かつてと今
説教要旨(12月11日)
ゼカリヤ書 第14章4~9節
ペトロの手紙一 第4章1~6節
上田容功
与えられた段落では、この手紙の受取人である信仰者たちに対して、励ましの言葉が語られています。「キリストが肉に苦しみをお受けになられたのと同じ心構えで武装しなさい」(1節)。「もはや人間の欲望にではなく神の御心に従って、肉における残りの生涯を生きなさい」(2節)。「肉における残りの生涯」をどのように生きるか、終わりの日における救いの現実を目の前にして、この地上での道のりを信仰者がどのように歩んでいくか、ということを、今朝の段落の御言葉は語ります。そのとき、ペトロの手紙は、信仰者たちにかつての生活を思い起こさせます。「かつてあなたがたは、異邦人が好むようなことを行い、好色、情欲、泥酔、酒宴、暴飲、律法で禁じられている偶像礼拝などにふけっていたのですが、もうそれで十分です」(3節)。ここで最後に挙げられているのが偶像礼拝です。このことは、神以外のものを神として崇める、この世のものを絶対的なものとするという偶像崇拝が、すべての不品行の源であるということを指し示していると考えられます。
ペトロの手紙は、信仰者たちに、自分の欲望を満足させる不品行な生活はもうやめたのではないか、もう十分ではないかと語りかけます。主の十字架の恵みによって罪赦され、新たな者に造りかえられたのがキリスト者です。神以外のものを神とする生活にピリオドが打たれ、過去の生活に別れを告げたのです。
イエス・キリストは肉において苦しみをお受けになられた。主は十字架の上でご自身の肉を裂かれ、血を流された。ここに私たちの救いの根拠があります。十字架の上でキリストが引き受けられた苦しみが、私たちの罪のための苦しみであったことを思うとき、私たちの信仰の歩みも変わってきます。ペトロの手紙は、肉における弱さを抱えて苦しむ私たちに、罪の赦しを得させる十字架の恵みに立ち戻るように勧めます。キリストが罪と戦い、苦しみを受け、十字架で御自身の命を捧げられた、その主の十字架の恵みによって残りの生涯における罪との戦いに備えなさいと励ますのです。キリストと同じ心構えで武装するとは、十字架に向かわれる主イエスが父なる神の御心に従順であられたように、神の御心に従って歩む生活です。神の思いに心を合わせて生きる、そのような歩みです。
それは、終わりの日を思いつつ、地上における残りの生涯を歩むということでもあります。信仰者は、キリストが救いを完成するために再び来られる日に心を向けて生きる者たちです。私たちは、以前は神なくして生きていた者です。滅びに定められて当然の私たちのために、主は十字架におかかりになられました。終わりの日を救いの完成の日として待ち望むことができるのは、主の十字架の恵みによるのです。
主が再び来られる前に、すでに死んでしまった者たちの信仰は無意味だったのではないか、という嘲りに苦しめられていた信仰者たちに、ペトロの手紙は語ります。「死んだ者たちにも福音が告げ知らされたのは、彼らが、人間の見方からすれば、肉において裁かれて死んだようでも、神との関係で霊において生きるようになるためなのです」(6節)。福音が告げ知らされた死者とは、福音を聞いて、それを信じて眠りについた信仰者たちです。神の御心に従って信仰を最後まで全うし、主の福音を信じて眠りについた信仰者の歩みは、決して失望に終わらない、この世における罪との戦いは決して無駄ではなかった、死がすべての終わりでなく、神にあって生きる者とされている、とペトロの手紙は語るのです。
私たちの人生に究極的な意味を与えるために主は再び来られます。このことを思うとき、この世における歩みも自ずと定まってきます。十字架の恵みに留まり続けることができるように祈り求めたいと思います。
説教一覧(2011年度)
2011.04.03
わたしに従いなさい
2011.04.10
隅の親石
2011.04.17
ぶどう酒になった水
2011.04.24
驚くべき主の御業
2011.05.01
新しき神の家
2011.05.08
神を畏れ、王を敬え
2011.05.15
水と霊とによって生まれる
2011.05.22
永遠の命と裁き
2011.05.29
はじまり
2011.06.05
あの方は栄え、わたしは衰える
2011.06.12
一同は聖霊に満たされ
2011.06.19
神をほめたたえる幸い
2011.06.26
永遠の命に至る水
2011.07.03
まことの礼拝
2011.07.10
その傷によって、あなたがたは癒された
2011.07.17
神の備え給う道
2011.07.24
み言葉を信じて
2011.07.31
あなたはわたしの愛する子
2011.08.07
命の恵みを共に受け継ぐ
2011.08.14
主イエスに力を与えられ
2011.08.21
試みを受けられた主
2011.08.28
神と等しい方
2011.09.04
今やその時
2011.09.11
祝福を受け継ぐ
2011.09.18
主イエスについての証し
2011.09.25
神からの誉れ
2011.10.02
命のパンのしるし
2011.10.09
父である神をたたえる
2011.10.16
わたしだ。恐れることはない。
2011.10.23
苦難と希望
2011.10.30
信じる
2011.11.06
天への凱旋
2011.11.13
キリストの勝利
2011.11.20
短い信仰告白
2011.11.27
朽ちない食物
2011.12.04
主イエスのもとへ
2011.12.11
かつてと今
2011.12.18
主イエスによって生きる
2011.12.25
飼い葉桶の乳飲み子
2012.01.01
去るか留まるか
2012.01.08
神の恵みの善い管理者
2012.01.15
時を支配し給う神
2012.01.22
わたしについて来なさい
2012.01.29
主の真実によって
2012.02.05
主キリストは神の御許から
2012.02.12
勝利を約束されている苦難
2012.02.19
主イエスの行かれる所
2012.02.26
生ける信仰
2012.03.04
主イエスへの態度決定