親子
説教要旨( 10月10日 夕礼拝 )
エフェソの信徒への手紙 第6章1~4節
上田容功
今夕の聖書箇所には、信仰に招き入れられた家庭における親子の姿、主イエスに結ばれて生かされている親子の姿が描き出されています。
1節には「子供たち、主に結ばれている者として両親に従いなさい」とあり、続く2節には「父と母を敬いなさい」とあります。十戒の第五の戒めである「あなたの父母を敬え」からの引用です。十戒の第一戒から第四戒は、神を神とする戒めです。第五戒から第十戒は、人と人との関係の戒めです。人間関係の戒めの始めに挙げられているのが、「あなたの父母を敬え」です。
父と母を敬うことが、何故、人間相互の関係の戒めの始めに挙げられているのでしょうか。両親は、あらゆる犠牲を払ってまでも、私たちを愛し、大切に育ててくれました。更にまた、私たちに、自分の命が神から与えられた、ということを教えてくれるのが、父と母です。神は両親を通し、私たちに命を与えました。両親を通し出来事となった神の創造の御業に直接的に触れるのです。信仰者は、「あなたの父母を敬え」との戒めから、神の創造の御業を讃美することに導かれます。そして、父と母を敬うということは、両親の背後におられる神を敬う、ということに通じていきます。
4節において「父親たち、子供を怒らせてはなりません。主がしつけ諭されるように、育てなさい」と語られています。ここには、神の代理人としての両親の責任が示されています。子供たちをしつけ諭すことです。教育であり、信仰の継承です。
イスラエルの民は、信仰を継承することを、とても大切にしていた民です。主なる神はイスラエルの民をエジプトの地での奴隷の苦しみから導き出されました。その主が成し遂げてくださった救いの御業である出エジプトの出来事を子孫に語り伝えます。出エジプトの出来事は、イスラエルの民のアイデンティティーを形づくった決定的な出来事です。申命記は語ります。「子供たちに繰り返し教え、家に座っているときも道を歩くときも、寝ているときも起きているときも、これを語り聞かせなさい」(6:7)。主なる神の救いの御業を次の世代の子供たちに語り伝えます。出エジプトの救いの出来事を語り継ぐことによって、そして、神の救いの物語に生かされるとき、自分たちであり続けるのです。
イスラエルの民のアイデンティティーを形づくる決定的な出来事が出エジプトであるとすれば、キリスト者のアイデンティティーにとって決定的な出来事は、イエス・キリストの十字架の出来事です。主なる神がイスラエルの民をエジプトの国における奴隷状態から導き出したように、神は、キリストの十字架を通し、私たちを、罪の中から救い出されました。キリスト者とは何者か、と一言で言い表すとすれば、主の十字架によって罪が贖われた者、であります。だからこそ、キリストの十字架において示された神の救いの御業を子供たちに物語ることが、信仰に招き入れられた親に委ねられています。
4節に「主がしつけ諭されるように、育てなさい」と記されています。言葉をもって、子供たちを励まし、教えます。同時にまた、子供たちを訓練します。「主が」という言葉が決定的な意味を持ちます。私たちの救い主であられるキリストは、神の御子でありながら、この世に赴き、十字架の死に至るまで謙られました。十字架の死に至るまで、父なる神の御心に従順であられた御子です。私たちのために御自分の命を捧げ、最後まで仕えることによって、私たちを救い、教え、励ましてくださります。父母として、また、子どもとしても、罪赦された者として、神を敬うために、礼拝に招かれていることに感謝しつつ、主の十字架の出来事を次世代に語り継ぐ信仰共同体であり続けることができるように祈り求めたい思います。
説教一覧(2010年度)
2010.04.04
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2010.05.02
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2010.05.09
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2010.05.16
復讐からの解放
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2010.06.06
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親子
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