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神の輝きを見よ

説教要旨(3月21日 朝礼拝より)
コリントの信徒への手紙二 4:1-6
牧師 藤盛勇紀

 「わたしたちは、憐れみを受けた者としてこの務めを委ねられているのですから、落胆しません」とパウロは言います。あえて「落胆しません」と言うのは、落胆して当然の状況があったからです。「務め」とは伝道者としてキリストを宣べ伝える務めですが、どれほど熱心に語り伝えたとしても、それで聞き入れられるわけではない。キリスト者であれば誰でも経験することです。
 アウグスティヌスが若い頃にマニ教にのめり込み、そのため母モニカは涙ながらに祈り続けました。司教がモニカに告げた言葉、「涙の子は、決して滅びることはない」は有名になりました。幸いにも息子がキリスト信仰に立ち帰るのを見ることができましたが、生きているうちにその喜びを味わうことのできない場合も少なくありません。
 ここで言われる「務め」にも同様の苦悩があります。それでこの務めから逸れてしまう説教者や偽教師たちが出て、コリントの教会も混乱させられました。しかしパウロは「神の言葉を曲げず、真理を明らかにする」と言います。この真理は抽象的で冷たい真理ではなく、「私は道であり、真理であり、命である」と言われたイエス・キリストとその福音です。人々に捨てられ、神に呪われた者として十字架につけられた方が救いであり命であり真理なのだというのです。しかもこの福音の真理は、人から人へしか伝えられない。まさに十字架の言葉も宣教も「愚か」なのです(1コリント1:18,21)。
 これを伝えることは、自分がいかに救いようのない者かということを明らかにすることでもあります。「救いようのない者の救い」です。だからパウロは、数々の艱難や試練に遭って、それを克服した自分の強さを語るのでなく、むしろ弱り果て絶望さえしてしまった自分の弱さを語っています。その弱さの中で励まし続け、常に道を拓いてくださる神の恵みを伝えたい。「主は生きておられる」、この福音の真実を語りたい。「憐れみを受けた者として」。それが「真理を明らかにする」道でした。人に受け入れられなくても譲ることのできない真理です。
 パウロは、「わたしたちは、自分自身を宣べ伝えるのではなく、主であるイエス・キリストを宣べ伝えています」と言い、その務めについてエフェソ書でこう言います。「この恵みは、聖なる者たちすべての中で最もつまらない者であるわたしに与えられました」(3:7-8)。「聖なる者たち」とはいわゆる聖人君子ではなく、ただ神の憐れみによって神の子とされた罪人、キリスト者のことです。その中でもパウロは自分は「最もつまらない者」だと言います。このような私に神はどれほど憐れみ深いお方か。なぜこんなつまらない私がキリストを伝える者として生きられるのか。それは、「『闇から光が輝きで出よ』と命じられた神は、わたしたちの心の内に輝いて」いるからです。
 信仰があっても「闇」の経験があります。「なぜなのか。いつまでなのか」と途方に暮れ、人知れず苦しむ闇もあり、信仰も萎えてしまったかのように感じられ、主に訴え、祈っても、いつまでなのか分からない。
 しかし、闇の中で「光あれ」と言われた神が私たちの内に来ておられ、み言葉が心を照らしてくださいます。「光あれ」と、み言葉をもって万物を存在させる神が、この混乱する世を完成してくださいます。その希望が、私たちを闇の中で生かすのです。「涙の子は決して滅びることはない」とあの司教は言いましたが、それは「光あれ」と言われる神にただ信頼する、つまり信仰の言葉です。「人にはできないが、神にはできる」と言われた主に信頼するのです。
 神のみ言葉が私たちの心を照らしてくださる時にのみ、私たち人間の内なる断絶の深さと暗さ、涙と苦悩にもかかわらず、感謝と希望をもって耐えることができます。だから、私たちは決して「落胆しません」。

説教一覧(2020年度)

2020.4.5
初めであり終わりである方
2020.4.12
主の言葉を思い出せ
2020.4.19
主を知って生きる
2020.4.26
どんな時も主を仰ぎ
2020.5.3
美しい足
2020.5.10
祭司の務め
2020.5.17
キリストの言葉を聞く
2020.5.24
私も日本人ですが
2020.5.31
永遠にあなた方と共に
2020.6.7
彼らの罪が世の富に
2020.6.14
新たに生まれる
2020.6.21
野生のオリーブ
2020.6.28
秘められた計画を知る
2020.7.5
神の富と知恵も深さ
2020.7.12
新しい時代のはじまり
2020.7.20
この世に倣わず
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信仰の度合いに応じて
2020.8.2
縦の愛、横の愛
2020.8.9
命のパンをいただく
2020.8.16
平和へのもう一歩
2020.8.23
自由の由来
2020.8.30
今という時を知る
2020.9.6
生きるにしても死ぬにしても
2020.9.13
神の国は義と平和と喜び
2020.9.20
隣人を喜ばそう
2020.9.27
敗北から
2020.10.4
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2020.10.11 朝礼拝
わたしがここにおります
2020.10.11 夕礼拝
門は開かれた
2020.10.18
私を用いて働く主
2020.10.25
終わりを目指して
2020.11.1
旅立つ者として生きる
2020.11.8
ふさわしい実を結べ
2020.11.15
主にある挨拶
2020.11.22
平和の源である神
2020.11.29
あなたを強める神
2020.12.6
慈愛に満ちた神
2020.12.13
神の御前に立つ者
2020.12.20
暗闇を照らす光
2020.12.27
神に希望をかける者
2021.1.3
私たちの誇り
2021.1.10
生き返り、見つかった
2021.1.17
『否』でなく『然り』のみ
2021.1.24
行き違いを越えて
2021.1.31
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2021.2.7
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2021.2.14
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2021.2.21
あなた方はキリストの手紙
2021.2.28
文字は殺し、霊は生かす
2021.3.7
顔の覆いを取り除け
2021.3.14
雪のように白く
2021.3.21
神の輝きを見よ
2021.3.28
この土の器にも