キリストの勝利
説教要旨(11月 13日 朝礼拝)
詩編 第139編1~12節
ペトロの手紙一 第3章18~22節
上田容功
今朝の段落、19~20節において述べられていることは、主イエスが、十字架で死んで復活された後、捕らわれていた霊たちのところとへ行って宣教されたということであります。20節では、この霊についての説明がなされています。「この霊たちは、ノアの時代に箱舟が造られていた間、神が忍耐して待っておられたのに従わなかった者です」。ノアが箱舟を造っているとき、神の言葉に聞き従わず、洪水によって滅ぼされてしまった人たちと考えられます。ペトロの手紙は、イエス・キリストは、そのような不従順な人々のためにも十字架で死なれた、復活されたキリストは、天に挙げられる途上で、捕らわれていた霊たちのところに赴かれ宣教された、と伝えます。獄に入れられている不従順な霊たちがどこに捕らわれているのか、聖書は、これ以上、語っていません。決定的なことは、キリストが、捕われていた者たちのところに赴かれ宣教された、ということであります。このことを、教会は、使徒信条において「十字架につけられ、死にて葬られ、陰府にくだり」と告白してきました。
陰府とは、旧約聖書では、死んだ人たちが行くところと考えられていました。「墓の中であなたの慈しみが/滅びの国であなたのまことが/語られたりするでしょうか。闇の中で驚くべき御業が/忘却の地で恵みの御業が/告げ知らされたりするでしょうか」(詩編88)。陰府、それは、暗闇に包まれた忘れの国です。何の声も届かず、誰からも覚えられない虚無の世界にまで、イエス・キリストは赴き、すでに死んだ者たちにも宣教された、とペトロの手紙は語るのです。陰府に象徴されるような忘却の地から、私たちを救われるために、十字架で御自身を捧げられました。
陰府にくだられたキリストが、罪の結果としての死に捕えられている者たちに対して宣べ伝えられたこと、それは、死に対する勝利です。主イエス・キリストは、十字架での死によって、最後の敵である死をも打ち破られました。死すべき人間が、主イエスの十字架の死によって罪赦され、永遠の命へと至る恵みに与る者とされたのです。死に勝利されたキリストがおられるところでは、全くの闇の中にさえも光がもたらされ、誰の声も聞こえないような忘れの国でさえも、勝利の鐘が高らかに鳴り響いています。天上においても、地においても、また地の下においても、キリストの復活の力が及ばないところはないのです。
そのようなイエス・キリストの復活の力に与るのが洗礼です。私たちは、洗礼を通してキリストの勝利に与っています。ペトロの手紙は、ノアとその家族が水の中を潜り抜けて救われたように、あなたがたキリスト者も救いの水を通って救われている、と語ります。荒波が押し寄せる中、ノアの箱舟の中だけは安全であったように、洗礼の恵みは、この世の荒波の中に生きている信仰者にとって、唯一つの安全なところです。そして、洗礼とは、水に沈められて汚れが取り除かれるだけではなく、私たちを全人格的に新しく生まれされる救いの出来事です。このことを、ペトロの手紙は、洗礼は、「神に正しい良心を願い求めることです」と言い表しています。洗礼の水をくぐり抜け救いに与っているキリスト者は、少しのやましいところなく、神の御前に安らぎを得ているのです。
洗礼を通しキリストの勝利に与っている、このことが、深刻な中にいる私たちに励ましを与えます。キリストの勝利、それは主の十字架において、すでに起きた救いの出来事です。私たちは、洗礼を通し、全宇宙の主であるイエス・キリストの勝利に列に連なっています。私たちの存在を脅かす価値観が、大洪水のようにして襲いかかろうとも、私たちは何も恐れる必要はないのです。
説教一覧(2011年度)
2011.04.03
わたしに従いなさい
2011.04.10
隅の親石
2011.04.17
ぶどう酒になった水
2011.04.24
驚くべき主の御業
2011.05.01
新しき神の家
2011.05.08
神を畏れ、王を敬え
2011.05.15
水と霊とによって生まれる
2011.05.22
永遠の命と裁き
2011.05.29
はじまり
2011.06.05
あの方は栄え、わたしは衰える
2011.06.12
一同は聖霊に満たされ
2011.06.19
神をほめたたえる幸い
2011.06.26
永遠の命に至る水
2011.07.03
まことの礼拝
2011.07.10
その傷によって、あなたがたは癒された
2011.07.17
神の備え給う道
2011.07.24
み言葉を信じて
2011.07.31
あなたはわたしの愛する子
2011.08.07
命の恵みを共に受け継ぐ
2011.08.14
主イエスに力を与えられ
2011.08.21
試みを受けられた主
2011.08.28
神と等しい方
2011.09.04
今やその時
2011.09.11
祝福を受け継ぐ
2011.09.18
主イエスについての証し
2011.09.25
神からの誉れ
2011.10.02
命のパンのしるし
2011.10.09
父である神をたたえる
2011.10.16
わたしだ。恐れることはない。
2011.10.23
苦難と希望
2011.10.30
信じる
2011.11.06
天への凱旋
2011.11.13
キリストの勝利
2011.11.20
短い信仰告白
2011.11.27
朽ちない食物
2011.12.04
主イエスのもとへ
2011.12.11
かつてと今
2011.12.18
主イエスによって生きる
2011.12.25
飼い葉桶の乳飲み子
2012.01.01
去るか留まるか
2012.01.08
神の恵みの善い管理者
2012.01.15
時を支配し給う神
2012.01.22
わたしについて来なさい
2012.01.29
主の真実によって
2012.02.05
主キリストは神の御許から
2012.02.12
勝利を約束されている苦難
2012.02.19
主イエスの行かれる所
2012.02.26
生ける信仰
2012.03.04
主イエスへの態度決定