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アッバ、父よ

説教要旨( 3月1日 朝礼拝、教会創立記念礼拝 )
イザヤ書 第63章 15~16節
ローマの信徒への手紙 第 8章 12~17節
倉橋康夫

 本日与えられた聖書の個所は、<それで、兄弟たち>で始まっています。キリスト者とは何者かを丁寧に確認すればする程、親しみが増し加わったのです。私たちは同じ信仰で結ばれている兄弟姉妹なのだ、との思いです。そして更に、パウロは、<わたしたちには>と言います。これまで、<あなたがた>と呼びながら、話を続けてきたが、ここで思わず、パウロは<わたしたち>と言うのです。まだ会ったこともない、ローマの信徒たちとの距離が無くなり、信仰において一つ、聖霊において一つ、との気持ちがここにあります。
 そして、私たち信仰者には一つの義務がある、と言います。そこで先ず、既に念入りに語ったことですが、<霊によって体の仕業を絶つ>という信仰者のあり方を確認します。<体の仕業>=「肉の支配」を絶つのは、<霊によって>であり、それはキリストの霊、神の霊によることです。従って、霊に対する義務とは、聖霊のお働きに身を委ねつつ生きる、ということに他なりません。ここでパウロが語る義務・負い目は、信仰者にとって、感謝であり、喜びです。この世に引きずられ易い私たちにとって、時には自分との苦しい戦いとなります。けれども、私たちキリスト者にとって、その苦しい戦いもまた感謝であり、喜びです。聖霊のお働きの中に守られ、永遠の命に至る聖化の過程だからです。
 扨てそこで、突然パウロは、<神の霊によって導かれる者は皆、神の子なのです。>(14節)と言います。神の子は、本来主イエス・キリストのみに当てられるべき呼称です。ですから、キリスト者は、この主キリストと同等の者とされた、ということになります。驚くべきことです。ルターは、「これは慰めに満ちたすばらしいテキストであり、黄金の文字で記すのが至当である!」と言っています。
 この私が、「神の子」とされる。どこから考えても、相応しくないのに、何故そんなことがあり得るでしょうか。そこには深いいきさつのあったことを、私たちは既に良く知っています。本来の神の子たる、主イエス・キリストがこの世に来られた、といういきさつです。あの、主キリストの十字架の死と復活に集約されるいきさつです。
 そして、キリスト者は、<神の子とする霊を受けた>、「養子縁組の霊を受けた」(直訳)、と言います。そして、<この霊によってわたしたちは、「アッバ、父よ」と呼ぶのです>、と。「アッバ」は、乳幼児が親に抱かれて、又親の傍近くで、安心し切って発する語りかけの声です。併せて呼んだイザヤ書 第63章に、捕囚からの帰還が成ったものの、イスラエルの復興はなお不十分で、混乱の中にあって、天の神への祈りと訴えが記されています。主なる神の助けを必要としているのです。その際に、イスラエルの民は、<あなたはわたしたちの父です>、と繰り返し信頼の告白をします。父なる神であられるあなたは、<「わたしたちの贖い主」>であり、自分たちの味方であり、救い主である、と告白するのです。
 何時も、傍近くにおられる、或いは自分を包み込んでいて下さる、そのような神に、信頼の語りかけをする。「アッバ、父よ」と呼ぶことができる。絶えず、「父よ」と神に語りかけ得る幸い、そのような神との語らいの中に生き得る幸いを、つくづく思わされます。キリスト者は決して孤独になることはないのです。そして、この「アッバ」は、礼拝における用語であった、と言われます。礼拝において、より一層、身近に、親しく感じて、神を「アッバ、父よ」と呼ぶことができるのです。そして、信仰者は主キリストと共同の相続人である、と言います。主キリストと共に来るべき世を受け継ぐ、復活の主と同じ命に結ばれる、と言って良いでしょう。
 本日は、教会創立記念の礼拝を捧げています。今月6日で、創立122周年になります。122年間のこの教会の歩みは、同じ信仰に結ばれた一つの教会、一つの群れの歩みです。私たちもその歴史の一端を担っています。覚えて、共々に歩みを進めて参りましょう。
 

説教一覧(2008年度)

2008.04.06
不信心な者を義とする方
2008.04.13
わたしの食べ物
2008.04.20
福音の射程
2008.04.27
信仰の父アブラハム
2008.05.04
神の約束に生きる
2008.05.11
ここに水があります
2008.05.18
信仰によって強められ
2008.05.25
今の恵み
2008.06.01
聖霊によって、神の愛が
2008.06.08
あなたがたは、決して信じない
2008.06.15
まことの神であり、まことの人
2008.06.22
神の怒りからの救い
2008.06.29
向きを変えて、行きなさい
2008.07.06
神を喜びを誇る
2008.07.13
良くなりたいか
2008.07.20
罪が死をもたらす
2008.07.27
恵みの豊かさ
2008.08.03
恵みが支配する
2008.08.10
新しい命に生きる
2008.08.17
驚いてはならない
2008.08.24
神に属すること
2008.08.31
主と一体になって
2008.09.07
神に生きる
2008.09.14
あなたたちが救われるために
2008.09.21
自分自身を神に献げよ
2008.09.28
自由と服従
2008.10.05
賜物としての永遠の命
2008.10.12
あなたの中にある光
2008.10.19
新しい生き方
2008.10.26
この人たちに食べさせる
2008.11.2
わたしたちの本国
2008.11.9
恐れることはない
2008.11.16
父なる神さま
2008.11.23
永遠の命に至る食べ物
2008.11.30
神に背負われて行く道
2008.12.7
罪が掟を利用し
2008.12.14
天から降ってきたパン
2008.12.21
主キリストのご降誕
2008.12.28
聖なる律法
2009.01.04
罪の正体
2009.01.11
命を与える霊
2009.01.18
撃ち破られてはならない
2009.01.25
惨めさからの救い
2009.02.01
主キリストに結ばれて
2009.02.08
備えられている時
2009.02.15
人となられた神の御子
2009.02.22
霊の思いは命と平和
2009.03.01
アッバ、父よ
2009.03.08
真実な人
2009.03.15
苦しみと栄光
2009.03.22
さあ、立ち上がりなさい
2009.03.29
虚無と希望