勝利を約束されている苦難
説教要旨(2月12日 朝礼拝)
マラキ書 第3章1~5節
ペトロの手紙一 第4章12~19節
上田容功
与えられた段落において、ペトロの手紙は、これまでの箇所で繰り返されてきた「苦難」のテーマを再び取り上げます。14節には「キリストの名のために非難され」とあります。16節でも「キリスト者として苦しみを受けるのなら」と言われています。ペトロの手紙が書かれたとき、キリスト者として生きることは困難な時代でありました。また、いつの時代でも、主イエスを信じ、キリストを証ししつつ生きようとするとき、苦難は避けられないものです。
このような苦難の中で、何が支えになるのでしょうか、ペトロの手紙は、苦難について2つのことを語ります。一つは、「キリストの苦しみに与れば与るほど喜びなさい」との逆説的な喜びが語られておりますように、キリストの名のために苦しみを受けるとき、十字架でのキリストの苦しみに与るのであり、私たちのために苦しまれた主と共にあることになる、と言うのです。キリストの名のゆえに経験する苦難を通して、キリストとの深い交わりに入れられ、主と一つに結ばれるのです。神にあって生きていこうとする者は、多くの困難にさらされます。しかし、苦難を通して、主の十字架の恵みに与らせていただくのです。そして、苦難においてキリストと一つに結ばれることを通して、栄光のキリストとも一つに結ばれるのです。キリストのみ名のために苦しみを受けるなら、その人の上には神の栄光が留まり輝いているのです。
ペトロの手紙は、17節において、キリストの名のための苦難は喜びであることの、もう一つの理由を示します。「今こそ、神の家から裁きが始まる時です」。教会が、現在経験している迫害は、神が救いを完成させる終末の始まりである、と言うのです。終わりの日に先立って、選ばれた民から裁きが始められるという旧約の預言の成就として、イエス・キリストが再び来られる終わりの日に先立ち、「神の家」である教会から裁きが始められる、とペトロの手紙は語るのです。
ここでの「時」とは、決定的な意味での時を意味します。今や、信仰者が受けている苦しみと共に、神がお定めになられた決定的な時が始まったのです。信仰者が、今経験している苦難は、救いの完成が近づいていることのしるしです。ペトロの手紙は、苦しみの只中に置かれている信仰者に、困難や苦難を経験すればするほど救いが近づいたと思いなさい、と励ますのです。
19節に「真実であられる創造主」とあります。創造主なる神は、天と地を造られ、この世界のすべてをご支配し、完成へと導いておられます。また、私たちを創造し、十字架の恵みによって罪の中から救い出し、創造の御業を完成するために、私たちを「神の国」へと生まれ出でさせようとしているのです。神は真実であられます。私たちを「神の国」へと導き、始めの目的を最後まで達成されるのです。キリストの御名のために受けている苦しみは、終わりの日に到来する「神の国」へと生まれ出るための産みの苦しみです。「神の国」が到来し、すべてが新しくされる、その大いなる喜びに与る前の苦しみなのです。
来るべき「神の国」が到来するまでの日々、この地上における苦難は続きます。その中でも、キリストを信じる者は、主の十字架の死と復活によって罪と死が克服されたという主イエスの勝利に与りながら歩ませていただいています。キリストと一つに結ばれ、キリストのものとされている、いつかは、苦難を越えて、必ず、喜びに満ち溢れた「神の国」へと生まれ出る、このことを信じているのが私たちの信仰です。だからこそ、苦しみの中にあっても、希望を失わずに生きることができるのです。今、受けている苦しみを、創造主なる神にすべてを委ね、主にあって感謝のうちに歩みたいと願います。
説教一覧(2011年度)
2011.04.03
わたしに従いなさい
2011.04.10
隅の親石
2011.04.17
ぶどう酒になった水
2011.04.24
驚くべき主の御業
2011.05.01
新しき神の家
2011.05.08
神を畏れ、王を敬え
2011.05.15
水と霊とによって生まれる
2011.05.22
永遠の命と裁き
2011.05.29
はじまり
2011.06.05
あの方は栄え、わたしは衰える
2011.06.12
一同は聖霊に満たされ
2011.06.19
神をほめたたえる幸い
2011.06.26
永遠の命に至る水
2011.07.03
まことの礼拝
2011.07.10
その傷によって、あなたがたは癒された
2011.07.17
神の備え給う道
2011.07.24
み言葉を信じて
2011.07.31
あなたはわたしの愛する子
2011.08.07
命の恵みを共に受け継ぐ
2011.08.14
主イエスに力を与えられ
2011.08.21
試みを受けられた主
2011.08.28
神と等しい方
2011.09.04
今やその時
2011.09.11
祝福を受け継ぐ
2011.09.18
主イエスについての証し
2011.09.25
神からの誉れ
2011.10.02
命のパンのしるし
2011.10.09
父である神をたたえる
2011.10.16
わたしだ。恐れることはない。
2011.10.23
苦難と希望
2011.10.30
信じる
2011.11.06
天への凱旋
2011.11.13
キリストの勝利
2011.11.20
短い信仰告白
2011.11.27
朽ちない食物
2011.12.04
主イエスのもとへ
2011.12.11
かつてと今
2011.12.18
主イエスによって生きる
2011.12.25
飼い葉桶の乳飲み子
2012.01.01
去るか留まるか
2012.01.08
神の恵みの善い管理者
2012.01.15
時を支配し給う神
2012.01.22
わたしについて来なさい
2012.01.29
主の真実によって
2012.02.05
主キリストは神の御許から
2012.02.12
勝利を約束されている苦難
2012.02.19
主イエスの行かれる所
2012.02.26
生ける信仰
2012.03.04
主イエスへの態度決定