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主のまなざし

説教要旨(2月5日 朝礼拝より)
ルカによる福音書 22:54-62
牧師 藤盛勇紀

 弟子の筆頭格のペトロが、三度繰り返してイエスを知らないと否んだ、裏切りの場面です。この時ペトロは、「主の言葉を思い出した。そして外に出て、激しく泣いた」。 この時から何時間か前、イエス様は逮捕される直前、弟子たちの離反を予告し、ペトロには名指しで、「ペトロ、言っておくが、あなたは今日、鶏が鳴くまでに、三度わたしを知らないと言う」と言われたのです。このあまりにも残酷で恐ろしい言葉を、ペトロは思い出したのです。
 まさか自分がイエス様を知らないと言うなんて。しかし、隠されていた本当の自分の姿は、イエス様の予告通りだった。そんな自分に気づかされたのは、ペトロが「主の言葉を思い出した」からだけではありません。主イエスがこの時、「振り向いてペトロを見つめられた」からです。この「主のまなざし」が、ペトロの中に隠されていた惨めでどす黒い本当の姿を、射貫いたのです。ペトロは、この時の主のまなざしと主のお言葉を生涯忘れなかったでしょう。
 では、ペトロは自分の罪と弱さを思い知らされて、そこで立ち直ったでしょうか。悔いる涙を流して、そこから新たに歩み出したのでしょうか。そうではありません。
 たしかにペトロは激しく泣きました。真実、悔いて涙を流した。しかし、それで何かが変わったわけではありません。激しい涙は、カタルシスを味合わせて、心をすっきりさせるかもしれませんが、実は自分は何も変わらないのです。むしろ、涙を流すことによって、あるがままの変わらない自分を守る、一種の自己防衛です。
 ペトロも激しく泣いたけれども、何も変わりませんでした。外に出て激しく泣いて、姿をくらましたのです。言わば裏切り者の自分を完成させたのです。主が十字架につけられる時も、雲隠れしたままでした。
 いったいペトロのあの涙は何だったのか。あの涙は、ペトロを変えることはなく、むしろ、暗くじめじめした弱さの中に、閉じ込もったのです。それほどに、ペトロの罪も本物だったということです。正真正銘の醜く惨めな罪人。ありのままの人間の姿が、いかに醜いかを、ペトロも示した。そして、思い知らされたのです。
 それはもう隠しようのない真実の自分ですから、自分ではどうにもなりません。自分で自分を救いようがありません。どれほど心底後悔しても、涙を流しても、新しく生まれ変わることなどできないのです。
 主のまなざしが、どうにも隠しようもない真実のペトロを射貫いて、そのまま十字架に持って行ってしまわれたのです。ペトロの罪を刺し貫いて、十字架につけてしまわれたのです。
 私たちも、本当の自分の姿、自分の醜さを知ろうとしたら、十字架を見よということになります。十字架の主は、あなたがそうした姿であって、あなた自身の姿でもあるのです。あなたも、キリストと共に十字架につけられたのです。
 ペトロが思い出した主のお言葉の中には、この言葉もありました、「しかし、わたしはあなたのために、信仰が無くならないように祈った」。もし私たちに信仰があると言えするとすれば、それは、主が祈ってくださったからです。新しく立ち上がったとすれば、主が、私たちのために御自分の血潮を流し、命を注ぎ出されたからです。私たちがどうかではありません。私たちにはもともと信仰のかけらもありません。私たちがいかに醜い罪人か、それは主御自身がはっきり見抜いておられます。
 にもかかわらず、「わたしはあなたのために、信仰が無くならないように祈った」、この主のお言葉を、聞くことが許され、思い起こすことが許されているのです。
 ペトロがそうだったように、主のまなざしが、主の言葉と共に、私たちを刺し通して、十字架の主にとどまらせるのです。
 

説教一覧(2016年度)

2016.4.3
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2016.4.10
消えていく
2016.4.17
信じて、願え
2016.4.24
立ち上がって、行きなさい
2016.5.1
神の国は来ている
2016.5.8
遣わされて生きる
2016.5.15
神の子とする霊
2016.5.22
主が来られる時
2016.5.29
謙遜をかさねて
2016.6.5
ほうっておけない神
2016.6.12
主よ、あなたしかいません
2016.6.19
ただ、いただくだけです
2016.7.3
主イエスの行く道
2016.7.10
あなたの信仰があなたを救った
2016.7.17
救いは訪れる
2016.7.24
小事を生かせ
2016.7.31
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2016.8.7
主の御用のために
2016.8.14
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2016.8.21
天からの権威
2016.8.28
使徒たちとともに
2016.9.4
神無き世を越えて
2016.9.11
神のものは神に
2016.9.18
神学論争の終わり
2016.9.25
メシアはダビデの子
2016.10.2朝礼拝
主のまなざし
2016.10.2夕礼拝
主イエスの言葉を思い出して
2016.10.16
終末のしるし
2016.10.23
解放の時は近い
2016.10.30
ゆるして自由になりなさい
2016.11.6
主の言葉は滅びず
2016.11.13
本当に大切なこと
2016.11.20
豊かに実を結ぶ
2016.11.27
新人類が現れた
2016.12.4
人間のたくらみ、神の備え
2016.12.11
宿命を超える主の愛
2016.12.18
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2016.12.25
その名はインマヌエル
2017.1.1
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2017.1.8
王は裸で踊る
2017.1.15
神無き死
2017.1.22
闇の支配
2017.1.29
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2017.2.5
主のまなざし
2017.2.12
神の子、イエス・キリスト
2017.2.19
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2017.2.26
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2017.3.5
どちらが憐れか
2017.3.12
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2017.3.19
主の愛の深さを知らされて
2017.3.26
闇の中の光