生きる
2008.08.17
驚いてはならない
2008.08.24
神に属すること
2008.08.31
主と一体になって
2008.09.07
神に生きる
2008.09.14
あなたたちが救われるために
2008.09.21
自分自身を神に献げよ
2008.09.28
自由と服従
2008.10.05
賜物としての永遠の命
2008.10.12
あなたの中にある光
2008.10.19
新しい生き方
2008.10.26
この人たちに食べさせる
2008.11.2
わたしたちの本国
2008.11.9
恐れることはない
2008.11.16
父なる神さま
2008.11.23
永遠の命に至る食べ物
2008.11.30
神に背負われて行く道
2008.12.7
罪が掟を利用し
2008.12.14
天から降ってきたパン
2008.12.21
主キリストのご降誕
2008.12.28
聖なる律法
2009.01.04
罪の正体
2009.01.11
命を与える霊
2009.01.18
撃ち破られてはならない
2009.01.25
惨めさからの救い
2009.02.01
主キリストに結ばれて
2009.02.08
備えられている時
2009.02.15
人となられた神の御子
2009.02.22
霊の思いは命と平和
2009.03.01
アッバ、父よ
2009.03.08
真実な人
2009.03.15
苦しみと栄光
2009.03.22
さあ、立ち上がりなさい
2009.03.29
虚無と希望