信じる
説教要旨( 10月 30日)
イザヤ書 第52章7~10節
マルコによる福音書 第1章14~15節
佐藤智子
「ヨハネが捕えられた後」、イエスさまは宣教活動を始められたと、マルコは証言していました。洗礼者ヨハネが「捕えられた」ということは、殉教の死ということを意味しています。「捕えられた」と訳されている言葉は、マルコによる福音書の多くのところで「引き渡された」と訳されており、逮捕されて裁判もしくは処刑のために引き渡されることを意味し、イエスさまの十字架の死を暗示する言葉として理解されています。イエスさまの宣教活動の始まりの時は、ヨハネが引き渡された後であった、そう伝えることによって、私たちにイエスさまの宣教活動の終わりが十字架の死であることを、暗示しているかのようです。
「ヨハネが捕えられた後」、イエスはガリラヤに行」かれました。洗礼者ヨハネは、人里離れた荒れ野で、イエスさまの到来を証ししましたが、イエスさまはガリラヤで宣教活動を始められたのです。人々が日常生活を営まれる場所で、イエスさまは神の福音を宣べ伝えられました。
「福音」、喜びの音ずれという言葉は、神の独り子でおられるイエス・キリストの生と死、復活の出来事を示しています。「罪からの救い」という、神の子イエス・キリストが私たちに、この世界にもたらしてくださった喜びの知らせ、喜びの音ずれ、それが「福音」であり、イエスさまは、福音の内容ということができます。しかし、この14節では、イエスさまご自身が「福音」を宣べ伝えたとあります。宣教する者と、宣教の内容が同じ、というちょっと奇妙なことになっています。しかも、「神の」という言葉で形容されていました。 マルコによる福音書は証言します。神からこの地上に送られてきた福音、届けられた喜びの音ずれは、イエス・キリストであり、イエスさまご自身が世にご自分を示された、と。
そして福音書記者マルコはイエスさまの言葉として、次のことを記しました。「時は満ち、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさい」。
「時が満ちた」、その時である、と言われました。特別な「時」を意味しています。「神の国」と訳されている言葉は、「神が支配する」という事実を意味しており、「神の支配」とも訳すことができます。「近づいた」という言葉は、「神の国が来た」と訳すことができます。「今、この場所に、神の支配がある」と、私たちが、日常生活を送るところに来て、イエスさまはそうお語りになるのです。私たちが悩み、苦しみ、涙を流すそのところで、身体や心に痛みを覚えるそのところで、病に伏すそのところで、イエスさまはお語りくださる。あなたがたは、神の支配のうちにいるのだと。神の愛が今、ここで、あなたがたに注がれていると、私たちにお語りくださるのです。
そして、続けて次の言葉が記されていました。「悔い改めて福音を信じなさい」。「悔い改める」という言葉は、方向転換を意味している言葉です。しかし、さらに踏み込むようにして「福音を信じなさい」という言葉を、マルコによる福音書は伝えています。福音、喜びの音ずれ、その響きの源であるイエスさまが、福音を信じなさいと語られました。それは、福音という、その響きの中に、身を投じることを示しています。しかし投じられたその身を、私たちを、イエスさまが受け止めてくださる。私たちは福音に基づいて、その響きの中に、生きることが求められているのです。神の支配のただ中で、生きる。それが「福音を信じる」ということなのです。
ヨハネが捕えられた後、イエスさまは私たちのところに来て、神の福音を宣べ伝えてくださいました。「時は満ち、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさい」。福音の響きのうちに、生きるものとされたいと願います。
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2011.05.01
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2011.10.02
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信じる
2011.11.06
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キリストの勝利
2011.11.20
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2011.12.04
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2011.12.25
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