神の恵みの善い管理者
説教要旨(1月8日 朝礼拝)
エレミヤ書 第31編31 ~ 34節/
ペトロの手紙一 第4章7 ~ 11節
上田容功
ペトロの手紙を読んだ信仰者たちは、キリスト教信仰に理解を示さない周囲の人たちからの悪意や中傷に悩まされていました。苦難の中で、ひたすら耐え忍ぶしかなかった人たちにとって、教会は唯一の安心できる場所であったと思います。そのような信仰者たちに対して、ペトロの手紙は語りかけます。「万物の終わりが迫っています。だから、思慮深くふるまい、身を慎んで、よく祈りなさい。何よりもまず、心を込めて愛し合いなさい」(7~9節)。何かに陶酔することなく祈りに励むこと、心を込めて愛し合うことが語られています。過酷な状況の中にあっても、神に思いを向け、互いの愛によって支え合い、励まし合いつつ迫害に耐え忍んでいた信仰者たちの姿が浮かび上がってきます。
教会の中での兄弟姉妹愛を、ペトロの手紙は印象的な言葉で表現します。「愛は多くの罪を覆う」(8節)。「愛は多くの罪を覆う」とは、愛は他人の罪を赦す、ということであり、他人が自分に対してなした悪事を思い出さない、ということでもあると思うのです。コリントの信徒への手紙一第13章において、使徒パウロは愛について語っています。「すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐える」。愛とは感情的なものではなく耐え忍ぶことです。愛する者は相手の罪を認めても、責めることなく、傷口を包帯で包むように、それを愛によって包み込むのです。私たちが主にある兄弟姉妹を心から愛するとき、その力の源となるのは、神が私たちの罪を覆い、赦してくださったという神の愛です。エレミヤ書第31章には、神はイスラエルの罪を「再び心に留めることはない」という預言が語られています。神はイスラエルを愛するがゆえにその罪を心に留めないのです。
この段落において、ペトロの手紙はもう一つのことを語ります。「あなたがたはそれぞれ、賜物を授かっているのですから、神のさまざまな恵みの善い管理者として、その賜物を生かして互いに仕え合いなさい」(10節)。恵みの賜物は、神からの贈り物です。私たち一人ひとりに、その人ならではの賜物が与えられています。人と比べるのではなく、あなたならではの賜物を生かしなさいとのメッセージを、聖書は私たちに告げるのです。
恵みの賜物をどのように用いるのでしょうか。ペトロの手紙は語ります。「神のさまざまな恵みの善い管理者として、その賜物を生かして互いに仕え合いなさい」。恵みの賜物は、自分自身のために使うものではなく互いに仕え合うためのものです。各人が受けた恵みの賜物を教会の中で働かせ、それをもって信仰共同体に仕えるために一人ひとりにそれぞれの賜物が与えられているのです。このことを、ペトロの手紙は「恵みの賜物の管理者」と言い表しています。
与えられている恵みの賜物を通して、神の救いのご計画に沿って、神ご自身が働かれる、このことを信じるのが信仰者の教会生活です。私たちが教会において奉仕の業に携わるときに思い起こしたいことは、私たちが自分自身の力で奉仕の業をなし、自分の才能によって働くのではなく、神が働かれるということです。神に信頼して、与えられた務めを誠実になすとき、神ご自身が働いてくださっていることを実感できるのではないでしょうか。
私たちの奉仕は神の御栄光をたたえるためです。仕えられるためではなく仕えるために来た、とおっしゃられた主の御生涯は私たちの救いのために、ご自身のすべてを捧げて、最後まで仕えられた御生涯でありました。十字架でご自身の命を捧げられた主キリストが裏打ちしてくださるからこそ、与えられた賜物を生かしつつ、互いに仕え合い、私たちの奉仕の業の力の源であるイエス・キリストの父なる神に栄光と力がありますように、と賛美を捧げるのです。
説教一覧(2011年度)
2011.04.03
わたしに従いなさい
2011.04.10
隅の親石
2011.04.17
ぶどう酒になった水
2011.04.24
驚くべき主の御業
2011.05.01
新しき神の家
2011.05.08
神を畏れ、王を敬え
2011.05.15
水と霊とによって生まれる
2011.05.22
永遠の命と裁き
2011.05.29
はじまり
2011.06.05
あの方は栄え、わたしは衰える
2011.06.12
一同は聖霊に満たされ
2011.06.19
神をほめたたえる幸い
2011.06.26
永遠の命に至る水
2011.07.03
まことの礼拝
2011.07.10
その傷によって、あなたがたは癒された
2011.07.17
神の備え給う道
2011.07.24
み言葉を信じて
2011.07.31
あなたはわたしの愛する子
2011.08.07
命の恵みを共に受け継ぐ
2011.08.14
主イエスに力を与えられ
2011.08.21
試みを受けられた主
2011.08.28
神と等しい方
2011.09.04
今やその時
2011.09.11
祝福を受け継ぐ
2011.09.18
主イエスについての証し
2011.09.25
神からの誉れ
2011.10.02
命のパンのしるし
2011.10.09
父である神をたたえる
2011.10.16
わたしだ。恐れることはない。
2011.10.23
苦難と希望
2011.10.30
信じる
2011.11.06
天への凱旋
2011.11.13
キリストの勝利
2011.11.20
短い信仰告白
2011.11.27
朽ちない食物
2011.12.04
主イエスのもとへ
2011.12.11
かつてと今
2011.12.18
主イエスによって生きる
2011.12.25
飼い葉桶の乳飲み子
2012.01.01
去るか留まるか
2012.01.08
神の恵みの善い管理者
2012.01.15
時を支配し給う神
2012.01.22
わたしについて来なさい
2012.01.29
主の真実によって
2012.02.05
主キリストは神の御許から
2012.02.12
勝利を約束されている苦難
2012.02.19
主イエスの行かれる所
2012.02.26
生ける信仰
2012.03.04
主イエスへの態度決定