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目を留めてくださる神

説教要旨(6月1日朝礼拝)
イザヤ書 61:10-11
ルカによる福音書 1:46-56
牧師 藤盛 勇紀

 「わたしの魂は主をあがめ、わたしの霊は救い主なる神をたたえます」。マグニフィカトと呼ばれるマリアの賛歌です。マリアは文字通り全身全霊で神をほめたたえますが、この喜びには、はっきり理由があります。「身分の低い、この主のはしためにも、目を留めてくださったからです」。
 ここには、マリアの驚きがあるのです。「どうしてですか、主よ。神であられるあなたが、どうして、こんな私を」と。
 なぜマリアは歌い出すのでしょうか。それは、驚いたからです。「驚き」が歌になります。ある神学者が「驚きが神学の開始だ」と言いました。「哲学は『何かがないのではなく、ある』ということに驚いているのですが、神学は、『ないものがある』ということに驚いているのです」と言います。つまり「私の側に救われるべき理由はなにも《ない》この私が救われてここに《ある》」、この驚きが神学を開始させる、そして「この驚きを歌い出す、そのメロディーが神学ということになるのだ」と。
 その意味では、私たちキリスト者はみな神学者だというのです。実際、私たちも歌い出しています。「あのお方が、この私を!」という驚き、そのリアリティーがあるから、私にとって事実だから、歌い出すのです。
 マリアもそうです。しかも、マリアに与えられた約束、つまり神の御子の誕生の約束は、イスラエルの救いとつながっています、いや世界の救いとつながっています。まったく思いもよらない神の憐れみのご計画が、このような私を通して実現されていく。途轍もないことです。途方もない、神のなさり方。それは目まいがしそうな驚きでした。
 マリアは、「身分の低い者を高く上げ」「飢えた人を良い物で満たし」と言い、主は「憐れみをお忘れになりません」と歌います。
 「身分の低い者」」とか「飢えた人」と聞きますと、「自分はそうではない」と思われる方もあるでしょう。しかしこれは単に経済的社会的な貧しさのことではありません。どれほど経済的に豊かであっても、人間関係に恵まれていても、いつか自分一人だけでそこを行かなければならない時が来ます。持っていたものが何の役にも立たず、一緒にやってきた仲間が何の力にもならず、一人耐えなければならない。今がどれだけ充実していようとも、どれほど健康であったとしても、そもそも死を免れる人はいないのです。いずれあなたは一人、裸で死ぬべき者ではないか、無に等しいあなたではないか、と聖書は問うています。
 しかし、です。誰の助けも届かず最後に一人にさせられる、いや、あなたという存在は滅びる、そんな無に等しいあなたを、しかし、神が目を留めていてくださるのではないですか、というのです。
 その神の憐れみに気づいた者は、貧しい小さな私であっても、喜んで生きます。マリアやエリサベトたちのように、胎動を感じるように、たとえ密かにでも喜んで生きられる。「神に目を留めていただく」とはそういうことです。
 ガリラヤの片田舎の少女マリアは、「ふしだらな女」「神を冒涜する者」として葬り去られるかもしれない危機の中で、「私は神様から見捨てられていない、むしろこの私に目を留めてくださっている」と知ります。この驚きが、自分を「幸いな者」と理解させたのです。
 マリアを通して行われた神のみ業、キリストの出来事を「この私」のためと知り、受け入れた者は、どんなところでも生き抜くことができる。いや、歌い出します。それが、神に目を留めていただいた幸いな者の力です。

説教一覧(2014年度)

2014.6.1
目を留めてくださる神
2014.6.8
地の果てに至るまで
2014.6.15
新しい喜び
2014.6.22
あなたを訪ねる王
2014.6.29
「できれば」と言うのか
2014.7.6
天使のメッセージ
2014.7.13
あなたはどこにいるのか
2014.7.20
今こそ、安らかに
2014.7.27
私のいるべき場所
2014.8.3
主の道を整えよ
2014.8.10
洗礼を受ける主
2014.8.17
主よ、しかし
2014.824
神に至る道
2014.8.31
誘惑と戦う武器
2014.9.7
実現する聖書の言葉
2014.9.14
実を結ぶ神の言葉
2014.9.21
力あるみ言葉
2014.9.28
町々を巡る主イエス
2014.10.5
み言葉が差し込む
2014.10.12
疲れた者に力を
2014.10.19
大胆に主に近づこう
2014.10.26
罪人を招く主
2014.11.2
もう泣かなくてよい
2014.11.9
右の手を取ってくださる主
2014.11.16
新しい喜び
2014.11.23
命に与る安息日
2014.11.30
主イエスの祈り
2014.12.7
幸いなるかな
2014.12.14
マリアの救い
2014.12.21
見よ、救いのしるしを
2014.12.28
地に届く天の光
2015.1.4
その方の星を見よ
2015.1.13
神の子とする霊
2015.1.18
心に逆らう愛
2015.1.25
主イエスを信じなさい
2015.2.1
土台の上に建てる
2015.2.8
痛みを伴う愛
2015.2.15
ただ一言に賭ける
2015.2.22
来たるべき方が来た
2015.3.1
歌え、神の国の歌を
2015.3.8
主イエスの言葉を思い出して
2015.03.15
安心して行きなさい
2015.3.22
主に仕える旅
2015.3.29
神の国の秘密