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罪が死をもたらす

説教要旨( 7月20日 朝礼拝 )
創世記 第 3章 1 ~ 7節
ローマの信徒への手紙 第 5章12 ~ 14節
倉橋康夫

 前の段落においてパウロは、神の救いのみ業について説明し、その救いに入れられている者の喜びを高らかに語りました(9~11節)。
 それに続く本日の個所は、<このようなわけで>と言いながら、罪と死について語り始めます。救いの喜びに浸りながら、罪と死について語らざるを得ないのです。<このようなわけで>、つまり、このような神の救いのみ業、主イエス・キリストによって和解と命を与えて下さった、そのみ業を思うならば、人間の罪と死の現実がどのようにして起こったかが分かる、と言います。人間の罪と死の現実を、救いの喜びの只中でこそ、深く考えることができる、ということでしょう。ある修道院の日常の挨拶に、「メメント、モリ」(死を記憶せよ)というものがあります。自分が死ぬべきものであることを忘れるな、ということです。これを日常の挨拶とし得るのは、神の恵みを確信しているから、救いを信じているから、こそです。
 扨てここで、聖書は、<一人の人によって罪が世に入り、罪によって死が入り込んだ>、と言います。<一人の人>とは、言うまでもなく、アダムのことです。併せて読んだ創世記 第3章が伝える出来事を連想させられます。そこには、アダムとイヴが蛇の唆しにより、神の禁止命令に背いて、神のようになれると言われる木の実を食べてしまう、という話が書かれています。蛇は言ったのです。<5それを食べると目が開け、神のように善悪を知るものとなる>、と。これは、全ての人間が持っている、生まれながらの罪の姿を説明する物語です。それは何よりも、神に背く人間の姿であり、また自分が神に取って代わろうとする傲慢な人間の姿です。そして、<死はすべての人に及んだ>、と言います。これは、<すべての人>のことであり、人間の現実なのだ、と言うのです。
 そこで、ユダヤ人から出されるであろう疑問を先取りして、律法との関連について触れます。アダムからモーセの間は、律法が与えられていない期間であり、人々は形の上では、<アダムの違反と同じような罪を犯さなかった>、と言えるかも知れません。つまり、アダムは神の掟を知らされておりながら、それに違反したけれども、その後の律法が与えられていない期間の人々は、律法に違反したというのではないからです。しかしながら、死はそれらの人々をも支配したのであり、罪は罪として厳然としてあったことを指し示している、とパウロは言うのです。死が全ての人に及んだ、全ての人が罪を犯したから、と言います。このように、罪によって全ての人に死が齎された、その真相は、アダムのあり方に指し示されているのです。
 ところが、そのアダムは、<来るべき方を前もって表す者>だった、と更に言います。<来るべき方>とは、言うまでもなく、主イエス・キリストのことです。アダムの姿は、罪と死の姿であり、罪によって死を招いてしまった姿です。ところがそれは、正に、主イエス・キリストの十字架を指し示しています。主の十字架に、罪によって齎された死の恐ろしさが示されています。神に見棄てられた者の死です。主の十字架は、「罪が死をもたらす」ことを如実に物語っているのです。
 けれども、その主の十字架は、私たち人間に与えられるべき死が、主イエス・キリストによって引き受けられていることを示します。この主の十字架を見上げる時、私たちは最早神に見棄てられて死ななくて良いことを知ります。パウロは、Ⅰコリント書 第15章で、主キリストの再臨の時について語り、そして<26最後の敵として、死が滅ぼされます。>と言います。罪が齎す死は、既に主キリストに引き受けられたのであり、私たちは神の赦しの中で生き、そして、死ねるのです。<最後の敵として>、死が滅ぼされる復活の時を待ち望むことができるのです。この希望を堅く心に留めつつ、与えられた信仰の歩みを全うしたい、と願います。
 

説教一覧(2008年度)

2008.04.06
不信心な者を義とする方
2008.04.13
わたしの食べ物
2008.04.20
福音の射程
2008.04.27
信仰の父アブラハム
2008.05.04
神の約束に生きる
2008.05.11
ここに水があります
2008.05.18
信仰によって強められ
2008.05.25
今の恵み
2008.06.01
聖霊によって、神の愛が
2008.06.08
あなたがたは、決して信じない
2008.06.15
まことの神であり、まことの人
2008.06.22
神の怒りからの救い
2008.06.29
向きを変えて、行きなさい
2008.07.06
神を喜びを誇る
2008.07.13
良くなりたいか
2008.07.20
罪が死をもたらす
2008.07.27
恵みの豊かさ
2008.08.03
恵みが支配する
2008.08.10
新しい命に生きる
2008.08.17
驚いてはならない
2008.08.24
神に属すること
2008.08.31
主と一体になって
2008.09.07
神に生きる
2008.09.14
あなたたちが救われるために
2008.09.21
自分自身を神に献げよ
2008.09.28
自由と服従
2008.10.05
賜物としての永遠の命
2008.10.12
あなたの中にある光
2008.10.19
新しい生き方
2008.10.26
この人たちに食べさせる
2008.11.2
わたしたちの本国
2008.11.9
恐れることはない
2008.11.16
父なる神さま
2008.11.23
永遠の命に至る食べ物
2008.11.30
神に背負われて行く道
2008.12.7
罪が掟を利用し
2008.12.14
天から降ってきたパン
2008.12.21
主キリストのご降誕
2008.12.28
聖なる律法
2009.01.04
罪の正体
2009.01.11
命を与える霊
2009.01.18
撃ち破られてはならない
2009.01.25
惨めさからの救い
2009.02.01
主キリストに結ばれて
2009.02.08
備えられている時
2009.02.15
人となられた神の御子
2009.02.22
霊の思いは命と平和
2009.03.01
アッバ、父よ
2009.03.08
真実な人
2009.03.15
苦しみと栄光
2009.03.22
さあ、立ち上がりなさい
2009.03.29
虚無と希望