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聖なる律法

説教要旨(12月 28日 朝礼拝)
詩編 第119編 105~112節
ローマの信徒への手紙 第7章 7~12節
倉橋 康夫

 パウロは、<命をもたらすはずの掟が、死に導くものであることが分かりました。>と言います。ここに、<命をもたらすはずの掟>とありますが、この<命>は、神に造られたものとして、神との関係、交わりの中に生きること、永遠の命に生きることを意味する字です。律法は、神に造られた人間がどのように活き活きと生きるか、その道を指し示すものである、ということです。
 そのことについてパウロは、律法とは本来どのようなものであるかを、12節でまとめて表明します。ここで、パウロは、律法を讃える言葉を用いて、律法についての信仰告白をしている、と言えます。<12こういうわけで、律法は聖なるものであり、掟も聖であり、正しく、そして善いものなのです。>、と。そこで、第一に選ばれた言葉が、<聖なる>という字です。「聖なる」とは、原意は「異なっている」です。律法については、確かに清く汚れがない、と言えるでしょう。ところが、キリスト者についても「聖徒」・「聖なる者」と言われます。この場合、キリスト者が清くて汚れがないというのではなく、神に属する者、神のものという意味であり、他の人々とは異なるということです。主イエスは、弟子たちに、<あなたがたは世に属していない>、と言われました(ヨハネ 15 : 19)。
 律法が聖なるものである、ということも、何よりも律法は神のもの、神から出たもの、ということです。併せて読んだ詩編 第119編で、次のように歌われています。<105あなたの御言葉は、わたしの道の光/わたしの歩みを照らす灯。・・・111あなたの定めはとこしえにわたしの嗣業です。/それはわたしの心の喜びです。112あなたの掟を行うことに心を傾け/わたしはとこしえに従って行きます。>、と。神からの<命の息>を吹き入れられて(創2 : 7)、生きるようになった人間が、真に生きるにはどうしたら良いか、を律法は指し示すと言うのです。
 ある人は、「神によってのみ生きることができる、神によってのみに生きようとする、それが律法を聖なるものとして受けるただ一つの道である。」、と言います。律法が与えられたのは、人間はこの世に属する者として生きるのではなく、その根底において、この世に属さない、この世を越える、神との交わりの中で、神によって支えられ、導かれ、力を与えられて生きる者であることを律法は教えます。そこに、律法は聖なるものである、と告白する理由があるのです。
 そして次に、律法は<正しい>と言います。正しさとは、どちらか一方に片寄っていないことです。神と人間との関係において、正当な立場にあることです。神が暴君のように勝手気ままに振舞うのでもなく、人間がロボットのように神に従うというのでもない、ということです。そして第三に、律法は、<善い>と言います。善である、とは神の善意を意味します。律法は神の善意によって、私たち人間が存在することを教える、と言うのです。このように、「正しい」も「善い」も、第一の「聖なる」ということを説明する言葉である、と言うことができます。
 けれども、人間は遂に、この律法を本来の姿で受け、神の祝福に与る者となることができませんでした。しかしながら、「聖なる律法」を、その本来の姿のままに受け入れる道が開かれました。人となり給うた神のみ子がその道を開いて下さったのです。主イエスは、「わたしが来たのは律法を完成するためである。」(マタイ 5 : 17)、と言われました。律法によっては救われることのできない人間を、ご自分の十字架によって救いの道を開いて下さったのです。その救いは、「聖なる律法」が指し示している救いに他なりません。神によって、そして神と共に生きる生活がそれです。それは、主キリストの復活が指し示しているように、死の彼方の命をも保証する救いです。私たちは既に、罪の赦しの下に、「聖なる律法」の指し示す神の祝福に生かされているのです。
 

説教一覧(2008年度)

2008.04.06
不信心な者を義とする方
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2008.05.11
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2008.05.18
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2008.05.25
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2008.06.01
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2008.06.08
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2008.07.27
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2008.08.03
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2008.08.17
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2008.08.24
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2008.08.31
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2008.09.07
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2008.09.14
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2008.09.21
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2008.09.28
自由と服従
2008.10.05
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2008.10.12
あなたの中にある光
2008.10.19
新しい生き方
2008.10.26
この人たちに食べさせる
2008.11.2
わたしたちの本国
2008.11.9
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2008.11.16
父なる神さま
2008.11.23
永遠の命に至る食べ物
2008.11.30
神に背負われて行く道
2008.12.7
罪が掟を利用し
2008.12.14
天から降ってきたパン
2008.12.21
主キリストのご降誕
2008.12.28
聖なる律法
2009.01.04
罪の正体
2009.01.11
命を与える霊
2009.01.18
撃ち破られてはならない
2009.01.25
惨めさからの救い
2009.02.01
主キリストに結ばれて
2009.02.08
備えられている時
2009.02.15
人となられた神の御子
2009.02.22
霊の思いは命と平和
2009.03.01
アッバ、父よ
2009.03.08
真実な人
2009.03.15
苦しみと栄光
2009.03.22
さあ、立ち上がりなさい
2009.03.29
虚無と希望