主キリストを身にまとう
説教要旨( 7月 4日 朝礼拝 )
イザヤ書 第8章23節b~第9章6節
ローマの信徒への手紙 第13章11~14節
倉橋康夫
本日はロマ書の12節からに注目します。ここで、「夜は更けている」、暗さを増している、と言います。11節で<救いは近づいている>、と言いながら、ここでは、人間の世界の暗闇が、益々深刻になっている、と言うのです。まるで、現在の世界の有り様を言い当てているかのようです。
けれども、主イエス・キリストは、その暗闇に輝く光として、この世に来て下さいました。人間の世界の暗闇が、どんなに深刻であっても、そこに救いを齎すために来て下さったのです。併せて読んだ、イザヤ書 第9章は、<ひとりのみどりご>、<ひとりの男の子>が、暗闇に閉ざされた世界の救い主として誕生されることの預言です。この<ひとりのみどりご>・<ひとりの男の子>こそ、主イエス・キリストなのです。
パウロは、人間の世界の暗闇の深さは、夜明けの近いことを意味する、と言います。<日は近づいた>、と。<近づいた>とは、「すぐそこに来た」ことを意味します。主イエス・キリストと共に夜明けは来た、と言って良いということです。だから、<闇の行いを脱ぎ捨て>るべきだ、と言います。ここで、パウロは、<闇の行い>を説明して、<酒宴と酩酊、淫乱と好色>、と並べ、そして、それらをまとめて、<争いとねたみ>と言います。そして、それらは結局、<欲望を満足させよう>とすることに他ならない、自分の欲望のままに事を運ぼうとすることだ、と言います。
しかしパウロは、そのような<闇の行い>を捨てて、<光の武具を身に着けましょう。>、と言い、<日中歩むように、品位を持って歩もう>、と言います。そして、そのような生き方は、<主イエス・キリストを身にまと>うことである、と結論づけるのです。確かに、人間の世界は暗闇に覆い尽くされているように思われます。けれども、私たちは、その只中に、既に射し込んでいる光を見い出しているので、<光の武具>を身に着けようと言うのです。武具は、本来戦いのための道具です。キリスト者が、この世を生き抜くためには、様々な戦いがあります。しかし、ここでは何よりも、闇の行いに加担しないための戦いであり、自分の欲望に負けないための戦いです。誰かを打ち負かす、というのではなく、信仰者として、キリスト者としての歩みを堅くすることです。
このように、光の武具を身に着けて生きる、とは、品位をもって歩むということになる、とも言います。キリスト者としての品位、品格のことです。そして、キリスト者の品位は、「主キリストを身にまとう」ことに由来する、と言えます。イエス・キリストによって装うのです。自分と出会う人、自分を見る人が、主キリストと出会い、主キリストを見ることになる、そのように生きることです。
そこで最後に、パウロは、<欲望を満足させようとして、肉に心を用いてはなりません。>、と釘を刺します。「肉の予めの考慮をするな」(直訳)、という意味です。肉の考えを予めして置くようなことをしてはならない、と言うのです。肉の思いは、神に逆らい、背く方向へと向かいます。神の予めのお考え、つまり、神の摂理に信頼を置くことができず、肉の企て・人間的な計算に頼って生きようとするのです。
しかしながら、本来、予めの考えは、神の側にあります。ですから、神のご計画に信頼を寄せて、神の許に立ち帰ることが肝要です。そして、それは、「主キリストを身にまとう」者に、立ち帰ることに他なりません。ガラテヤ書に、<洗礼を受けてキリストに結ばれたあなたがたは皆、キリストを着ている>(3 : 27)とあります。私たちは既に「主キリストを身にまとう」者とされていることを、心深くに刻み付けたいと思います。今日から新たに、「主キリストを身にまとう」者として歩み始めましょう。
説教一覧(2010年度)
2010.04.04
あの方は復活された
2010.04.11
近くにおられる神
2010.04.18
偽りのない愛
2010.04.25
祝福を祈る
2010.05.02
すべての人と平和に
2010.05.09
子や孫たちにも教えなさい
2010.05.16
復讐からの解放
2010.05.23
聖霊の証印を受けて
2010.05.30
寄留者
2010.06.06
良心に従って
2010.06.13
愛は律法を全うする
2010.06.20
神の子イエス
2010.06.27
今はどんな時か
2010.07.04
主キリストを身にまとう
2010.07.11
あなたは神に出会う
2010.07.18
あなたは何者か
2010.07.25
我らは主のもの
2010.08.01
愛に従って歩む
2010.08.08
神の国は義と平和と喜び
2010.08.15
主こそ神、ほかに神はいない
2010.08.22
神のみ前における確信
2010.08.29
生ける希望
2010.09.05
忍耐と慰め
2010.09.12
逃れて、生き延びる
2010.09.19
望みの源なる神
2010.09.26
神の福音のために
2010.10.03
我らの誇り
2010.10.10
親子
2010.10.17
主が結ぶ契約
2010.10.24
主キリストの祝福を携えて
2010.10.31
過越の小羊
2010.11.07
天の財産を受け継ぐ
2010.11.14
十戒
2010.11.21
自分自身を知る
2010.11.28
平和の源なる神
2010.12.05
主にあって よろしく
2010.12.12
大いなる栄光
2010.12.19
メシアはどこに
2010.12.26
教会から教会へ
2011.01.02
善にさとく、悪には疎く
2011.01.09
栄光が唯一の神に
2011.01.16
あなたの心に留め、語り聞かせる
2011.01.23
初めに言があった
2011.01.30
味わい、見よ、主の恵み深さを
2011.02.06
光の証人
2011.02.13
試みと誘惑
2011.02.20
神によって生まれる
2011.02.27
独り子なる神
2011.03.06
主の道をまっすぐにせよとの声
2011.03.13
神の宝―選ばれた者たち
2011.03.20
この方こそ神の子
2011.03.27
何を求めているのか