光の証人

説教要旨( 2月 6日 朝礼拝 )
イザヤ書 第40章 3~5節
ヨハネによる福音書 第 1章 6~8節
倉橋康夫

 本日のヨハネ福音書の個所は、前段とは違って、中心が「光」ではなく、<神から遣わされた1人の人>に移しています。<神から遣わされた1人の人がいた。>、と記されますが、「出現した」といった意味合いです。歴史的な出現、世界の内部での出現を意味します。それは、偶然のことではなく、神から遣わされたのです。
 この人は、「光」の到来に先立って、神から遣わされました。<その名はヨハネ>であり、<光について証しをするために来た>、と言います。「ヨハネ」という名は、「ヤハウェは恵み深い」という意味を持ちます。ルカ福音書 第1章の最後には、<80 幼子は身も心も健やかに育ち、イスラエルの人々の前に現れるまで荒れ野にいた。>、と記し、ヨハネの成長と生活を伝えています。このヨハネ福音書でも、第1章23節でヨハネ自身が<「わたしは荒れ野で叫ぶ声である。/『主の道をまっすぐにせよ』と。」>、と言うように、荒れ野に留まり、荒れ野の声としての活動に入っていきます。
 この荒れ野の声は、併せて読んだイザヤ書 第40章からの引用です。<3 呼びかける声がある。/主のために、荒れ野に道を備え/わたしたちの神のために、荒れ地に広い道を通せ。・・・・・>、と。荒れ野の声の使命は、主をお迎えするために、道備えをすることです。そこで、この荒れ野の声に徹するヨハネについて、<彼は証しをするために来た。>、と言います。ヨハネは、「神が恵み深い」ことを現し、生涯を通じて、神の恵みを指し示す使命を負っていました。そのことを示す仕方が、証しによってである、と言います。
 ヨハネの証しは、徹頭徹尾、「光」について語り、「光」を指し示すものでした。この「光」とは、前の段落から明らかなように、<神と共に>あり、<神であった>方、み子なる主イエス・キリストです。ここに、神の恵みについて語る場合の基本があります。神の恵みを指し示すには、光についての証しが中心なのです。神の恵みと言う場合、何よりも「光の到来」が意味するものに他ならないからです。
 それから、<また、すべての人が彼によって信じるようになるためである。>、と言います。彼を通じて「主イエス・キリスト」を信じるのです。信じる対象は、神以外にはいないのであり、ここでは、光そのもの、主イエス・キリストです。ヨハネにとって、<彼によって信じる>という出来事が起こる、ということ自体、神の与え給う光栄です。ここでの<すべての人>とは、「信仰に至る人は全て」を意味する、と理解して良いでしょう。
 ヨハネの使命は、主をお迎えするために、道備えをすることですが、具体的に何をしたかについて、マルコ福音書とルカ福音書は、次のように記しています。<洗礼者ヨハネが荒れ野に現れて、罪の赦しを得させるために悔い改めの洗礼を宣べ伝えた。>、と。「罪の赦しのために必要な悔い改めの洗礼」こそが、主をお迎えするための備えなのです。ヨハネは、主イエス・キリストを指し示し、<「見よ、世の罪を取り除く神の小羊」>(1 : 29)と言ったのです。我々がお迎えする方は、この人なのだ、と。
 <8 彼は光ではなく、光について証しをするために来た。>、と言います。証人は、自分が決して「光」そのものではないことを絶えず自覚しなければならないし、又、繰り返しそのことを語るべきです。私たちの信仰の生涯が、私は光ではない、と宣言しながら、しかし、絶えることなく「光」について証しをする、主イエス・キリストを証しする歩みとして貫かれるなら、これに優る幸いはありません。ヨハネがあくまでも「光の証人」に徹したように、私たちもまた「光の証人」として用いられる生涯を送り得るならば、喜びと感謝に満たされたものとなることでしょう。
 

説教一覧(2010年度)

2010.04.04
あの方は復活された
2010.04.11
近くにおられる神
2010.04.18
偽りのない愛
2010.04.25
祝福を祈る
2010.05.02
すべての人と平和に
2010.05.09
子や孫たちにも教えなさい
2010.05.16
復讐からの解放
2010.05.23
聖霊の証印を受けて
2010.05.30
寄留者
2010.06.06
良心に従って
2010.06.13
愛は律法を全うする
2010.06.20
神の子イエス
2010.06.27
今はどんな時か
2010.07.04
主キリストを身にまとう
2010.07.11
あなたは神に出会う
2010.07.18
あなたは何者か
2010.07.25
我らは主のもの
2010.08.01
愛に従って歩む
2010.08.08
神の国は義と平和と喜び
2010.08.15
主こそ神、ほかに神はいない
2010.08.22
神のみ前における確信
2010.08.29
生ける希望
2010.09.05
忍耐と慰め
2010.09.12
逃れて、生き延びる
2010.09.19
望みの源なる神
2010.09.26
神の福音のために
2010.10.03
我らの誇り
2010.10.10
親子
2010.10.17
主が結ぶ契約
2010.10.24
主キリストの祝福を携えて
2010.10.31
過越の小羊
2010.11.07
天の財産を受け継ぐ
2010.11.14
十戒
2010.11.21
自分自身を知る
2010.11.28
平和の源なる神
2010.12.05
主にあって よろしく
2010.12.12
大いなる栄光
2010.12.19
メシアはどこに
2010.12.26
教会から教会へ
2011.01.02
善にさとく、悪には疎く
2011.01.09
栄光が唯一の神に
2011.01.16
あなたの心に留め、語り聞かせる
2011.01.23
初めに言があった
2011.01.30
味わい、見よ、主の恵み深さを
2011.02.06
光の証人
2011.02.13
試みと誘惑
2011.02.20
神によって生まれる
2011.02.27
独り子なる神
2011.03.06
主の道をまっすぐにせよとの声
2011.03.13
神の宝―選ばれた者たち
2011.03.20
この方こそ神の子
2011.03.27
何を求めているのか