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慈愛に満ちた神

説教要旨(12月6日 朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙二 1:1-7
牧師 藤盛勇紀

 この手紙を記した使徒パウロは、短い挨拶の後、まずは父なる神への喜びと感謝に満ちた賛美の言葉を記します。キリストのために生きたパウロの後半生は、11章でも触れられているように艱難に次ぐ艱難と迫害に悩まされる人生でした。コリント教会についても、呆れ果てるほどの問題に満ち、パウロの労苦も尋常ではありませんでした。そんな中で、まず感謝をもって慈愛に満ちた神、慰めの神を讃えるのです。
 繰り返し出てくる「慰め」という言葉は、「傍らで呼ぶ」という意味の言葉です。不安や苦難の中にあるあなたを神は傍らに招いてくださっている。いや、神があなたの傍らに来ておられるのです。誰もが不安に包まれています。日々の労苦や悩みで心が満たされそうにもなる。そんな時、私たちに必要なことは、「まったくひどいよね」とつぶやき合うことではありません。そうではなく、パウロのように「慈愛に満ちた慰めの神」を賛美する声、喜ばしい言葉を聞くことではないでしょうか。私たちは不安や恐れに弱く、すぐに支配されてしまいます。そこでやせ我慢をするのでなく、逆に開き直るのでもなく、私たちを《慰めることができる方、慈愛と力に満ちている方》がおられることを、知るべきなのです。
 パウロとコリントの教会の間には大きな問題が生じていました。パウロが福音を熱心に語れば語るほど、コリントの信徒たちがかえって離れていくような状態もあり、コリントの信徒たち自身様々な問題を抱えていました。しかしパウロは、それらの問題にいきなり切り込むのではなく、慰めに満ちた神を、まず讃えるのです。個人的な問題にせよ教会の問題にせよ、私たちの神が慰めに満ちた神であることを見出して行くことにこそ、本当の解決があるからです。
 神が私たちにお与えくださった御子イエス、この一人の方に、神はご自身を現してくださいました。私たちはこの方と一つとされ、「イエス・キリストの父なる神」を私の父なる神と信じました。そしてこの方は「あらゆる苦難に際してわたしたちを慰めてくださる」方だと知ったのです。私たちは神に無関心で無情であったのに、神は私たちに常に御心を寄せ、常にそのふところに招き寄せて下さる《慰めの父》です。
 苦難の中にある時、私たちの本当の悩みは、《はたして神は私の味方なのだろうか、それとも、私は見離されているのだろうか》ということではないでしょうか。その時、私たちの内なる罪がささやくのです。《神はあなたを救えない。神はあなたを愛していない。いや、実は神などいないし、人生に目的などないし、希望もない》。私たちは慰めを必要とする時に、神の言葉に耳を傾けずに罪のささやきに耳を傾けてしまうと、人と自分を比べて落ち込んだり、妬んだり、羨んだりしてしまいます。
 苦難に遭い労苦する時、私たちはどう生きればよいのか分からなくなります。しかしそこに、キリストの苦しみが満ちあふれているなら、慰めも満ちていないか、イエスの十字架を負っているのではないか、そう言われているのではないでしょうか。
 パウロは、「あなたがたについてわたしたちが抱いている希望は揺るぎません」と言います。なぜ、希望が揺るがないのでしょうか。「なぜなら、あなたがたが苦しみを共にしてくれているように、慰めをも共にしていると、わたしたちは知っているからです」。遠く離れた、問題の多いコリントの信徒たちも「慰めを共にしていると、知っている」からなのだと。慰めの主が、彼らとも共におられると知っている。それが希望なのです。私たちも、イエス・キリストの父なる神に唯一の慰めを見、本当の希望を見ています。「わたしたちの主イエス・キリストの父である神、慈愛に満ちた父、慰めを豊かにくださる神がほめたたえられますように!」
 

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