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ただ一言に賭ける

説教要旨(2月15日朝礼拝より)
ルカによる福音書 7:1-10
牧師 藤盛勇紀

 「百人隊長」は異邦人でした。ユダヤ人からしますと、異邦人というのは、ユダヤ人の律法によって差別と侮蔑の対象です。ところがこの百人隊長は、「ユダヤ人を愛して、自ら会堂を建ててくれた」というのです。それほどユダヤ人を愛し、ユダヤ人からも愛されていた異邦人というのは非常に珍しいことです。それで、この百人隊長の部下が病気で死にそうになって、イエス様に助けを求めた時、ユダヤ人の長老たちも奔走し、イエス様のところに駆けつけて「熱心に願った」のです。百人隊長の人柄がうかがわれます。そして彼の言葉からは、深い謙遜の人だったことも分かります。
 しかし、それでもやはり彼は「信仰」については、思い違いをしていたと言わざるを得ません。イエス様は彼の言葉を伝え聞いて、「イスラエルの中でさえ、これほどの信仰を見たことがない」と言われたのです。ここで主は「ユダヤ人」と言わず、「イスラエル」と言われました。意味は同じだとも言えますが、「イスラエル」は、神と共に生きる民としての信仰的な意味を帯びた呼び名です。そのイスラエルの中にさえ見たことのない信仰を、イエス様はまだ見ていない百人隊長の中に見出された、というのです。いったいどこに、それほど真実な信仰を見出されたのでしょうか。
 ユダヤ人の長老たちは言います、「あの方は、そうしていただくのにふさわしい人です」。百人隊長の人柄も愛に満ちた働きも知っています。それで、「ふさわしい人です」と大いに推薦するわけです。
 しかし、イエス様がご覧になったのは、そこではありません。ユダヤ人から信頼される人柄とか、人に喜ばれる良い働きとかではない。イエス様は、百人隊長が友達を使わして言わせた言葉の内に、信仰を見出されたのです。
 周りの人々は、百人隊長の人柄や行いや態度を称え推薦します。しかし主が認められた信仰はそういうものではありません。この百人隊長は、自分は「ふさわしくない」と言っています。ふさわしさが「無い」ことをわきまえていた。これはただの謙遜ではありません。だから言うのです、「ひと言おっしゃってください。…わたしも権威の下に置かれている者です」。
 イエス様が捉えたのはこの言葉でしょう。この徹底した「信頼」です。彼は本当に「権威」を知っています。権威ある言葉の重みを知っていました。彼はふだん、部下に命令します。「行け」と言えば行く、「来い」と言えば来る。単純なことですが、彼らは軍人ですから、そこに「命」がかかっていることを知っています。戦場では、一言に命を預け合って戦う。だから「権威」の下に命が保たれていることを知っています。
 だからこそ、主イエスの御言葉が、この世の王の権威など問題にならない、命を与え、命を生かす、本当に上から来る権威だということを悟ったのでしょう。権威の下で命のやり取りをしている身だからこそ、真の権威に対するセンスがあった。誰に命を預けられるか、何に命を賭けるか。
 権威の下にあってはじめて分かる「上からの言葉」。それが神の霊と共に私たちの内に届く時、「この言葉に命がある、このお方の言葉が命だ」と分かる。だから自分の命をお委ねることができる。主の御言葉にはそういう権威があるわけです。
 イエス様は、すでにそこに生き、主に命を委ねている百人隊長を見出されたのです。そして、「それが信仰だ」と。
 神の御言葉の権威は、無から有を生み出します。滅ぶべき者に「生きよ」と言って命を与え、離れていく者を呼び戻し、命の道に従わせ、うなだれている者を立ち上がらせ、悲しむ者を喜ばせる恵みの権威です。神様は今も、上から恵みの御言葉を与えてくださるので、私たちは命を委ね、命をいただくことができるのです。
 

説教一覧(2014年度)

2014.6.1
目を留めてくださる神
2014.6.8
地の果てに至るまで
2014.6.15
新しい喜び
2014.6.22
あなたを訪ねる王
2014.6.29
「できれば」と言うのか
2014.7.6
天使のメッセージ
2014.7.13
あなたはどこにいるのか
2014.7.20
今こそ、安らかに
2014.7.27
私のいるべき場所
2014.8.3
主の道を整えよ
2014.8.10
洗礼を受ける主
2014.8.17
主よ、しかし
2014.824
神に至る道
2014.8.31
誘惑と戦う武器
2014.9.7
実現する聖書の言葉
2014.9.14
実を結ぶ神の言葉
2014.9.21
力あるみ言葉
2014.9.28
町々を巡る主イエス
2014.10.5
み言葉が差し込む
2014.10.12
疲れた者に力を
2014.10.19
大胆に主に近づこう
2014.10.26
罪人を招く主
2014.11.2
もう泣かなくてよい
2014.11.9
右の手を取ってくださる主
2014.11.16
新しい喜び
2014.11.23
命に与る安息日
2014.11.30
主イエスの祈り
2014.12.7
幸いなるかな
2014.12.14
マリアの救い
2014.12.21
見よ、救いのしるしを
2014.12.28
地に届く天の光
2015.1.4
その方の星を見よ
2015.1.13
神の子とする霊
2015.1.18
心に逆らう愛
2015.1.25
主イエスを信じなさい
2015.2.1
土台の上に建てる
2015.2.8
痛みを伴う愛
2015.2.15
ただ一言に賭ける
2015.2.22
来たるべき方が来た
2015.3.1
歌え、神の国の歌を
2015.3.8
主イエスの言葉を思い出して
2015.03.15
安心して行きなさい
2015.3.22
主に仕える旅
2015.3.29
神の国の秘密