ホーム | 説教 | 説教(2010年度) | あなたは何者か

あなたは何者か

説教要旨( 7月 18日 朝礼拝 )
詩編 第95編 1~ 3編
ローマの信徒への手紙 第14章 1~12節
倉橋康夫

 ロマ書の第14章以下の部分は、教会生活に集中して語られます。最初に、<信仰の弱い人を受け入れなさい>と勧め、<弱い人は野菜だけを食べている>、と言います。どのような考えに基づいた菜食主義者かは、不明ですが、食べ物に制限を設けることによって、自分の信仰が他の人より優れている、と考える人のことです。また、少し先の5節に、<ある日を他の日よりも尊ぶ人>、という表現があります。或る人は、「自分は、日曜日にきちんと礼拝に出ているから、間違いのないキリスト者だ」と考える人を当てはめています。食べる物を制限してそれを守る、教会に行くべき日を遵守するという生き方です。しかしそこには、一種の律法主義があり、本末転倒が起こっています。毎日曜日、きちんと礼拝に来るから間違いのないキリスト者だ、と言うのではなく、間違いなくキリスト者であるから、主の日には礼拝に集まって来るのです。
 けれども、パウロは、決して弱い人を批判し、追い詰めよう、と考えているわけではありません。彼は、<信仰の弱い人を受け入れなさい>、と言います。そして、<その考えを批判してはなりません>、と言うのです。
 ところで、パウロは、人間関係における不幸な事態について、軽蔑したり裁いたりすることの問題を指摘しています。<食べる人は、食べない人を軽蔑してはならないし、また、食べない人は、食べる人を裁いてはなりません。神はこのような人をも受け入れられたからです。>(3節)、と。
 <食べる人>とは、食べ物に囚われない、自由に考える人のことです。反対に、<食べない人>とは、食べ物を制限し、野菜だけしか食べず、肉を食べない人のことを指しています。原理・原則に従って生きる人です。この両者には、対立が生じ易いのです。食べる人は、食べない人を軽蔑するし、食べない人は、食べる人を裁く、と言います。食べる人・自由な人から見るならば、原理・原則に縛られる生き方は愚かに見えるでしょう。一方、食べない人つまり原理・原則に従うことを大切にする人からするなら、食べる人はいい加減な人間に思えるのです。このようにして、軽蔑したり、裁いたりすることになります。けれども、パウロは、そうであってはならない、と言います。軽蔑し合い裁き合っているようでは、教会が成り立たない、主キリストの体としての豊かさを失うことになるからです。
 パウロは、<神はこのような人をも受け入れられたから>、と言います。<このような人>とは、事柄そのものから考えるならば、食べる人・強い人と食べない人・弱い人の双方でしょう。そして、私たちの現実・実態から言っても、両方が混じり合っているのです。
 そこでパウロは、<他人の召し使いを裁くとは、いったいあなたは何者ですか>(4節a)、と問いかけます。あなたがたが裁く相手は、他人の召し使いであって、あなたの召し使いではない、と言うのです。つまり、神の召し使いである者を、あなたは自分が主人であるかのように裁くのか、ということです。召し使いとは、家僕のことです。教会に集められたひとり1人は、神の家の召し使いです。
 併せて読んだ詩編 第95編1 ~ 3節は、何ものをもっても換えることのできない、比類なき主なる神に対する讃美です。唯一の主なる神を、限りなく褒め称えています。この方が自分の主人であることを、喜び謳っているのです。この唯一なる神を主人としている兄弟姉妹に対して、まるで自分が主人であるかのように振る舞うことは許されません。この主人の守りと導きの下に、教会員ひとり1人が夫々の信仰の歩みを進めます。この信頼関係によって、教会は立つのです。「あなたは何者か」 あなたが、誰かの主人であってはならないのです。
 

説教一覧(2010年度)

2010.04.04
あの方は復活された
2010.04.11
近くにおられる神
2010.04.18
偽りのない愛
2010.04.25
祝福を祈る
2010.05.02
すべての人と平和に
2010.05.09
子や孫たちにも教えなさい
2010.05.16
復讐からの解放
2010.05.23
聖霊の証印を受けて
2010.05.30
寄留者
2010.06.06
良心に従って
2010.06.13
愛は律法を全うする
2010.06.20
神の子イエス
2010.06.27
今はどんな時か
2010.07.04
主キリストを身にまとう
2010.07.11
あなたは神に出会う
2010.07.18
あなたは何者か
2010.07.25
我らは主のもの
2010.08.01
愛に従って歩む
2010.08.08
神の国は義と平和と喜び
2010.08.15
主こそ神、ほかに神はいない
2010.08.22
神のみ前における確信
2010.08.29
生ける希望
2010.09.05
忍耐と慰め
2010.09.12
逃れて、生き延びる
2010.09.19
望みの源なる神
2010.09.26
神の福音のために
2010.10.03
我らの誇り
2010.10.10
親子
2010.10.17
主が結ぶ契約
2010.10.24
主キリストの祝福を携えて
2010.10.31
過越の小羊
2010.11.07
天の財産を受け継ぐ
2010.11.14
十戒
2010.11.21
自分自身を知る
2010.11.28
平和の源なる神
2010.12.05
主にあって よろしく
2010.12.12
大いなる栄光
2010.12.19
メシアはどこに
2010.12.26
教会から教会へ
2011.01.02
善にさとく、悪には疎く
2011.01.09
栄光が唯一の神に
2011.01.16
あなたの心に留め、語り聞かせる
2011.01.23
初めに言があった
2011.01.30
味わい、見よ、主の恵み深さを
2011.02.06
光の証人
2011.02.13
試みと誘惑
2011.02.20
神によって生まれる
2011.02.27
独り子なる神
2011.03.06
主の道をまっすぐにせよとの声
2011.03.13
神の宝―選ばれた者たち
2011.03.20
この方こそ神の子
2011.03.27
何を求めているのか