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マリアの救い

説教要旨(12月14日朝礼拝より)
ルカによる福音書 2:22-35
伝道師 上田真由美

 「この子は、イスラエルの多くの人を倒したり立ち上がらせたりするためにと定められています。あなた自身も、剣で心を刺し貫かれます」。主イエスがこの世に幼子として到来された時に、老預言者シメオンがマリアに語った言葉です。主は全ての人を倒す、つまり、全ての人は御言葉、十字架の福音に躓く。けれども、主は全ての人を十字架の死によって立ち上がらせるという救いの道を開かれたと。「あなた自身も、剣で心を刺し貫かれる」。恐ろしい預言です。この剣とは長くて幅の広い剣のこと。その剣で胸を刺される、それは胸全体が切り裂かれるような苦しみです。つまり、マリアも死の苦しみにあうと言うのです。その苦しみによって、「多くの人の心にある思いがあらわにされるためです」。ということは、苦しみにあうのはマリアだけではない。私たち皆、心の奥に隠している、これは人に知られたくないという思い、罪が、み前に出されるということなのです。罪が剣で刺されて神のみ前に出されるとどうなるのでしょうか。死の苦しみにあうと言われたマリアは何を知ったのでしょうか。
 マルコ福音書3章にこうあります。「イエスの母と兄弟たちが来て外に立ち、人をやってイエスを呼ばせた。イエスは言われた。『私の母とは誰か。見なさい。ここに私の母がいる。神の御心を行う人こそ、私の母なのだ』」。大工だったあいつが偉そうに話している。気が変になったんじゃないか。マリアはそんなうわさを耳にし、心配で耐えられなかった。ナザレで一緒に暮らすイエス様はお優しかったでしょうから、自分が呼べばすぐに来てくれると思った。だから、人々の前で御言葉を語っておられるイエス様を誰かに「呼ばせた」のでしょう。しかし「私の母とは誰か」とのお答え。「呼ばせた」というマリアの行為とイエス様のお答えは正反対。ということは、マリアはイエス様がどういうお方か分かっていなかったということになります。
 「あなたと私に何の関係があるのか。本当の結びつきは血縁ではなく神による。私の言葉を聞いているこの人たちが私の本当の母なのだ」。こんな言葉を聞かされるとは思わなかったでしょう。まさに剣で突き刺された思いだったと思います。けれどもマリアの胸を痛めてでも、主イエスが言わなければならないことだったのです。「神の御心を行う人」、マリアもその一人であるはず。神様はマリアを母としてお用いになった。だからといって特別なのではない。御心に従わなければ、「私の母とは誰か」と言われても仕方ないのです。
 マリアは時々、思いがけないことを言われたでしょうが、最も胸を痛めたのは主が十字架におつきになった時でしょう。「イエスの十字架のそばには、その母と母の姉妹、…マグダラのマリアとが立っていた」(ヨハネ福音書19章)。最初に出てくる名前はマリア。息子が十字架上で血を流し死んでいくのを目の当たりにする。何もしてあげられない。この時が最も死の苦しみにあう時だった。けれども最後まで、主の苦しみを忍び通し、知り通した。
 使徒言行録1章には、主が甦られた後に弟子たちが集まった時のことが記されています。「彼らは皆、婦人たち、特にイエスの母マリア、およびイエスの兄弟たちと共に心を合わせて祈りをしていた」。マリアのことは皆が気になっていた。だから「特にイエスの母マリア」がここにいたと、最後まで主の苦しみに従っただけでなく主が甦られた後も、一人の信者として皆と生活していたと言うのです。マリアは、十字架の主こそ、自分の信仰の拠り所だと知ったのでしょう。
 神様に対して見当違いな思い、罪が、み前に出されて実は、最後まで、神の御心に従っていこうとする心柔らかな者とされた。それが、マリアの救いでした。人に胸を刺されたら死にますが、神からの痛みは死ではなく命をもたらすのです。御言葉の力、十字架の力が、今も変わることなく生きてこの身に及んでいるからです。
 

説教一覧(2014年度)

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2014.7.6
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2014.8.10
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2014.12.7
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2015.1.4
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2015.1.13
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2015.2.1
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2015.2.8
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2015.2.15
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2015.2.22
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2015.03.15
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2015.3.22
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