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救いは訪れる

説教要旨(7月17日朝礼拝より)
ルカによる福音書 19:1-10
牧師 藤盛勇紀

 ザアカイは、「徴税人の頭で、金持ちであった」。ローマ帝国の権力をバックに、同胞を踏みつけてでも成功した「勝ち組」です。しかし、そんな勝利をもって意味ある人生と言えるほど、人間は単純ではありません。ザアカイだって分かっています。そんな自分に納得しているわけではない。だから、あのイエスのことが気になる。
 あの人のことについては、エリコの町まで聞こえています。多くの人々を癒やし、貧しい人々や罪人と言われる人たちと交わり、人々の生き方を変えてしまわれた。あの人と出会って、喜んで神を賛美する者となっていく。「いったい、あのイエスという人は、どんなお方なんだろうか」。
 そのイエスが、この町に来られる。通りはもう大変な騒ぎです。ザアカイもイエスに近づこうとします。しかし、多くの群衆が取り囲んでいて、なかなか近づけません。背の低いザアカイを気遣ってくれる人など一人もいません。嫌われ者だからです。
 しかし、ここで悔しがったり怒ったりしている暇はない。どうしたものか。主イエス一行の進む先を見ると、ちょうどいい具合に道端にいちじく桑の木が立っている。ザアカイはその木に向かって走ります。いい大人が木登り。恥を捨てて登ります。「あのイエスを見たい、近づきたい。噂に聞いたことは本当だろうか。あのイエスは、神から見放された者をも変えてしまう。神から呪われたとしか思えないような者たちにも近づいて、その人に触れて、神に恵まれた人間に変えてしまう。もしかしたら、この俺も。ああ、あの人に近づいてみたい」。
 ザアカイは、そんなそぶりも見せなかったけれども、自分はやはり神に見捨てられた人間、神に呪われた者だと思っていたのです。そこに突然、あの方の眼差しが注がれ、「ザアカイ、急いで降りて来なさい」と名指しで語りかけられます。「今日は、ぜひあなたの家に泊まりたい」。
 人々は皆驚いてつぶやきます。これはいったい、どういうことだ。あのイエスは、罪深い男のところに行って宿をとった。
 ザアカイにとっても、全く思いがけない出会いでした。あのイエスが、まるで親しい友人であるかのように名を呼んでくださった。しかも、この私と共にいる、とまで言われる。
 ザアカイは、憐れみ深い神の決意を聞いたのではないでしょうか。何の心の備えもなかったのに、強引に「わたしはお前と共にいる」と言われる神の強烈な憐れみと接近です。「どうせ俺は神から見捨てられている」と、自分で自分を見限って、神を侮っていたのに、神が来られたのか。
 「どうして俺は、背が低いことで何か大事なものを失ったかのように嘆いたんだろうか。その密かな絶望をごまかして、人を押しのけ、蹴落としてきた。どうして、こうひねくれて生きてきたんだろうか」。
 ザアカイは知らなかったのです。「神が私と共におられる」。この発見は、自分自身と、自分が生きるこの世界の意味を一転させます。「私はそんな神を知らなかったのに、神は私を知っていてくださった」。
 この信仰が、新しい道を開くのです。「自分はどうせ」「自分がいなくても、全ては進んで行く」。そんな重苦しい運命が、一変します。こんな冷たく暗い所にまさか、と思っていた。しかし、そこを神が知ってくださって、神は共にいてくださった。
 救いは訪れるのです。向こうからやって来ます。「まさか」と思うところに、人の思いもしない仕方で、主は来られるのです。誰にでも、自分で必死につかまるいちじく桑があるのではないでしょうか。しかし主は、「急いで、降りて来なさい」と言われます。今すぐ手を離してよいのです。主が呼んでくださる所に、軽やかに降りて行きましょう。主が「あなたのところにいる」と、来てくださっているからです。

説教一覧(2016年度)

2016.4.3
誰の言葉を聞くのか
2016.4.10
消えていく
2016.4.17
信じて、願え
2016.4.24
立ち上がって、行きなさい
2016.5.1
神の国は来ている
2016.5.8
遣わされて生きる
2016.5.15
神の子とする霊
2016.5.22
主が来られる時
2016.5.29
謙遜をかさねて
2016.6.5
ほうっておけない神
2016.6.12
主よ、あなたしかいません
2016.6.19
ただ、いただくだけです
2016.7.3
主イエスの行く道
2016.7.10
あなたの信仰があなたを救った
2016.7.17
救いは訪れる
2016.7.24
小事を生かせ
2016.7.31
終末からこの世を見る
2016.8.7
主の御用のために
2016.8.14
訪れて来る神
2016.8.21
天からの権威
2016.8.28
使徒たちとともに
2016.9.4
神無き世を越えて
2016.9.11
神のものは神に
2016.9.18
神学論争の終わり
2016.9.25
メシアはダビデの子
2016.10.2朝礼拝
主のまなざし
2016.10.2夕礼拝
主イエスの言葉を思い出して
2016.10.16
終末のしるし
2016.10.23
解放の時は近い
2016.10.30
ゆるして自由になりなさい
2016.11.6
主の言葉は滅びず
2016.11.13
本当に大切なこと
2016.11.20
豊かに実を結ぶ
2016.11.27
新人類が現れた
2016.12.4
人間のたくらみ、神の備え
2016.12.11
宿命を超える主の愛
2016.12.18
必ず実現すること
2016.12.25
その名はインマヌエル
2017.1.1
あなたを造る聖書
2017.1.8
王は裸で踊る
2017.1.15
神無き死
2017.1.22
闇の支配
2017.1.29
発光するあなた
2017.2.5
主のまなざし
2017.2.12
神の子、イエス・キリスト
2017.2.19
イエスの沈黙
2017.2.26
衆愚の叫び
2017.3.5
どちらが憐れか
2017.3.12
あざ笑われるメシア
2017.3.19
主の愛の深さを知らされて
2017.3.26
闇の中の光