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安心して行きなさい

説教要旨(3月15日朝礼拝より)
ルカによる福音書 7:36-50
牧師 藤盛勇紀

 食卓についておられた主イエスの足下に、どこからともなく一人の女が近づいて来ていた。この人は「罪深い女」だと言われています。評判の売春婦か、淫らな女です。そして、罪深いだけでなく、深い悲しみの人でもあったことが伝わってきます。
 この女が主イエスの足に涙を落として、香油を足に塗ったことに、ある人は注目して、こう言いいました。「彼女がその中にあると自ら知っている深淵を思わせる」。
 福永武彦の作品に『深淵』という短編小説があります。ある熱心なカトリックの女性の祈りの言葉と、歪んだ精神を持つ男の醜い独白が絡み合うように話が進み、結局、その女性は男に身を委ね、その男に殺されてしまう。何とも救いのない破滅的な結末となります。まさに「深淵」としか言いようのない「不気味な深い何か」を強烈に思わされます。それは、主イエスの足を涙でぬらした「罪深い女」の姿に重なります。
 もやはそれは悲しみでさえなく、「恐ろしく深い、得体の知れない暗い何か」としか言いようのない破滅的な深みです。私たちの「罪」も、取り返しのつかない何か、もはや自分では這い上がることなどできない、そうした深淵なのではないでしょうか。
 どうしようもなく「深い何か」。それは言いようのない悲しみにもなります。そこで思うのです。「こんな私のことなど、どうせ誰も分かってくれない」。これもまた罪の姿です。確かに、誰にも分からないということはあります。同情しても、結局分かっていないということもあるでしょう。
 主イエスの足下にいた女の罪の深みも悲しみも、誰も分かろうともしませんし、「どうせわかりっこない」。それはそうです。それでも、主イエスのもとでは、「本当にそうなのか」と問えるのです。
 女は、香油の壺を抱えて主イエスの後ろから、何とか主に近づきました。深い悲しみも、深い傷も負っている。しかしなぜかここには、彼女の強烈な意志もあります。彼女は何としてでもこのお方に近づいた。人々から後ろ指を指され、露骨に罵られても、それでも、主の御足を自分の涙で洗って、香油を塗って差し上げたい。その一心で、一歩一歩、主ににじり寄ります。
 イエス様はそれを、御自分に対する愛と受け止めてくださいました。そして主は、ファリサイ派の人たちの中にではなく、この罪深い女の中に「信仰」を認めてくださったのです。「あなたの信仰があなたを救った」。
 なぜ彼女は、障害を乗り越えて主に近づいたのか。その信仰は、いったいどこから来たのか。主イエスをどう理解していたのか。分かりません。しかし一つはっきりしていることは、彼女が主イエスにすでに捉えられていたということです。彼女自身の思いや自覚などが問題ではありません。彼女は主イエスにある「赦し」の中に捉えられていた。だから、「なんとかこのお方に近づきたい」。そして、このお方のみ言葉に聞いて、生きたい。なぜか、理屈は分からないし、説明もできないけれども、「ただこのお方のもとで」。それが信仰です。
 主イエスが私を憐れみ、赦し、恵みの内に生かしてくださるから、自分はどうであろうと、主が言ってくださるように生きたい。信仰に生きるといのは、そういうことです。主の足下にいた女も、だからただこのお方の足下で本当に悲しむことができたのでしょう。悲しむなら、このお方のもと。泣くなら、この方のもとで、なのです。
 主イエスは、「あなたの罪は赦された」と言えるお方です。このお方だけが、私たちの罪を負われたからです。だから、もう安心してよいのです。「あなたの罪は赦された」、「あなたの信仰があなたを救った。安心して行きなさい」。このお言葉を聞き取る人は幸いです。
 

説教一覧(2014年度)

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2014.6.15
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2014.6.22
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2014.6.29
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2014.7.6
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2014.7.13
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2014.7.27
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2014.8.3
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2014.8.10
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2014.8.17
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2015.1.4
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2015.2.1
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2015.03.15
安心して行きなさい
2015.3.22
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